足の専門医が【外反母趾、巻き爪が治らない理由】を解説|60代からの歩行困難を予防する足のケア方法

 足の専門医が【外反母趾、巻き爪が治らない理由】を解説|60代からの歩行困難を予防する足のケア方法
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増田美加
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2023-02-18

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 筋力や骨密度が加速度的に低下してくる更年期。足底のアーチが崩れ、外反母趾、巻き爪などの足のトラブルが発症しやすくなります。あきらめてはダメ。今から対処することで、60代からの歩行困難を予防できます。足トラブルに特化した治療とケアを行うクリニック院長、桑原靖先生に伺いました。

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足底のアーチの崩れがサインです!

外反母趾や巻き爪に悩むのは、ほとんどが女性です。それは男性に比べ、筋肉量が少ないことやヒールを履く生活習慣など、さまざまな要因が影響しています。

「外反母趾や巻き爪など足のトラブルが発症するのは、足底のアーチが崩れることから始まります。そのままにしておくと、老化による体幹の筋力低下と関節の可動域が狭まることも加わって60代以降、歩くのが困難な状況へと向かってしまいます。60代以降は正常な歩行ができにくくなる人が増えてきます。

女性の足のトラブルは、男性の4倍です! 一生自分の脚で歩くために、足トラブルの予防とケアは重要です」と桑原靖先生。

体が歪むのは、足底の形の崩れが原因

女性は、年齢を重ねるごとに、外反母趾、巻き爪だけでなく、ウオノメ、タコ、強剛母趾、足底腱膜炎など、足のトラブルの悩みが増えてきます。その原因はどこにあるのでしょう?

「足の痛みや変形は、症状が起こる部位によって、さまざまな病名がつけられています。しかし、根本的な原因のほとんどは、足の骨格構造の崩れです。

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足は体の土台です。構成する骨の数は、左右の足で全身の4分の1ととても多いのです。骨と骨を繋ぐ靭帯や筋肉の数は、それをさらに上回ります。

これらが全て正しい位置に保たれていれば、トラブルは起きません。しかし、一部に偏った荷重がかかり、足の形が崩れてしまうと、その最も大きい部位に、痛みや変形が出てくるのです。そしてその歪みの連鎖が全身の不調へと波及していきます」(桑原先生)。

足の形が崩れる要因は、なんなのでしょうか?

「4大要因と言われるのは、遺伝、加齢、女性、生活習慣です。遺伝や加齢や女性であることは、避けられない要因ですが、生活習慣の見直しとケアで進行させないようにすることは可能です」と桑原先生。

ひざ、股関節、肩、首などの痛みにもつながります!

足トラブルが最も進行しやすいのは、50歳前後の更年期世代。加齢と女性ホルモンの低下によって、足の骨格を支えてきた筋肉や腱、靭帯が緩むことで足の構造が崩れます。それに、ハイヒールなどで積み重ねてきた若いときのダメージが追い打ちをかけます。足のトラブルを抱えたままで、歩けば歩くほど、負の連鎖が生じます。

「足のサイズが大きくなったかも…と感じたら、足のアーチが崩れ、姿勢が悪くなっている証拠です。タコやウオノメ、外反母趾になりやすく、さらにひざ関節、股関節の可動域が狭くなり、ひざの痛み、腰痛が起こります。

ひざ関節、股関節をかばった歩き方をするため、疲労など全身の不調へとつながり、重症化へと向かうのです。このように進行してしまう前に、予防できることがあります」と桑原先生。

足底のエイジングサインをチェック

足底力が低下すると、長時間しっかり歩くことができなくなり、疲れやすくなります。靴のサイズが大きくなるのは、アーチが崩れ、足幅が広がって、外反母趾などのトラブルが起きている証拠です。

「ヒールのある靴を履いているほうがラク」と思う人は、アキレス腱が硬くなり、母趾(親指)の付け根など、前方に負担がかかっている可能性があります。

【足底エイジングチェック】

・以前より靴のサイズが大きくなった
・靴底が左右非対称に減っている
・足の趾が曲がっている
・大股で歩くことができない
・夜、就寝中に足がつる
・足の裏や趾(ゆび)にタコ、ウオノメがある
・家族や血縁に足のトラブルで悩んでいる人がいる
・パンツの裾上げをすると左右の長さが異なる
・裸足で片足立ちをすると体がフラつく
・ときどき足やひざ、股関節が痛くなる

