命に関わることもある?爪が割れる、髪が抜けやすい…は「かくれ貧血」の可能性。対処法は?医師が警告

 命に関わることもある?爪が割れる、髪が抜けやすい…は「かくれ貧血」の可能性。対処法は?医師が警告
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増田美加
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2023-04-08

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 貧血ではなくても、鉄が少ない人は、貧血予備軍です!鉄の貯金(フェリチン)が少なくなった“かくれ貧血”の可能性があります。かくれ貧血の段階で治療を開始することが大切です。女性外来の内科医師、柴田美奈子先生に伺いました。

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生理のある女性はもちろん、更年期世代にも多い“鉄欠乏性貧血”

食生活の変化や婦人科の病気の増加などに伴って、鉄不足による“鉄欠乏性貧血”は、日本全体の問題といえるほど増加しています。女性に多い病気ですが、65歳以上になると男女合わせて4割が貧血という数字も出ています。

「女性は、特に生理があるので、貧血になりがちです。また、月経量が少なくなってきた更年期世代でも、血液の材料となる鉄の貯えが枯渇してくるために、貧血になることもあるのです。それから、急に立ち上がったときや朝礼で長く立っていたときに感じる一時的な“めまい感”を貧血だと誤解している方が多いですが、それは脳貧血の状態で、医学用語の貧血とは別のものです。貧血があるかどうかは、血液検査をしなければわからないのです」と柴田美奈子先生。

貧血になる前の“かくれ貧血”を知って予防しましょう

血液検査のヘモグロビン値が正常で、まだ貧血にはなっていない鉄欠乏の段階=“かくれ貧血”で、治療を開始するのがベストです。倦怠感や息切れなどの自覚症状が出るころには、貧血はかなり進行している可能性があります。

貧血まではいかなくても、鉄が少ない人は、貧血予備軍です! 鉄の貯金(フェリチン)が少なくなった“かくれ貧血”の段階で、治療を開始しましょう。本格的な貧血になる前の“かくれ貧血”を早く見つけて、治療を開始することがポイントです。以下のチェックリストで、かくれ貧血がないか確認してみましょう。

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【こんな症状があったら“かくれ貧血”の可能性が!】

・爪が割れやすい
・髪がよく抜ける
・目の下にクマができやすい
・うつっぽい
・疲れやすい、倦怠感がある
・寝起きが悪くだるい
・生理が重い(重かった)
・更年期世代で生理が毎月順調にある
・偏食がある
・バランスの良い食事が規則的に摂れていない
・ランニングなど激しい運動が趣味

貧血は命にかかわる可能性がある重大な病気

「血液は、全身に酸素と栄養を運ぶ重要な働きをしています。 貧血状態にあると、酸素や栄養が運ばれなくなるので、全身の機能が低下します。脳や心臓にも、酸素や栄養が届かなくなり、貧血は命にかかわる可能性もある重大な病気なのです。貧血は、血液検査のヘモグロビン値でわかります。貧血の大半は、鉄欠乏性貧血です。ダイエットなどの食事による栄養補給が不十分な人や、年齢的に鉄の貯蓄が足りなくなったころにみられがちです。しかし、貧血の一部には、白血病などの重大な血液疾患やがんなどが隠れている可能性もありますので、注意が必要です」と柴田先生。

貧血の裏に隠れている可能性がある病気には、婦人科疾患(子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体がん)、消化管疾患(大腸がん、胃がん、肝臓がん、十二指腸潰瘍、痔)、そのほか、腎不全、白血病、リウマチなどがあります。

「病院で貧血と診断されたら、原因がなんであるかを、すみやかに調べましょう。がんのような重大な病気が原因のこともありますが、女性の場合は婦人科系の病気の可能性が高く、子宮筋腫のような良性の病気でも長い年月の間に重症な貧血に発展していることもあります」(柴田先生)。

鉄剤はヘモグロビン値が回復しても続けるべし

「貧血の原因が鉄欠乏で、鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄を補う治療をします。ヘモグロビン値が改善すれば、基本的には治療終了となっていますが、それではまだ、かくれ貧血状態が改善していない場合もあります。油断せずに、定期的に検査をくり返したり、閉経前なら月経のたびに、少量の鉄剤を補い続けたほうがいいでしょう」

かくれ貧血かどうかを判断する上で、重要な検査項目が「貯蔵鉄(フェリチン)」です。フェリチンは、健診や人間ドックの項目にはないことが多いので、気になる場合は、医療機関できちんと調べてもらう必要があります。

「また、鉄剤は、ムカムカしたり便秘をしたり、中には腹痛や嘔吐してしまう人もいて続けづらい薬です。種類を変えると、大丈夫な人や内服時間を工夫することで、無理なく続けられることも多いので、遠慮なく医師に相談をしてください。どうしても内服が難しい場合は、注射にすることもできます」と柴田先生。

