【更年期以降のひざ痛】医師が解説!ひざ痛が治らないワケ、痛みの負のスパイラルを止める唯一の方法
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。特に更年期以降の女性に増えるひざ関節痛。その予防と対策を京都大学教授の専門医、青山朋樹先生に取材しました。
更年期以降のひざ痛のほとんどは、変形性ひざ関節症
ひざ痛の悩みは国内約3000万人!更年期になるとひざの痛みを感じる人が増え、女性は50代以降に顕著になります。
いつまでも立って歩くことができる関節力を維持していかないと、将来、自分の足で立って歩いて生活することができなくなったら、悲しいですね。特に更年期以降の女性に増えてくるのが、ひざ関節痛です。
「ひざ痛のほとんどは、変形性ひざ関節症です。ひざ痛の症状は一気に現れず、何年にもわたり、少しずつ症状が重くなっていくのが特徴です。そして、残念ながら、一度すり減った軟骨は、元には戻りません。初期の段階で治療を始め、病気の進行を食い止めることが大切です」と青山朋樹先生。
ひざのこわばり、違和感、痛みは要注意
特徴的な症状は、ひざのこわばりや違和感、痛みです。思い当たったら、初期の変形性ひざ関節症の可能性があります。医療機関を早めに受診してください。
原因はなんでしょうか?
「変形性ひざ関節症の原因は、加齢、筋肉の衰え、肥満、O脚・X脚、ひざ関節の損傷などです。しかし、これらの原因があっても、正しくメンテナンスをしていけば、予防や改善が可能です。かつては、O脚やX脚の方は、体質だから治らないと考えられてきました。でも今は違います。最近では、運動療法や治療法で改善が可能になりました」と青山先生。
ひざ痛の原因NO.1といわれている変形性ひざ関節症とは、関節のクッションである軟骨が加齢や筋肉量の低下などですり減って、関節頭と関節窩部が直接ぶつかることで、炎症や痛みが生じる病気です。
年齢を重ねると発症しやすく、男性より女性に多い病気です。初期には、痛みがあっても少し休めばやわらぐため、つい放置してしまい、それが悪化につながりかねません。違和感に気づいた段階で、早めのケアが大切です。
痛みの“負のスパイラル”に陥る原因とは?
半月板損傷や靭帯損傷がある方は、変形性ひざ関節症になりやすいと言われていますが、何か方法はありますか?
「はい。半月板損傷や靭帯損傷がある方でも、メンテナンスをしっかりしていれば、痛みもなく運動ができている人もいます。逆に、ひざ痛が慢性になっている人の中には、骨の炎症や変形がなくても、過去の痛みによる記憶が恐怖回避思考となって、脳が「痛い!」と感じてしまう心因性の痛みの人もいるのです。ですから、痛みを感じたら、早い段階でメンテナンスをしっかりしていくことが大事。過度の安静はNGです」(青山先生)。
過度の安静は、「運動不足 ⇒ 筋力低下 ⇒ 活動性の低下 ⇒ 関節の負担増加 ⇒ 痛みの増加」につながります。運動不足は、痛み増加の“負のスパイラル”に陥る原因になるのです。
まずは早期に、痛みを止める治療を
ひざのこわばりや違和感、痛みを感じたら、変形性ひざ関節症の初期段階と思って、医療機関を受診しましょう。医療機関での治療の基本は、まず運動や薬で症状を緩和させる方法です。
「ひざが腫れているときや変形の少ない初期段階では、外用薬、内服薬、座薬、注射薬などで、まず炎症と痛みを抑えます。注射は、ひざの関節内にヒアルロン酸を注射します」(青山先生)。
ヒアルロン酸は、もともとひざの関節液に多く含まれていて、関節の滑りを滑らかにしたり、関節の衝撃を和らげたりする役割があり、変形性ひざ関節症だと、ヒアルロン酸が少なくなると言われています。これらの治療を2~3か月続けることでかなり症状は改善します。2~3か月続けても、効果がなく、ひざの痛みや変形が悪化している場合は、手術という選択もあります。
運動で、ひざ痛は楽になります!
「手術を考える前に、痛みを抑えるお薬の治療を行いつつ、運動を継続することが大事です。痛みで足を動かさなくなると、ひざ周りの筋力が落ちて、関節の安定性が悪くなります。そうなると、ますますひざに負担がかかって痛みが強くなりやすいのです。重要なのは、急性期を過ぎたら、痛くても動くことです。動けば、痛くなくなります」と青山先生。
もうひとつ運動にはメリットがあります。運動は、変形性ひざ関節症の原因にもなる肥満予防にも役立ちます。人が歩くときには、体重の2~3倍、階段の上り下りには6~7倍もの負荷がひざにかかり、軟骨をすり減らします。肥満の方は、ひざ関節への負担を高めるだけでなく、軟骨や骨、腱の分解を進め、スカスカにしてしまいます。体重コントロールは、食事だけで行うと、筋肉を減らすことになるため要注意です。運動しながら、体重コントロールと筋力づくりを行うことが大切なのです。
筋トレなら大腿四頭筋を鍛えるスクワット
どのような運動をするのがよいのでしょうか?
「運動は、ウォーキングや簡単な筋トレ、ストレッチなどがおすすめです。運動習慣のない人は、まずはウォーキングから始めましょう。筋トレをするなら、最初は大腿四頭筋を鍛えるスクワットがいいでしょう。日常的に自転車に乗ることもおすすめです。筋力の維持は、骨のためにも、内臓にも、目や脳のためにもいいことがわかっています。正しい運動習慣を身につけましょう。早く気づいて始めた人が勝ちです!」(青山先生)
今回のまとめ
ひざが痛いと「運動はできない。痛みを悪化させる」と考えてしまいがち。でも、痛みの始まりの急性期が過ぎたら、安静にしているのは考えものなのです。ひざを支える筋肉が衰えてしまい、ますます痛みが強くなる負のスパイラルに陥ります。ひざ痛を止めるには、適度な運動が大事です。まずはウォーキングから習慣にしましょう。
お話を伺ったのは…青山朋樹 先生
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 イノーべーティブリハビリテーション科学研究室 教授
群馬大学医学部医学科卒業。京都大学医学部附属病院整形外科ほかを経て現職。専門はリハビリテーション医学、整形外科学、再生医学。運動を用いた健康アプローチとしてのトレーニングをウィメンズヘルスほか、幅広い分野で研究している。
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く