【乳がん専門医が語る】40代から要注意!9人に1人がかかる乳がん。乳房と命を救うためにできること
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。乳がんは、日本女性の9人に1人がかかる、女性のがんで最も罹患数が多いがんです。「乳がんにかかりやすい人はどんな人?」「予防法は?」「早期発見法は?」 乳がんについて知ることで、乳房と命を守りましょう。乳がん治療のスペシャリスト、乳腺外科医の片岡明美先生に聞きました。
乳がんの症状は?
乳がんが増えていることを知っていて、心配している女性も多いと思います。早めに、乳がんに気づくには、どのような自覚症状に気をつければいいのでしょうか?
「乳がんの早期は、自覚症状はほとんどありません。進行すると、乳房のしこり、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対称になる、乳頭から分泌物が出る、痛みなどがあります。でもこれらの症状は、早期ではない可能性が高いのです」と乳腺外科医の片岡明美先生。
【自覚症状チェックリスト】
・ゴリッとして硬いしこり
・乳首(乳頭)からの分泌
・乳房のえくぼのようなへこみ
・乳房の皮膚の腫れやオレンジの皮のような凹凸
・乳房の左右差(形が非対称)
・脇の下や鎖骨上のリンパ節の腫れ
「乳房のしこりは、がんだけでなく、乳腺症など、良性の病気でも起こることがあります。それでも、この中でひとつでも思い当たる症状がある方は、自己判断せずに、早めに乳腺専門医を受診してほしいです」(片岡先生)。
乳がんができやすい場所は、あるのでしょうか?
「乳がんができやすい場所として、いちばん多いのは、乳房の外側の上の方(全体の53%)です。次に、乳房の内側の上(19%)、外側の下(14%)、内側の下(6%)、乳首付近(4%)の順。でも、乳房全体のどこにでも起こりますので、場所にこだわらず、いつもと違う変化を感じたら、受診してくださいね」
乳がんにかかりやすい人は?
乳がんの原因が何か、気になります。原因は、わかっているのでしょうか?
「残念ながら、原因ははっきりとはわかっていません。けれども、乳がんの原因のひとつに、女性ホルモンのエストロゲンの影響があると言われています。食生活の欧米化にともなって、高タンパク、高脂肪の食事が増え、日本女性の体格がよくなり、初潮が早く、閉経が遅い、などの人が増えてきました。さらに、女性の社会進出が進み、出産回数が減っています。このように、エストロゲンが分泌している期間が長くなったことが原因のひとつと考えられています。また、遺伝性、家族性の乳がんもあります。血縁者に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる場合はリスクが高いと言えると思います」(片岡先生)。
どんな人が乳がんのリスクが高い(かかりやすい)のでしょうか?
「乳がんにかかりやすい因子には、下記のようなものがあげられています」(片岡先生)。
【乳がんにかかりやすい因子】
・出産経験がない
・授乳経験がない
・母、姉妹など家族に乳がんや卵巣がんになった人がいる
・初産年齢が30歳以上
・乳がんや良性の乳房の病気になったことがある
・身長が高い
・閉経後の肥満
・初潮年齢が早い
・閉経年齢が遅い
・ホルモン補充療法(HRT)を5年以上、または60歳以上で行っている
日本女性の乳がんは、40歳から増え始め、60代がピークになっています。乳がんにかかる方が、働き盛りで家族や社会に頼りにされる忙しい年代の40代後半から増えているのは、日本の特徴です。欧米では、60代以降に増えてきます。そして、乳がんにかかる人の割合(罹患率)や、亡くなる人の割合(死亡率)が増加しているのも、日本ならでは。欧米では、乳がんで亡くなる人の割合(死亡率)は減って来ているのです。今、日本女性の9人に1人が乳がんにかかっています。毎年、約9万7千人の方が新たに乳がんにかかっています(がん情報サービス2019年データ)。
30代でも乳がんにかかる人はいますが、特に注意したいのは更年期以降です。40歳を過ぎたら、乳がんは他人事ではありません。繰り返しますが、自分の乳房に関心をもって、変化があったら、すぐに受診してください。
乳がんは予防できる?
みんな、乳がんにかかりたくないと思っています。予防できる方法はないのでしょうか?
「乳がんの予防は、難しいのです。食事や生活習慣では、完全に防ぐことはできません。でも、乳がんは早期発見すれば、95%が治る時代になっています。早期発見して、早期治療すれば、完治できます。乳がんは、自分で見つけることのできるがんのひとつです。日ごろから入浴や着替えのときに、自分の乳房に関心をもって、見たり触ったりして、セルフチェックを心がけましょう。ただし、セルフチェックでは見つけられないこともあるため、40歳になったら定期的に乳がん検診を受けることも重要です」(片岡先生)。
お話を伺ったのは…片岡明美(かたおかあけみ)先生
がん研有明病院乳腺外科医長。1994年、佐賀医科大学卒業。九州大学医学部第二外科、国立病院機構九州がんセンター乳腺科などを経て、2016年より現職。日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本外科学会指導医、日本乳癌学会乳腺指導医。検診マンモグラフィ読影認定医師、認定NPO法人ハッピーマンマ理事、日本乳癌学会評議員、日本サポーティブケア学会妊孕性部会メンバー。
★片岡先生も所属する一般社団法人日本乳癌学会の第31回学術総会と乳がん関連のNPO法人が、「乳がんを知るための一歩、知らせるための一歩、支えるためにもう一歩」をテーマに、「ミニウオーク&ランフォーブレストケア ピンクリボンウオーク」を開催します!
増え続ける乳がんに対し、参加者と企業や団体、公共団体が一丸となって、乳がん早期発見の大切さを伝え、乳がんにやさしい社会をめざして発信する大会です。ウォーキングアプリを使うので、全国どこからでも、誰でも参加できます! 6月1日~7月1日までの1カ月間、自分のペースで歩いて、乳がんの啓発活動に参加しませんか?
「第19回ミニウオーク &ランフォーブレストケア ピンクリボンウオーク 2023」
【公式サイト】https://pinkribbonwalk.breastcare.jp/
【対象】主旨に賛同する方ならどなたでも
【開催期間】2023年6月1日~7月1日(エントリー締切 6/30(金)13:00)
【開催形式】アプリ(TATTA)を使ったオンライン開催
【参加費】1,000円(税込み)高校生以下無料
【共催】第31回日本乳癌学会学術総会と認定NPO法人乳房健康研究会、認定NPO法人ハッピーマンマ
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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