医師が解説!脳梗塞、心筋梗塞のリスクを上げる【血管老化の5大要因】絶対行うべき生活の改善とは?

 医師が解説!脳梗塞、心筋梗塞のリスクを上げる【血管老化の5大要因】絶対行うべき生活の改善とは?
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増田美加
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2023-04-15

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 高血圧と糖尿病は、新型コロナの重症化リスクが高い病気ということが知られるようになりました。血管に注目することは、病気予防やアンチエイジングのためにも大切です。 血管に負担をかける高血圧と糖尿病、このふたつの病気は自分で予防とコントロールができます。アンチエイジングを専門とする内科医、渡邉美和子先生に聞きました。

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血管の老化を招く5大リスクは何?

更年期になると、気づかないうちに上がってくるのが、血圧と血糖値。きちんとチェックしていますか? これに喫煙を加えた、血圧、血糖値、喫煙の3つが最も血管の老化につながり、脳梗塞、心筋梗塞のリスクを上げる要因になります。「命にかかわる血管の病気(脳梗塞、心筋梗塞など)の危険が伴うマイナスの因子が喫煙、高血圧、糖尿病。その次が、脂質代謝(コレステロール、中性脂肪)異常と内臓脂肪過多で、これらが5大リスクです。

健康診断の結果でBやCの評価は、基準がとても曖昧で、医療機関や医師によっても異なるのです。A評価でなくなった段階で悪くなる前に対策をとるべきです」と渡邉美和子先生。

高血圧、糖尿病、コレステロール、内臓脂肪のリスクあり!の基準は?

高血圧の基準は、2019年に新しく変わり、より厳しい数値になったのを知っていますか? これまで血圧が正常と思っていても、更年期以降は、油断せず定期的に血圧を測定することが大切です。血圧の数値の目安については、このあと詳しく解説します。また、糖尿病は、血糖値だけでなくHbA1c(直近1~2ヶ月の血糖値平均)でも見ることが大事です。

コレステロールは、「LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値」のLH比率でみます。LH比が2未満であることが大切。たとえば、LDL値が135mg/dl、HDL値が45mg/dlでは、「135÷45=3」でLH比は3です。LDLもHDLも単独で見れば、異常値ではありませんが、LH比でみると動脈硬化が進む可能性がある“リスクあり”の領域です。

コレステロール値が単独で高い場合でも、LD比が2未満で、かつ高血圧症、糖尿病、喫煙などのリスクがなければ良しと考える場合もあります。参考までにLDL値は140mg/dl以上が病的とされていますが、健診では理想値として120mg/dl未満を基準としている施設も多いです。内臓脂肪は、正確には腹部CTで内臓脂肪面積を測定しますが、簡易的に腹囲90センチ以上をメタボ基準、BMIが25以上で危険信号とすることが多いです。

「喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロール、中性脂肪)、内臓脂肪型肥満は、命にかかわるリスクで、これら5つは生活習慣で予防、改善できるのです。

血管は4~5年で硬くなって老化してしまいます。女性ホルモンのエストロゲンはメタボリスクから体を守る作用があり、それがほぼゼロになる閉経後は、少しの変化があったら、早めにケアして、生活を改善していくことがとても大切です」と渡邉先生。

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高血圧、糖尿病は、放置すると体に刷り込まれる!  

更年期世代が血管の老化を予防するためには、最もリスクが高い、高血圧と糖尿病の対策が大事ですが、どうケアしたらいいのでしょうか?

「血圧は、正常高値血圧、高値血圧のときこそ、薬なしで生活改善だけで予防でき、正常値に戻せるタイミングです。血圧が常時125/75mmHg以上になってきたら、すぐに生活習慣(禁煙、アルコールを含めた食事、運動、睡眠)を見直します。最初は自分にとって楽な緩い方法から、効果がなければ段々厳しめに生活習慣を見直して3か月経っても効果がなければ、血圧測定記録を持参して専門医のもとで降圧薬も検討します。血圧が高い状態を放置しておくと、体に刷り込まれてしまい、戻りにくくなるからです。生活習慣による改善がダメなら、薬を使ってでも、早めに正常値を刷り込ませれば、様子を見つつ、薬を止められる場合もあります。治療が遅れれば遅れるほど、薬をやめられる可能性は低くなり、薬の数も多くなりがちです。だからこそ、血圧の治療は少しでも早く始め、卒業を目指すこと。たとえ卒業できなかったとしても心筋梗塞や脳梗塞になるリスクを考えたら、内服薬のリスクはよほど小さいです」と渡邉先生。

この体への刷り込みは、生活習慣がつくる臓器への記憶で、時には生まれ持った遺伝や体質よりも、大きく病気の発症に影響します。怖いですね。体への刷り込み!

まず行うべき生活の改善とは?

