更年期に多く、汗の季節にできやすい…顔の白いブツブツ「エクリン汗嚢腫」って何?皮膚科専門医が解説

 更年期に多く、汗の季節にできやすい…顔の白いブツブツ「エクリン汗嚢腫」って何?皮膚科専門医が解説
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増田美加
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2023-03-18

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 顔の白いブツブツ、気になりませんか? 更年期世代に多く、汗の季節にできやすいエクリン汗嚢腫(かんのうしゅ)の可能性があります。皮膚科に行っても、治療してもらえないこともある、気になる肌トラブルにどう対応すればいいのか?丁寧な診察に定評がある皮膚科専門医の堀内祐紀先生に伺いました。

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汗をかく時期にできる顔の白いブツブツって何?

年齢を重ねると、若いときには経験したことのない、肌トラブルを実感することが増えてきます。なかでも汗をかきやすい季節に、小さな白っぽいブツブツが肌にできて困るという女性が多くいます。

「女性の顔の皮膚には、ブツブツ(皮疹)が多発する病気がたくさんあります。似ている病気が多いため、見極めが難しく、また、いくつかの皮疹が同時にできていることが多いのも特徴です。

その中で30代後半~60代、特に更年期世代の女性が気になるのは、顔にできやすい“エクリン汗嚢腫(かんのうしゅ)”です。真皮内のエクリン汗腺が拡張して、袋状の嚢腫(良性)を形成することで起こります」と堀内祐紀先生。

エクリン汗嚢腫のきっかけは多汗です

エクリン汗嚢腫は、汗をかきやすい時期にでき始め、症状が悪化するのが特徴です。汗が溜まりやすく、目の周りは皮膚が柔らかいために、目立ちます。エクリン汗腺の奇形が原因の疾患ですが、なぜできるのかは不明です。汗を多くかくことで悪化するため、更年期でホットフラッシュのある女性や甲状腺機能亢進症の方に多く見られます。

「顔にかく汗が減る冬季には、目立たなくなる人もいますが、そのまま残る人もいます。良性ですので、本人が気にならなければ放置しても問題ありません。そのために、あまり有効な治療法が確立されてきませんでした。けれども、人に見えやすい目の周りなどに、たくさんできると気になりますよね。治療したい方は、美容皮膚科を受診して相談すると良いと思います」(堀内先生)。

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こんなブツブツはエクリン汗嚢腫かも?

エクリン汗嚢腫の症状をまとめました。下記のような顔のブツブツは、エクリン汗嚢腫かもしれません。チェックしてみてください。

・汗をかく季節になると気になる
・目の周りや肌の柔らかいところにできる
・複数できる
・肌色っぽい透明な白いブツブツ
・冬になると目立たなくなる

エクリン汗嚢腫であれば、良性の皮疹なので、そのままにしておいても問題ありません。ただ、「気になる」「治したい」と思う方は美容皮膚科を受診してください。

白いブツブツはほかにもある!

顔にできる白いブツブツには、いろいろな種類があります。

エクリン汗嚢腫(かんのうしゅ)

更年期世代の女性の顔に比較的よく見かける皮疹です。白っぽくて中心が透明。汗管腫(かんかんしゅ)との見極めが難しい。

汗管腫(かんかんしゅ)

女性に多い皮疹。目の周り、特に下まぶたに凸凹した1~3ミリのイボ状のものが多発します。

稗粒腫(はいりゅうしゅ)

顔にできる1~2ミリの角質の塊です。目の周りに多い白い粒々で、ニキビと間違えられることもあります。

脂漏性(しろうせい)角化症

皮膚老化に伴ってできるイボ。顔や頭にできることが多く、背中や胸にもできます。表面がザラザラして見えます。

顔面播種状(はしゅじょう)粟粒性(ぞくりゅうせい)狼瘡(ろうそう)

下まぶたを中心に、左右対称に同じブツブツが多数できます。男女とも20~30代に多いのが特徴です。

青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)

ウイルス性で、こすると広がります。平べったく隆起した形のイボで、肌色または褐色です。

皮膚科でも治療法は確立していませんが、試すべき治療法は3つあります

ここにあげた白いブツブツの中で、エクリン汗嚢腫、汗管腫、稗粒腫は、美容皮膚科でないと治療できないのでしょうか?