ひとつでもあてはまる項目があれば、早めに対策をすることが大切です。

足底のアーチの補正で予防できます

足のエイジングサインを感じたら、足の専門医、靴の専門家に相談することが予防とケアになります。

「まずは正しい靴選びから行いましょう。

①足の甲が紐かベルトで固定できて覆われているもの
②趾の付け根の関節でしか、曲がらない作りのもの
③かかとはつま先より5~10ミリ高いもの
④かかとのカップが硬くフィットするもの
⑤インソールは、土踏まずが立体的で取り外し可能なもの
⑥靴底は先端部分が少し浮いて適度な硬さと厚みがあるもの
⑦つま先の余裕は約5~10ミリ

などの靴を選びます。

医師処方で取り外しできる治療用インソールを作り(保険適用可)、自分の靴に入れて足の機能をサポートする方法で、進行を食い止めることも可能です」(桑原先生)

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次に、生活習慣改善の第一歩は、正しい姿勢で立つことと、歩くことです。

「立ち方は、背中が曲がっていないか、肩の高さが左右同じか、骨盤が前か後ろに傾いてないか、ひざが伸びているか、左右の足のどちらかに重心をかけて立っていないか、はすぐにチェックできるポイントです。

歩き方は、ただ足を前に出すのではなく、股関節を使いながら、骨盤を前後に動かして歩きます。歩幅は大きく、かかとから着地し、足底のアーチで地面をとらえ、足首を軸に体が前に進み、最後に親指側のつま先でけり出すようにします。

理学療法士などに見てもらうことも大切です。ストレッチをすることや、サポート靴下などもケアになります。これらを行っても不具合が治らないときは、状態にもよりますが手術という選択もあります」(桑原先生)。

予防にはストレッチとサポート靴下も有効です

「足のトラブルに関係しているのは、股関節とアキレス腱です。靴選びのほかに、足底力の予防とケアのために、股関節とアキレス腱のストレッチを行いましょう。

足底のアーチは、一度崩れてしまうと、もとに戻すことはできません。これ以上、進行させないために、低下した足の機能をサポートするインソールや靴下を使うことも大切です」と桑原先生。

【股関節のストレッチ】

アーチが崩れると足首が内側に倒れて立つため、ひざが内側にねじれます。その結果、股関節もねじれて可動域が狭くなります。股関節のストレッチは、両ひざをたて、片方のひざを内側に倒す。脚の付け根の外側がつっぱるのを感じつつ1分間キープします。反対の脚も同様に。

ストレッチ
illustration by Nanayo Suzuki

また、あぐら座で両足の裏を合わせ、両ひざを開き上体を前へ倒す。太もも内側が伸びるのを感じたら1分間キープします。

【アキレス腱のストレッチ】

ふくらはぎと、かかとを繋ぐアキレス腱が硬いと、足首が十分に曲がらず、かかとがスムーズに上がりません。そのままで歩くと、トラブルの要因になります。

ストレッチで伸ばすことが大事です。壁を押すように両手を前に伸ばして立ちます。両足のつま先を壁に対して垂直にし、左脚を後ろに引いて、右脚のひざを曲げて、左脚のアキレス腱が伸びるのを意識して気持ちよくストレッチします。1分間キープしたら、反対脚も行います。 

ストレッチ
illustration by Nanayo Suzuki

欧米に比べ100年遅れていると言われる日本の足の医療。進行して歩けなくなる前に、不具合を感じたら、早めに足の専門家に相談しましょう。

お話を伺ったのは…桑原靖(くわはらやすし)先生

足のクリニック表参道 院長。埼玉医科大学医学部卒業。同形成外科にて外来医長、フットケア担当医を務める。2013年、専門医とメディカルスタッフによるチームで足トラブルに特化した総合的な治療とケアを行う現クリニックを開院。日本フットケア・足病医学会評議員。 

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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