男性の4倍!圧倒的に女性に多い頭痛…専門医が薦める【片頭痛と緊張型頭痛】のセルフケア対策は?

 男性の4倍!圧倒的に女性に多い頭痛…専門医が薦める【片頭痛と緊張型頭痛】のセルフケア対策は?
増田美加
増田美加
2024-06-01

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 頭痛は、男女比1対4と圧倒的に女性に多い病気です。なかでも女性に多いのは、片頭痛と緊張型頭痛です。このふたつの頭痛の特徴と共に、頭痛を招かないようにするための生活習慣や対策を頭痛治療の第一人者、清水俊彦先生に伺いました。

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緊張型頭痛なら、体を動かしても悪化しない!

慢性頭痛のうち、片頭痛は、発作的に起こり4~72時間持続して、片側のズキズキと脈打つような痛みが特徴と言われています。

「片頭痛といっても、実際は4割近くの方が両側の頭痛も経験しています。また後頭部、頭全体が痛いという方もいます。ズキズキと脈打つ痛みが多いですが、頭が締めつけられるように痛む場合もあります。ほかの頭痛との見極め方は、頭を振ったり、体を動かしてみて痛みが増したら、片頭痛の可能性が高いでしょう」と清水先生。片頭痛について詳しくは「日本人の約4000万人が悩む慢性頭痛!専門医が教える、女性に多い「片頭痛」の正しい対処法」でも解説しています。

片頭痛の次に多いと言われている、緊張型頭痛はどのような頭痛なのでしょうか?

「緊張型頭痛は、午後から夕方にかけて痛みが増す傾向があって、肩や首のひどいコリと頭痛がセットで起こります。眼精疲労やめまい、全身のだるさをともなうこともあります。

緊張型頭痛は、体を動かしても痛みが悪化せず、吐き気などもないのが特徴です。ストレッチをすることで、痛みが楽になるようなら、緊張型頭痛の可能性が高いでしょう」(清水先生)

緊張型頭痛の原因は、ストレスなどで肩や首、側頭部の筋肉が緊張した結果、血流が悪くなり、筋肉の中に乳酸やピルビン酸などの老廃物が溜まることで、神経を刺激します。頭を締めつけられるような鈍い痛みが生じるのが特徴。

以下のような痛みであれば、緊張型頭痛の可能性が高いです。

【緊張型頭痛】

□ 締めつけられるような痛み
□ 頭の両側、あるいは後ろ側が痛む
□ 圧迫感、重苦しい、締めつけられる鈍痛、頭重感
□ 毎日あるいはたまに起こる
□ 夕方ころ起こる
□ 運動をしても症状が悪くならない
□ 日常生活の支障は少ない(軽度~中程度の痛み)
□ 入浴や飲酒で痛みが楽になる
□ 肩や首こりを感じる

片頭痛と緊張型頭痛は、ストレスや疲労、寝不足や睡眠過多などの睡眠リズムの狂いなど、共通する誘発因子があります。そのため、両方とも起こる合併タイプの人も多くいます。

合併タイプの症状の現れ方には、ふたつあります。

① 日によって片頭痛と緊張型頭痛が起こるタイプ。
② 日常的に緊張型頭痛が起こっていて、たまに片頭痛が起こるタイプ

「合併タイプかな」と疑わしい場合は、自分では適切な対処が難しいため、頭痛専門医に受診することがすすめられています。

片頭痛
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緊張型頭痛の対策と治療法

緊張型頭痛は、慢性の肩こりがあったり、座りっぱなしなどの同じ姿勢が続いて、首や肩、側頭部の筋肉が緊張して、血流が悪くなることで頭痛が起こることがあります。また精神的ストレスで血管が緊張して収縮する結果、血行が悪くなり、頭痛を起こすこともあります。

「そんなときは、首や肩を軽くストレッチしましょう。肩を上げ下げしたり、両手を組んで頭の後ろにおいて、手の重さで首を前にゆっくり傾けるなどもいいでしょう。

もちろん、入浴などで軽く温めたり、少し飲酒したりして血行をよくすることも有効です」と清水先生。

頭痛薬を飲んでもいいかどうかを迷いがちですが、緊張型頭痛は、軽い人が多いので、市販の頭痛薬(鎮痛剤)を1回程度飲むことで治ってしまう場合も少なくありません。そんな場合は、飲んでも構わないとされています。

「しかし、“薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)”にならないよう、頭痛薬の飲み過ぎには注意です。そもそも、何度も頭痛薬を飲まないと治まらない頭痛なら、緊張型頭痛ではなく、片頭痛を合併している、もしくは別の原因による頭痛、時に生命予後に支障をきたすこともある二次性頭痛の可能性もあることを忘れないでください。

もし、病院を受診して、緊張型頭痛と診断されたら、緊張型頭痛の急性期には、頭痛をやわらげる薬を使って治療します。緊張型頭痛では、これらの薬が予防につながることが多いと言われています。

けれども、この場合も3か月以上使い続けるときには、“薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)”を起こさないように、用法、用量にはくれぐれも気をつけてください」(清水先生)

