更年期世代の【茶色いおりもの・不正出血は要注意】医師が解説!子宮体がんの初期症状と予防策
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 更年期の生理が不規則な時期は、色のついたおりものや不正出血は特に要注意! わずかでも不正出血があったら“すぐ受診”が重要です。産婦人科専門医、出井知子先生を取材しました。
色のついたおりものや不正出血があったら
更年期以降の女性に、色のついたおりものや不正出血が見られたときに、まず心配するのは子宮体がん。「おりものの色は、茶色、黄色、褐色がかったものもあります」と出井知子先生。特に更年期世代は、生理のリズムが狂いがちで色のついたおりものや不正出血を生理と勘違いして見逃してしまいがちです。
「しかし更年期、特に閉経後は、子宮体がんが起こりやすい年代です。わずかでも、色のついたおりものや不正出血があれば、放置せずにすぐ受診してください」と出井先生。
多くの子宮体がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深くかかわっています。エストロゲンには、子宮内膜の発育を促す作用があります。もうひとつの女性ホルモンのプロゲステロンには、子宮内膜の増殖を止める作用があります。ですから、毎月排卵を伴った正常な生理があれば、子宮体がんの心配はほとんどないのです。
子宮体がんのリスクをチェックしてみましょう!
しかし、卵巣の働きが悪かったり、更年期で生理はあっても、正常な排卵が起きていなければ、プロゲステロンが分泌されません。一方、子宮内膜を増殖させるエストロゲンは、排卵がなくても分泌されるため、子宮内膜が厚くなり、子宮内膜増殖症という前がん状態になるリスクも高まります。この子宮内膜増殖症の約20~25%が体がんへと進行します。また、このようなエストロゲンの刺激と関連なく起こる、体がんも2~3割あります。
【子宮体がんになりやすい人はどんな人?】
このような項目に当てはまると、子宮体がんのリスクがあると言われています。
☑︎ 更年期以降である
☑︎ 出産経験がない
☑︎ 肥満傾向にある
☑︎ 生理不順・排卵障害(無排卵性月経周期)がある
☑︎ 卵胞ホルモン(エストロゲン)剤だけのホルモン療法を受けている
☑︎ 高血圧である
☑︎ 糖尿病がある
☑︎ 近親者に乳がん、大腸がんを患った人がいる
子宮体がんはどこにできる?
子宮体がんは、子宮内膜がんとも言われていて、子宮体部の内側を覆う内膜にできるがんです。もうひとつ、子宮頸部にできるがんを子宮頸がんと言います。子宮がんには、子宮体がんと子宮頸がんがあり、ふたつは、がんが発生する粘膜の種類、原因、がんの構造、病状の進み方も大きく違います。以前は、子宮体がんは、子宮がん全体の5%ほどしかなかったのですが、今では子宮がん全体の45%以上を占めるようになり、じわじわと増え続けています。50代が最も体がんにかかりやすい年代です。
子宮頸がん検診と子宮体がんの検診は違います!
「子宮がん検診を受けているから、安心という方がいます。けれども、一般に自治体や職場検診で行う“子宮がん検診”と言えば、“子宮頸がん”の検診で、子宮体がんは含まれていないことがほとんどです」(出井先生)。
自治体が行う“子宮がん検診”では、子宮頸がんの検査を行い、その問診で「6か月以内に、①不正出血、②月経異常、③茶色(褐色)のおりもの」の症状の有無を聞きます。いずれかの症状がある場合は、子宮体がん検診を受けられます。
「不正出血や色のついたおりものがあったら、すぐに婦人科を受診してください。それが子宮体がんの早期発見の第一歩です。体がんの90%以上の方に、初期から不正出血があります。特に閉経後の方は、注意が必要です」(出井先生)。
また、閉経前でも、色のついたおりものや不正出血の症状があったり、生理の出血量が増えてきたと思ったら、すぐ受診しましょう。
子宮体がん検診とは、どんな検査をする?
子宮体がん検診は、まず細胞診を行います。細胞診とは、ポリエチレンのチューブを入れて吸引する方法や、専用の細い器具で内膜細胞をこすり取る方法があります。多少痛みを伴いますが怖がらなくて大丈夫。緊張して力が入るとよけい痛く感じます。細胞診で異常があった場合、子宮内膜の組織診を行います。
「子宮体がんの予防としては、年1回程度、婦人科で経腟超音波検査を受けておくことが大切です。
経腟超音波で、子宮内膜の厚さを診て6ミリ以上なら、前がん状態の子宮内膜増殖症の可能性があります。経腟超音波は、痛みもなく多くの情報が得られる優れた検査です。前がん状態の子宮内膜増殖症で見つかれば、ホルモン剤(プロゲステロン=黄体ホルモン剤)で治療することも可能です。厚くなった子宮内膜が剥がれ、出血で排出されるので、体がんの予防になります。また、更年期障害の治療で行うエストロゲンとプロゲステロンを併用するHRT(ホルモン補充療法)も、子宮体がんの予防になります」(出井先生)。
エストロゲン+プロゲステロンは予防にも!
更年期障害の治療で行うHRT(ホルモン補充療法)で、ホルモン剤のエストロゲンとプロゲステロンを併用する方法は、子宮体がんになりにくいことがわかっています。また、若いときに低用量ピル(エストロゲン+プロゲステロンを組み合わせた避妊薬、また生理不順やPMSの治療薬としても使われる)を使用していた人も、子宮体がんのリスクが減ります。
「更年期障害のHRTでは、エストロゲンとプロゲステロンをそれぞれ別の薬で使うこともできますが、現在、両方が配合されているパッチ剤と錠剤があり便利です。それぞれ特徴があるので、使いやすいほうを選びます。いずれも健康保険が使えますので安価です」(出井先生)。
肥満や糖分、塩分にも気をつけて
更年期は、生理が大きくばらつく時期です。生理周期、生理期間、生理量などの記録をつけておくことで、生理なのか不正出血なのかの見極めもつけやすくなります。この方法は、体がんの予防や早期発見に役立ちます。また、肥満は、子宮体がんリスクが高まります。エストロゲンは卵巣からだけでなく、体の脂肪組織からも作られます。太った人は、エストロゲンが過剰になりやすく、ホルモンバランスが崩れ、生理不順を起こし、子宮体がんになりやすい体質になってしまうのです。肥満だけでなく、糖尿病、高血圧も、子宮体がんのリスクです。規則正しい生活と、糖分、塩分の摂りすぎに気をつけたバランスの良い食事は、重要です。
お話を伺ったのは…出井知子(いでいともこ) 先生
ともこレディースクリニック下北沢院長。日本産科婦人科学会専門医。医学博士。卵巣がんの遺伝子解析の論文で医学博士号取得。大学病院にて主に婦人科がん治療の臨床と研究に従事。ホルモン療法、子宮頸部異形成などの臨床経験が豊富。
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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