9人に1人がかかる時代。見つけにくい“高濃度乳房”とは?乳がん専門医が語る検診の選び方

9人に1人がかかる時代。見つけにくい“高濃度乳房”とは?乳がん専門医が語る検診の選び方
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増田美加
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2025-10-20

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 10月はピンクリボン強化月間。世界のモニュメントがピンク色に染まっています。日本でも東京タワー、東京スカイツリー、京都・清水寺でもピンク色に点灯するランドマークイルミネーションが今年も実施されました。自分の大切な胸にも意識を向けて、乳がん早期発見のためにできることをお伝えします。

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乳がん検診は、いつからどんな検査を受ければいい?

日本では、全年齢で9人に1人が乳がんにかかるとされています。ほかの多くのがんは、年齢が上がるごとに増えていきますが、乳がんは妊娠・出産前の若い年代にも発症し、ピークは働き盛りの40代からで、第2のピークは60代です。乳がんを早期発見するために効果的な方法について、乳腺の専門医、島田菜穂子先生に聞きました。 

乳がん検診は、いつからどんな検査を受ければいいのでしょうか? 

「少なくとも、40歳から2年に1回は、マンモグラフィ検診を受けましょう。セルフチェックで発見できるしこりの大きさは、だいたい2センチ以上です。手で触って何もないからと満足してしまっては、手で触れてもわからない早期の乳がんの発見には不十分です。マンモグラフィや超音波検査による乳がん検診では、しこりなどの自覚症状が出る前のさらに早い段階の乳がんの発見が可能です。セルフチェックで何も異常を感じないからこそ、検診を受けて安全確認をすることが早期発見に欠かせないポイントなのです。

早期の乳がんは、自覚症状がほとんどありません。乳房のしこり、ひきつれ、乳首から血が出る、乳首の湿疹など、気になる症状がある場合には、その症状の原因を突き止める検査や診察をしないと、せっかくのサインを見落とすことになります。自覚症状を感じたら、検診を待つのではなく、“医療機関をすぐに受診”していただきたいです」と島田先生。 

また、「高濃度乳房(デンスブレスト)」という乳房タイプの人が日本人には40~70%います。マンモグラフィの画像では、脂肪の組織が黒く写って、乳腺組織は白く写ります。そして、しこりも白く写ります。ですから、乳腺が多いタイプの高濃度乳房の人は、白く写るのでしこりがあってもよく見えません。まるで雪原の白うさぎを探すかのよう、と表現されます。マンモグラフィで撮影して放射線科医が診断するとき、乳房のタイプを乳腺濃度に応じて4つに分類します。このうち乳腺濃度の高い2つが高濃度乳房。日本人では約40~70%の人が高濃度乳房と言われています。

 
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高濃度乳房(デンスブレスト)の検診はどうしたら?

高濃度乳房タイプの乳房では、マンモグラフィでは乳がんが見つかりにくく、精密検査を勧められる割合が高い傾向にあります。また、乳がんの発症リスクが高い、という日本女性を対象にした論文も発表されています*。

マンモグラフィ検診で、高濃度乳房とわかったら、どうしたらいいのでしょうか?

「現在、欧米に比べて、若い人の乳がん発症が多い日本女性の乳房に対して、どのような乳がん検診が有効かについて大規模検証が行われている最中です(J-START)*。

乳がんの発見率がマンモグラフィ単独の検診の場合、約70%であったのに対して、マンモグラフィに超音波検査を組み合わせることで、発見率が93%に向上したという中間報告が出来ました。この研究は、さらにマンモグラフィと超音波検査を組み合わせることによって、より乳がん死亡率を下げることができるのかという最終的な検証を行っているところですが、高濃度乳房の方の乳がん検診には、マンモグラフィに超音波検査の組み合わせなどの工夫が必要だということは、この結果からも言えると思います」(島田先生)

また、高濃度乳房どうかの乳房のタイプは、年齢によっても変化します。若いときに高濃度乳房でも、年齢を重ねると脂肪性乳房に変化することもあります。定期的なマンモグラフィ検診で、確認することが大切です」(島田先生)

*Ohuchi N, Suzuki A, Sobue T, et al: Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Tria(l J-START): a randomised controlled trial. Lancet, 387(10016): 341―348, 2016

痛くないマンモグラフィを受けるためのひと工夫

 
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マンモグラフィは痛くてイヤという人がいます。「そんなに痛みを感じない」という人もいる中で、痛いからと、乳がん検診へ向かう足が遠のくのは、早期発見の機会を逃してしまい残念です。超早期乳がん(0期)の悪性の石灰化を見つけられるのは、現状ではマンモグラフィだけです。痛くない怖くない検診をするために、何かいい方法はないでしょうか?

「マンモグラフィは、乳房を引き延ばして、一部、大胸筋も一緒に透明な板で挟ます。乳房を薄く引き延ばすことで、被爆のリスクも下がり、診断しやすい綺麗な画像が撮影できます。撮影するときに、緊張しすぎて体に力が入ってしまうと、痛みを感じやすくなります。リラックスして肩の力を抜いて受けていただけると、痛みはずいぶん軽くなります。

実は、乳腺は大胸筋の2層の筋膜(大胸筋浅層と深層)の間に存在しています。マンモグラフィを受けるときは筋膜ごと挟み込むことになりますので、大胸筋の筋膜が固まっていると、痛く感じることがあるかもしれません。検診を受ける前に、家で大胸筋のストレッチをしたり、筋膜をほぐす筋膜リリースをしてから受けると痛みが少なくなるかもしれません。よければ試してみてください。技師さんがマンモグラフィの扱いに慣れているかどうかも関係するかもしれません。見落としを防いで、精度の高い検診を受けるためにも、【日本乳がん検診精度管理中央機構】という組織で認定試験を行なっています。ここで認定をとっている医師、技師、施設のリストがありますので、施設探しのときに参考にしてみてください」(島田先生)

【特定非営利活動法人 日本乳がん検診精度管理中央機構】マンモグラフィ検診施設・画像認定施設リスト

お話を伺ったのは…島田菜穂子(しまだなおこ)先生 

ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道 院長。NPO法人乳房健康研究会副理事長。
1988年 筑波大学医学専門学群卒業。その後、筑波大学付属病院などを経て、東京逓信病院放射線科で乳腺外来開設。1998年~1999年 米国ワシントン大学メディカルセンターブレストヘルスセンター留学。2002年、日本初、乳がん啓発ランニングウオーキングイベントを開催。2008年より現職。放射線科診断専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、マンモグラフィ読影指導医。乳房超音波診断認定医、日本がん検診診断学会認定医。認定スポーツドクター、健康スポーツ医、東京2020聖火ランナー、サウナ・スパ健康アドバイザー。

『ピンクリボンウオーク2025』

ピンクリボン強化月間に合わせて、ピンクリボンウオークイベントを行なっています。スマホアプリで距離を計測。全国どこからでも参加できるオンライン型ウオーク&ランイベントです。実施期間:2025年9月23日~11月2日。エントリー期間:10月31日まで。 

11月2日には、富山国際会議場とその周辺でピンクリボンリアルウオークとオンライン表彰式、フィナーレイベントとしてトークショーなどが行われます。

『第13回日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会患者・市民参画プログラム』

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