「糖尿病は、異常値に近づいたら、食事と運動(有酸素運動と筋トレ・特に食後1時間以内が有効)で生活習慣をすぐに改善すべきです。血液は1か月で変わります。生活習慣の改善をしながら、月1回の採血を3か月続けると自分の傾向がわかります。生活改善を精一杯やっても、ダメなときに、初めて服薬を開始します。糖尿病も早期であれば、薬を飲み始めたとしても、生活の改善で数値の正常化を維持できれば薬を止められる事も少なくありません。きちんと経過を診てくれる医師にかかることは、大切です」(渡邉先生)

高血圧や糖尿病は、どこで診てもらえばいいでしょうか?

「厳密には血圧は、循環器内科、腎臓内科が専門で、糖尿病は、内分泌代謝内科が専門ですが内科の開業医であれば、同時に診てくれることが多いです。血圧も血糖値も数値を見ればコントロールが良好かどうか、ご自身でも判断がつく訳ですから、正常値を維持できているのであれば、利便性を重視した開業医で良く、治療がうまくいかない段階で専門医を受診するということでも良いと思います。糖尿病専門と書かれた診療科もあります。高血圧も糖尿病も、早期発見・早期治療はもちろん大事ですが、予防はもっと大事です。血管は、柔らかいうちに治療すれば、リスクは大きく減らせます。血管が硬くなってしまってからでは、治療は非常に困難です。禁煙は、当然ですが、それだけでなく、食事、アルコール、運動、睡眠を見直してみましょう。飲酒リスクも、想像以上に大きいので注意してください」(渡邉先生)

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基準が変わった!正常血圧、高血圧とは?

更年期以降、特に閉経すると、若いときに低血圧だった人も、「正常高値血圧」や「高値血圧」に移行してしまうことが少なくありません。血圧は、病院と家庭ではどうしても、値が変わって出ますので、家でも1日の中で時間を変えて測ってみましょう。

家では、通常は起床時、排尿前が最も高い値になりやすい時間ですが、ストレスになるイベントによって昼の方が高いという人もいます。自分の傾向を見て、高い値が出る時間に、できれば毎日測ります。「正常高値血圧」「高値血圧」の人は、将来、高血圧、動脈硬化リスクが高いと言われています。この段階でぜひ生活改善をして血圧を下げておいてください。

【診察室(病院での)血圧(mmHg)】          

正常血圧   収縮期血圧 120未満  拡張期血圧 80未満
正常高値血圧 収縮期血圧 120~129  拡張期血圧 80未満   
高値血圧   収縮期血圧 130~139  拡張期血圧 80~89    
高血圧    収縮期血圧 140以上  拡張期血圧 90以上   

【家庭(家での)血圧(mmHg)】  

正常血圧   収縮期血圧 115未満  拡張期血圧 75未満
正常高値血圧 収縮期血圧 115~124  拡張期血圧 75未満
高値血圧   収縮期血圧 125~134  拡張期血圧 75~84
高血圧    収縮期血圧 135以上  拡張期血圧 85以上

*「高血圧治療ガイドライン2019年」より

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血管老化の予防で、絶対すべきこと

更年期になってからも、以前の生活習慣のままで過ごしていると、多くの人が高血圧、糖尿病の危険性が高まり、血管老化が進みます。

「血管老化を予防する方法は、食事、アルコール、運動、睡眠に尽きます。すぐに始めて欲しい、血管老化を防ぐ、プラス要因になる内容を紹介します。コロナ禍を経て、生活習慣が乱れやすくなっている今、見直せることから始めましょう」(渡邉先生)。

食事    

夜遅く食べない、塩分を控える、オメガ3脂肪酸(魚介類)を摂る

アルコール 

飲み過ぎない、夕食と共に20時までに終わらせ、食後は飲まない

運動    

理想は有酸素運動と筋トレを週3回以上を習慣化ですが、まずはできるところから始めることが大切。座りっぱなしが何より悪い

睡眠    

アルコールは、良質の睡眠の害に。少なくとも5時間以上、かつ12時~5時は寝る(同じ5時間でも3時~8時はNG)

急に今までの飲食・運動習慣を変えるのは難しくとも、健診のA判定がBやC判定になった時点であれば、少しずつの変化だけでも間に合います。D判定になってからの取り組みでは、いきなり我慢を強いられたり、薬が増えたりします。意識を高め、早く対策する意味があるのは、こういった点にあるのです。

お話を伺ったのは…渡邉美和子(わたなべみわこ)先生
東京ミッドタウンクリニック副院長。北里大学医学部卒業。慶應義塾大学内科学教室ほかを経て医療法人社団桃蹊会理事長、マリーシアガーデンクリニック院長。2010年より現クリニック。内科の外来診療ではわかりやすい生活習慣指導に取り組む。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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