【更年期から急低下する骨密度】骨粗鬆症専門医に聞く「いつの間にか骨折」どうしたら予防できる?

 【更年期から急低下する骨密度】骨粗鬆症専門医に聞く「いつの間にか骨折」どうしたら予防できる?
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増田美加
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2022-11-12

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。

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更年期から女性は男性より2~3倍早く骨密度が減る!

女性ホルモンの分泌の減少によって、40代後半から骨密度は急激に低下します。骨粗鬆症は女性に圧倒的に多く、80%が女性です。骨粗鬆症が怖いのは、骨折するまで自覚症状がないことです。今から、骨の貯金を増やしておくことが重要! 骨粗鬆症の専門家である細井孝之先生にお話を伺いました。

「女性の骨密度は、18歳くらいでピークに達します。その後、40代くらいまではほぼ一定ですが、女性ホルモンが減少する40代後半から急速に低下していきます。男性は、45歳を過ぎからゆっくり年1%ずつ減っていくのに対して、女性の減り方は早く、年2~3%ずつ減少してしまいます」(細井先生)。

大きく減り始める前に、骨の貯金をいかに増やしておけるかが、いつの間にか骨折を予防するためにも重要です。

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閉経前に骨の貯金をどれだけ増やしておけるかが勝負!

「骨は常に代謝していて、骨の形成と骨の破壊が繰り返され、生まれ変わっています。骨粗鬆症とは、骨代謝のバランスが崩れ、骨形成よりも骨破壊が上回る状態が続き、骨がもろくなった状態のことです」と骨代謝の専門家、細井孝之先生は言います。

骨は、絶えず骨芽細胞によって骨形成される(新たに作られる)と同時に、破骨細胞によって骨吸収(骨が破壊)され、常に新しく作り直されるという新陳代謝(リモデリング)を繰り返しています。このリモデリングにより、骨は約5年をかけてすべて入れ替わると言われています。ところが閉経後、骨形成のための骨芽細胞を活発にし、骨吸収をする破骨細胞にほどよくブレーキをかける女性ホルモンのエストロゲンが激減してしまいます。

若いときは、骨吸収(骨破壊)と新たな骨形成のバランスが保たれていますが、閉経でこのバランスが崩れ、骨吸収が上回った状態が続くと、骨量が減少します。その結果、骨がもろくなり、簡単に骨折するようになってしまいます。これが骨粗鬆症なのです。

「こうした閉経という生理的な変化に加えて、遺伝的要因や栄養不良、運動不足といった生活習慣も、骨粗鬆症の発症に大きく関係しています。また、骨形成に必要なカルシウムは、腸から吸収され、骨にとり込まれますが、加齢により腸からのカルシウム吸収が悪くなってしまうのも原因のひとつです。骨吸収と骨形成のバランスがとれている閉経前に、骨密度の貯金をいかに増やしておけるかが大切です」(細井先生)。

猫背になったと感じたら圧迫骨折している可能性が

骨粗鬆症が怖いのは、進行するまで自覚症状がなく、気づかないことです。骨粗鬆症の最も重大な合併症は、骨折です。「猫背になったなあ」「身長が縮んだかしら?」と自覚症状を感じたときには、すでに脊椎の圧迫骨折が起きている可能性が高いのです。まさに、いつの間にか骨折です。

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気づかないうちに背骨がつぶれていないか、チェックしてみましょう。

□身長が3㎝以上、縮んでいたら、症状はなくても圧迫骨折の確率が約5割です。
□4㎝以上、縮んでいた場合は、ほぼ確実です。

「猫背や身長低下の原因が、姿勢の悪さから起きているのであれば、身長低下は3㎝以下のはずです。背骨がつぶれていないかをセルフチェックする方法を紹介しますので、下記の方法で、チェックしてみてください」(細井先生)。

【壁後頭部テスト】

壁の前に背中を向けて立ちます。頭、背中(両肩の位置)、お尻、かかとの4点を壁につけて立つことができますか? 4点のどこかに、壁につかないところがあったら要注意です。背骨に圧迫骨折を起こしている可能性があります。

骨密度の検査はDXA法で

骨密度が減っているかどうか、検査するにはどうすればいいでしょうか?

