【医師が解説】毛細血管の老化は45歳から?!「ゴースト血管」にしないために今、すべきこととは?

 【医師が解説】毛細血管の老化は45歳から?!「ゴースト血管」にしないために今、すべきこととは?
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増田美加
増田美加
2023-01-21

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 毛細血管は、全血管の95~99%を占め、体の隅々に必要な栄養と酸素を運んでいます。この毛細血管は非常にもろく、更年期世代の45歳ころから老化によるダメージを受け始め、ゴースト血管に向かいます。ゴースト血管を予防し、肌やアンチエイジングにも大きな影響を及ぼす、毛細血管力を高める方法をお伝えします。毛細血管の健康に詳しい、赤澤純代先生(金沢医科大学総合内科教授、女性総合医療センターセンタ―長)を取材しました。

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毛細血管力の低下は、冷え、むくみ、肌荒れが起こりやすい!

毛細血管のダメージは、肌老化、冷え、むくみだけでなく、骨粗鬆症、腸内環境の悪化、認知症、糖尿病、眼科分野で加齢性黄斑変性症や緑内障とも関連があります。病気予防とアンチエイジングのためにも、毛細血管力を高めることは大切なのです。「漢方では、血の巡りが悪く滞った状態を「瘀血(おけつ)」と表現しますが、瘀血タイプの人は、毛細血管にもダメージを受けている可能性がわかってきました。

毛細血管にダメージを受けていると、血流が滞った状態になりがちです。肌トラブル(シミ、クマ、ニキビなど)に悩みやすい傾向があり、また肩こり、関節痛、頭痛なども起こしやすい体質なのです」と長年、女性総合外来で西洋医学をもとに、漢方医学の視点を取り入れた診療を行ってきた赤澤純代先生は話します。

瘀血タイプとは、どのような人が当てはまるのでしょうか? 下記でチェックしてみましょう。

【「瘀血タイプ」チェック】

漢方でいう「瘀血(おけつ)」は、血の巡りが悪く、滞っていて、体に栄養素が巡らない状態です。巡りが悪いことから、皮膚トラブル(シミ、クマ、ニキビ、肌荒れなど)に悩みやすい傾向があります。毛細血管力も低下しています。

毛細血管力が低下した、瘀血タイプの人が起こりやすい症状をチェックしてみましょう。

・あざができやすい
・シミやそばかすが気になる
・寝ても取れないクマが気になる
・肩こりに悩んでいる
・吹き出物ができやすい
・頭痛が起こりやすい

これらに当てはまる人は、瘀血タイプで、毛細血管力が低下している可能性があります。

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毛細血管のダメージは、不調や病気の原因にも

これまで、血管の老化や悪い生活習慣による血管の障害は、太い血管が動脈硬化を起こすことによる心筋梗塞や脳梗塞の危険性ばかりに焦点が当てられていました。けれども、最近の研究から、動脈(太い血管)の何十~何百分の1の直径しかない毛細血管の老化が、さまざまな不調や病気の発症に関係することがわかってきて、注目が集まっています。

毛細血管は、全血管の95~99%を占めていて、体の隅々に必要な栄養と酸素を運んでいます。この毛細血管は非常にもろく、更年期の45歳ころから老化によるダメージを受け始めます。「毛細血管が不安定になり、大事な栄養や酸素が血管から漏れ出しやすくなり、流れも滞るようになってきます。まさに瘀血タイプです」と赤澤先生。

毛細血管にダメージがあると、栄養や酸素が必要な細胞に届かないだけでなく、新陳代謝やデトックスの働きも失われます。全身を隈なく巡る毛細血管のダメージは、全身の血行不良はもちろん、皮膚、粘膜、関節、骨、脳、内臓、代謝や免疫にも密接に関係します。さまざまな不調や病気の原因につながるのです。

ゴースト血管になってしまうと大変!

毛細血管のダメージが進行すると、毛細血管は血液が流れない、無機能血管=「ゴースト血管」となり、血行不良だけでなく、毛細血管の数自体が減少してしまいます。

骨の毛細血管数が減少すれば、骨粗鬆症。脳で生じれば認知症。呼吸器では呼吸機能低下。肝臓では肝機能低下。骨格筋力の低下。皮膚では乾燥、シワなどが起こります。毛細血管のゴースト血管化を少しでも遅らせることが各臓器の老化を防ぎ、健康寿命を延ばすことになるのではと言われているのです。

糖化、酸化はゴースト血管化を進めます

「毛細血管の老化やダメージ、つまりゴースト血管化を促進させる原因は、糖化(細胞の焦げ)と酸化(細胞のサビ)です。まず、糖質の摂りすぎや血糖値が乱高下するような食生活は、糖化を促進させます。そして、活性酸素が体内に過剰に発生すると、全身がサビた状態になり、血管の老化も進みます」と赤澤先生。

どのように対策すればいいのでしょうか?

「対策としては、糖化、酸化に気をつけた生活習慣が大事です。糖質の取りすぎに注意。酸化を進める活性酸素にも注意です。活性酸素は、大気汚染、強い紫外線、喫煙、アルコール、化学薬品、食品添加物、運動のやり過ぎなどでも発生します。特に、毛細血管の外側の壁細胞は、糖化や酸化を進める活性酸素に非常に弱いのです。

活性酸素を防いで、糖化と酸化を予防するには、バランスの良い食事、良質の睡眠、血流を上げる運動、入浴、マッサージも、毛細血管力をつけるために大切です」と赤澤先生。

タイツー(Tie2)作用がある植物も

毛細血管力が低下している瘀血(おけつ)タイプの人には、どのような治療法があるのでしょうか?

「瘀血の人への漢方の治療では、桂枝、桂皮(シナモン)や朝鮮人参を含んだ漢方薬を処方します。これらの生薬は、血流をよくする作用があります。瘀血の症状がある人は、漢方薬で治療するのはいいと思います」(赤澤先生)。

また、毛細血管の外側の壁細胞と内皮細胞の接着剤の役割をするタイツー(Tie2)という体内酵素を活性化させ、毛細血管の老化を遅らせる植物もあります。タイツー(Tie2)作用がある植物は、ヒハツ(長胡椒の一種)、月桃葉、ルイボス、ハス胚芽、かりん、スターフルーツ葉などです。お茶やスパイス、サプリメントなどで摂ることができます。

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毛細血管力が低下している人への漢方薬

「漢方では、「血(けつ)」の流れが滞ると、巡りが偏ってしまう「瘀血(おけつ)」という状態と判断します。更年期世代では上半身はのぼせ、下半身は冷えてむくむ、いわゆる「冷えのぼせ」になる人も少なくありません。そんな人には、桂枝、桂皮や人参などの生薬を含んだ、次に紹介するような漢方薬が処方されることが多いです」(赤澤先生)。

「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」

滞った「血」の巡りを良くして、のぼせや足冷えなどを感じる人。生理痛、月経不順、月経異常、血の道症などを改善する。

「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」

消化器の働きを高め、栄養を行き渡らせ、「気」と「血」の両方を補う。体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷えなどに。

お話を伺ったのは…赤澤純代先生  
金沢医科大学総合内科教授、女性総合医療センターセンタ―長。金沢医科大学卒業。東京大学第三内科で基礎研究ののち、金沢医科大学循環器内科へ。2002年、女性総合外来(現・女性総合医療センター)を開設。東洋医学と西洋医学の視点を融合させた医療を行う。著書に『血管の強化書』『血流美人』(共にワニブックス)。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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