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鉄欠乏性貧血を診断する検査項目は…

病院で貧血を診断するときには、おもに以下の5つ血液検査の項目を総合的にみて判断します。ここでは、参考までに正常値をあげていますが、正常値は検査機関によって異なります。あくまで、参考値としてみてください。

【正常値】

赤血球数(赤血球の量:RBC)
男性 400万~539
女性 360万~489(万/μL)

ヘモグロビン(血色素量:Hb)
男性 13.0~17.0
女性 12.0~16.0 (g/dl)

赤血球の大きさ(MCV)
男性 80-100 
女性 80-100 (fl)

血清鉄(血中の鉄の量:Fe)
男性 60-210
女性 50-170(μg/dl)

貯蔵鉄(血中のフェリチンの量)
男性 20-200 
女性 10-90(ng/ml)

一般的にはヘモグロビン値(Hb)が男性13、女性12、高齢者11( g/dl)以下を目安に貧血と診断します。だるい、息切れなどはヘモグロビン値10g/dl以下で始めて現れるものです。なかには輸血が必要になる7g/dl以下の重症貧血になって気づく人もいます。本来なら、フェリチン(貯蔵鉄)が10ng/ml以下、血清鉄(Fe)が50μg/dl以下のかくれ貧血の段階で、治療開始がベストです。

貧血改善に大切な食事と睡眠

貧血の改善には、食事と睡眠が基本中の基本です。

「食事では、赤血球を構成するたんぱく質と鉄分をしっかりと補給することが大切です。 また、鉄は吸収されにくいため、吸収を助けて、造血機能を高めるほかの栄養素を併せて摂ることが大切です。これだけ摂っていればOKという食材はありません。偏りなく食べることが重要です。また、食べ物で摂った鉄分は、眠っている間に消化吸収され、小腸粘膜、脾臓、肝臓、骨髄に蓄えられます。 睡眠と鉄分は、相互関係があると言われ、うつ病などの精神疾患にも、両者の影響があると言われています」(柴田先生)

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貧血を予防する食材と効果的な摂り方

鉄を積極的に摂る日常生活を心がけましょう! 鉄には“ヘム鉄”“非ヘム鉄”の2種類があります。吸収率に差があるので貧血対策には、ヘム鉄と非ヘム鉄をバランスよく摂ることが大事です。

“ヘム鉄”は、動物性食品のレバー(特に豚)、あさり、かつお、ぶり、まぐろ(特に血合い部分)、牛肉などに豊富です。吸収率が10~30%前後と比較的高めなのが特徴。“非ヘム鉄”は、植物性食品の大豆製品、ひじき、小松菜、ほうれん草などに含まれています。しかし、吸収率が5%以下と低いことを意識して摂りましょう。

吸収率を高めるには、ビタミンCを合わせて摂ると効果的です。レバーにニラを合わせたニラレバ炒めのようなメニューや果物を食事の最後に摂るなどの工夫をします。鉄は、吸収されにくい栄養素で、特にコーヒー、紅茶、緑茶に含まれるタンニンは、吸収を阻害しますので、要注意です。 日本人の鉄分摂取量は、今では1日7mgにまで減っています。鉄瓶や鉄鍋で調理していた時代の半分以下です。朝食や昼食抜きでバランスの良い食事を摂りにくい人も増えています。日常生活でできるだけ、鉄を摂る習慣を取り入れましょう。

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【貧血を予防する栄養】

タンパク質: 肉(牛もも肉、豚もも肉)、かつお、まぐろ、うなぎ、卵、納豆、木綿豆腐、乳製品
鉄: あさり、レバー、ひじき、なまり、小松菜、がんもどき、ほうれん草、納豆、しじみ
ビタミンB12: レバー、ほっき貝、あさり、しじみ、かき、さんま、いわし、たらこ
ビタミンB6: レバー、まぐろ、かつお、ささみ、鮭、バナナ、さんま、さば、いわし
ビタミンC: 野菜、果物、じゃが芋
葉酸: レバー、菜の花、からし菜、春菊、モロヘイヤ、いちご、アボガド、ヤングコーン
亜鉛: かき、レバー、牛肉、ラム肉、たらばがに、うなぎ、納豆、たらこ、ごま
銅 : かき、ごま、大豆、空豆、小豆、いんげん、煮干し、卵、そば

お話を伺ったのは…柴田美奈子(しばたみなこ)先生

桜医院(http://www.sakura-iin.com)院長。帝京大学医学部卒業。同大学大学院卒業。医学博士。帝京大学市原病院(現ちば総合医療センター)内分泌内科、千葉県立東金病院女性専用外来、東京都立墨東病院女性外来ほかで女性医療と生活習慣病を診療。 2016年より現職。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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