【緊張型頭痛でおもに使われる薬】

●鎮痛薬(頭痛薬)及び、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
●カフェイン … 痛みをやわらげる効果がある
●抗うつ薬 … 特に慢性の緊張型頭痛において、痛みを感じる限界値(閾値)を上昇させ、痛みを感じにくくする効果がある
●抗不安薬 … 緊張した気分をやわらげる効果がある
●筋弛緩薬 … 筋肉の緊張をほぐす効果がある
●ボツリヌス毒素 … ほかの薬では痛みが抑えられない場合に用いられる
■【片頭痛の治療薬については ⇒ 日本人の約4000万人が悩む慢性頭痛!専門医が教える、女性に多い「片頭痛」の正しい対処法 を参照】

片頭痛と緊張型頭痛、日常生活で気をつけること

「片頭痛と緊張型頭痛では、日常生活でやるべきこと、やってはいけないことが少し違います。共通して言えるのは、慢性的な頭痛を抱えている人は、できるだけ脳が興奮しないように、生活の中で脳を刺激するような行動を避けてください」(清水先生)。

【片頭痛の対策】

・規則正しい生活をする。休日でも睡眠時間は一定に
・朝食を摂るよう心がける。和食中心の生活に
・カフェインと糖分を適度に摂る
・強い光を避けるため、帽子とサングラスを常備する
・香水や芳香剤など、強い香りを避ける
・チョコレートや赤ワインなどのアルコールを摂りすぎない

朝食
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片頭痛は、脳の血管の拡張によって、脳血管周囲の三叉神経が刺激されて痛みが起こります。痛いところを冷やし、広がった血管を収縮させることで痛みがやわらぎます。片頭痛のときには、血流を促す湯船に長時間つかるのは避けて、ぬるめのシャワーですませることが大切です。

片頭痛の人は、強い光、強いにおい、大きな音は、脳を刺激しやすいので、適度で心地よい照明や音楽、香りでリラックスして過ごしてください。

空腹で血糖値が減少すると、脳血管がゆるんで周囲の三叉神経を刺激し、片頭痛が起こりやすくなります。おなかが空きすぎないよう、また血糖値を一定に保つようにしましょう。

チラミンやポリフェノールなどの血管拡張物質が入ったチョコレートや赤ワイン、柑橘系の果物を摂りすぎると、片頭痛が起こりやすくなるので、多量もしくは、重ね摂りには注意しましょう。

頭痛の前兆を感じたら、コーヒーや紅茶などを飲むと、カフェインが水分を体外に排出し、拡張した脳血管を戻してくれます。

片頭痛を予防する作用が期待できる食材は、脳血管や脳の神経細胞を安定させる作用のある、マグネシウム、ビタミンB2、カルシウム、食物繊維を多く含む食材です。たとえば、納豆、わかめ、ごぼう、卵、きのこ類など、和食の定番食材は、頭痛を起こりにくくしてくれる食材です。

こんな習慣は、片頭痛を起こしやすいので要注意

・混雑した場所に出かけることが多い … 人混みは、音、光、香りなどの物理的な刺激も高く、人酔いしやすく、また密閉空間では酸素が薄くなり脳血管を拡張させます。

・ポニーテールにしている … 頭皮を引っ張っていると後頭神経や三叉神経が刺激され、二次的にその情報が脳に伝達され、片頭痛を誘発、悪化させることがあります。

・休日は寝すぎる … 不眠だけでなく寝すぎも副交感神経を優位にさせ、脳血管が緩みやすく、また朝食の時間がずれ込むことによる血糖値の低下をきたすことも片頭痛の原因になります。

・電気をつけたまま寝る … 蛍光灯の光が過敏な脳を刺激します。

・朝食べない、ダイエットしている … 空腹は低血糖になり、脳血管が緩み、血管周囲の三叉神経を刺激して片頭痛を誘発したり、不機嫌になりがちに。

ポニーテール
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【緊張型頭痛の対策】

・ストレッチや入浴で首や肩の筋肉をほぐす
・ストレスや疲労をためすぎず、適度に解消する
・座りっぱなし立ちっぱなしなど、同じ姿勢を取り続けない

緊張型頭痛の人は、コリやストレスで筋肉が緊張して、筋肉内の血管を締めつけ、血流が悪くなることで起こります。片頭痛では温めることで痛みが増すことがありますが、緊張型頭痛では、温めて血流を促すことで予防や改善になります。

このように頭痛対策のために、日常生活でできることはたくさんありますね。病院での治療に加えて、セルフケアも行うことで、片頭痛や緊張型頭痛などの慢性頭痛を改善し、予防に役立てたいです。

参考資料/一般社団法人日本頭痛学会 「市民・患者さんへ」 

お話を伺ったのは…清水俊彦(しみずとしひこ)先生

東京女子医科大学 評議員
脳神経外科 頭痛外来 客員教授

医学博士 。日本脳神経外科学会専門医。日本頭痛学会専門医。米国頭痛学会正会員。汐留シティセンターセントラルクリニック頭痛外来ほか多数の病院で1日平均約200人の患者を診察する頭痛治療の第一人者。著書に『頭痛は消える。』(ダイヤモンド社)最新刊『ウルトラ図解 おとなと子どもの頭痛』(法研)ほか多数。また2024年6月から、全日空機内誌『翼の王国 TSUBASA』で『雲の上の診察室』の連載中。

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取材・文/増田美加 女性医療ジャーナリスト

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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