「骨粗鬆症の骨密度検査は、45歳から5年に1回は行いましょう。60代になったら年1回は検査したほうがいいでしょう。骨密度の測定は、全身を測るDXA(デキサ)法、かかとで測る超音波法、手の甲の骨で測るMD(エムディー)法がありますが、DXA法が最も精度の高い検査法です」と細井先生。

DXA法は、微量なX線をあてて骨密度を測定する方法で、腰椎と大腿骨の両方を測定することが推奨されています。DXAは、正確に骨密度を測定できる診断法として、国際的にも標準的な方法になっています。骨密度値が若年成人平均値の70%以下なら骨粗しょう症です。DXA法による検査は、台の上にあお向けに寝て約5分で測定できます。このほかに背骨のX線写真、採血や尿検査による骨代謝マーカーの測定結果などを組み合わせて診断します。整形外科や婦人科、そして内科でも行うことができます。

骨密度
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どうしたら予防できる? 骨の貯金を増やすには

「骨密度の低下を防ぎ、できるだけ遅らせることは可能です。カルシウムだけ摂ってもダメです。バランスのとれた食事と運動で骨密度の低下を遅らせることができます」と細井先生。

食事はカルシウムだけでなく、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンB、葉酸など、骨と筋肉にいい栄養素をバランスよく摂ることが重要です。特にカルシウムとビタミンDは、同時に摂ることで腸管でのカルシウム吸収率を上げられます。カルシウムは1日700~800㎎、ビタミンDは1日10~20μgが目標。

ビタミンD
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カルシウムは乳製品、小魚、野菜、大豆製品の中から1日2種類を組み合わせることで1日の必要量の約半分が摂れます。牛乳1杯は、カルシウム220㎎、ヨーグルト1個は100㎎(大きさによります)なので、乳製品を上手に使うと効率的に摂取できます。

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ウォーキングや筋トレも大切

「骨にカルシウムを蓄えるためには、ウォーキングや筋力トレーニングなど、骨に物理的な刺激が加わる運動が推奨されます。ジャンプするのもいいので、縄跳びもいいですね。階段の上り下りや歩くことを増やすだけでも効果があります。骨粗鬆症は、骨の生活習慣病と言われるほど、予防と対策には、食事と運動が欠かせません。もし、骨粗鬆症と診断された場合も、食事と運動を行いながら、薬で治療します。

お薬では、骨形成と骨吸収に関係する「活性型ビタミンD3」、更年期障害も治療できる「女性ホルモン剤(エストロゲン)」、エストロゲンと似た骨作用のある「SERM(サーム)」、骨吸収を行う破骨細胞の働きを抑制する「ビスフォスホネート」や「抗ランクル抗体(注射)」、骨形成を促進する「副甲状腺ホルモン製剤(注射)」、骨形成を促進し骨吸収を抑制する「抗スクレロスチン抗体(注射)」などから、その人の状態に合わせて最適なものを選んで治療します」(細井先生)。

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細井先生、骨粗鬆症を予防したい女性たちへのアドバイスをお願いします。

「更年期の閉経前の女性ホルモンのエストロゲンが分泌されている間に、骨密度の貯金を増やしておくことが、閉経後の大きな財産になります。閉経後の方は、いかに骨密度を減らさないか、減る速度を遅くすることが重要です。その鍵は、バランスのよい食事と運動につきます。将来、骨折して寝たきりになるかどうかは、今、更年期世代からの生活習慣が大きく影響することを知っていただきたいです」(細井先生)。

お話を伺ったのは…細井孝之先生

医療法人財団健康院理事長、健康院クリニック院長。千葉大学医学部医学科卒業。東京都健康長寿医療センター内分泌科部長、国立長寿医療研究センター臨床研究推進部長を経て現職。骨粗鬆症などの骨代謝疾患、抗加齢医学が専門。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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