「この3種類の白いブツブツは、良性で悪さをするわけではないため、一般皮膚科では治療を行わないケースもあります。でも、悩んでいる女性は少なくありません。確立された治療法ではなく、自費にはなりますが、美容皮膚科で行う次の3つの治療法は、試してみる価値はあると思います」と堀内先生。

① 電気熱治療「アグネス」。

超極細の針で高周波(RF)による熱を伝えて、皮膚深部のエクリン汗腺の病変部分のみを焼灼する治療です。併発することの多い、汗管腫にも有効です(下記に、詳しく紹介します)。

② 「アトロピン眼軟膏(がんなんこう)」。

汗腺を刺激して発汗を促す神経物質アセチルコリンを抑制して、汗を減らす作用のある薬(保険適応外)です。6~7か月で軽快する人もいます。絶対に目に入らないように注意して、患部に塗る必要があります。

③ 「ボトックス®」。

わき汗や眉間のシワ治療などに使われている注入治療です。エクリン汗腺嚢腫は、発汗が多いと増加するため、目の周りに注入して汗を抑えることで、皮疹をできにくくします。

「また、漢方薬の五苓散(ごれいさん)は、水のバランスを整え、過剰な発汗を抑える作用があるため、医師に処方してもらうのもお勧めです。どの治療法を選択するかは、美容皮膚科の医師に相談してみるといいと思います」(堀内先生)

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セルフケアや予防としてできること

セルフケアや予防法としては、汗をたくさんかかない方法しかないのでしょうか?

「汗の溜まりが皮疹に繋がるので、大量な汗をかかないほうがケアになります。そうはいっても、運動や入浴を控えるにも限度がありますよね。汗が出るタイミングでアイスパック(保冷剤)などで冷やすといいでしょう。また、皮膚が乾燥すると、汗がスムーズに排出されません。保湿に気をつけ、毛穴を詰めるようなメークをしないことも大事です。

また、セルフケアでは、負担が少なく、ゆっくりと改善していく化粧品がいいと思います。エクリン汗嚢腫や汗管腫には、弱いレチノール(ビタミンA)がおすすめです。肌代謝をよくして、自分の肌力をアップします。マイルドなタイプのレチノールを使いましょう」と堀内先生。

エクリン汗嚢腫や汗管腫の治療に役立つ、電気熱治療「アグネス」

エクリン汗嚢腫や汗管腫の治療として行う「アグネス」について教えてください。

「毛穴よりも細い針を真皮の奥深くにある病変部まで差し込み、高周波(RF)を伝え、ピンポイントで焼灼する治療です。表面麻酔を行いますので、痛みはほとんどありません。皮膚へのダメージもダウンタイムもほとんどありません。軽いメークをして帰れます。

レーザーなどで治療効果が得られない場合にも有効です。治療後約1か月で皮疹が小さくなるのを実感できます。しかし、また皮疹が再発することもあり、数回の治療が必要な場合もあります。汗管腫や、毛穴の黒ずみにも効果的な治療です」(堀内先生)。

自費なのでクリニックにより異なりますが、堀内先生のクリニックでは、皮疹1~10個で3万円(麻酔代、初診料、税別)。間隔を開けて、3~5回程度、行うのがお勧めです。

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お話を伺ったのは…堀内祐紀(ほりうちゆうき)先生
秋葉原スキンクリニック院長。東京女子医科大学卒業。東京女子医科大学病院、都内美容皮膚科クリニックを経て2007年より現職。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本脱毛医学会副理事長・日本レーザー医学会・日本抗加齢医学会所属。アラガンジャパンファカルティー。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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