単なる老化では済まされない!?更年期から注意したい「皮膚の病」とは【皮膚科専門医からの警鐘】
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。
皮膚は体の状態の映し鏡。だからこそ…
皮膚は、体内を守る大きなバリアでもあります。更年期になると、皮膚老化を感じることが増えて来て、鏡を見てがっかりすることもありますね。皮膚は、体の状態を表す映し鏡のような臓器とも言われています。
皮膚老化の症状のなかで、放っておくと老年期の大きな病気に繋がるものもあります。更年期世代から気をつけたい、皮膚老化のケアをお伝えします。お話を伺ったのは、慶田朋子(けいだともこ)先生(銀座ケイスキンクリニック院長)です。
更年期を過ぎて起こる皮膚老化とは?
更年期を過ぎると、皮膚の老化はどのように進んでいくのか気になります。「皮膚は老化していくと、まず表皮の角質層のバリア機能が低下して、乾燥が進んでいきます。年齢を重ねると、新陳代謝が落ちていきますね。それに従って、ターンオーバーのペースが遅くなります。
そのことで、皮膚のバリア成分である、細胞間脂質が減少していくのです。同時に角層の脱落スピードが遅くなり、角層は厚くなります。それと同じころから、皮脂腺から出る皮脂量も減少するので、皮脂膜は薄くなり、角層がゴワゴワと硬くなっていきます」(慶田朋子先生)。
皮膚が健康な状態であれば、外的な刺激から肌を守り、皮脂や汗などのバランスを保つことができます。けれども、加齢によって、細胞間脂質や皮脂が不足してしまうと、外的刺激に弱くなりますね。ということは、角層のバリアが弱くなると、皮膚の乾燥が進んで、皮膚トラブルが増えるとも言えるのですね?
体は乾燥による病気。顔はイボが注意すべき症状です
「はい。それだけではありません。角層のバリアが弱くなると、肌の乾燥を引き起こすだけでなく、ちょっとした刺激で湿疹などができやすくなってしまいます。このような皮膚老化によって、まず体に起こりやすいのは“乾皮症”と“皮脂欠乏性湿疹”です。
それから、顔に起こりやすいのは、紫外線や老化に伴って生じるシミがありますが、それよりもっと注意したいのは“脂漏性角化症(老人性疣贅)”と呼ばれる“イボ”です。脂漏性角化症自体は、良性の病気ですが、茶、黒色で表面がガサガサした隆起性のイボのために、目立ちます。
体中に急に数が増えてかゆみがある場合は、レーザートレラー症候群といい、内臓のがんと関連した症状のことがあります。通常は、経験のある皮膚科専門医の診察で見極めができます」と慶田先生。
また、脂漏性角化症に似ている病気として、日光角化症(有棘細胞がん)やメラノーマ(悪性黒色腫)などの皮膚がんの初期病変があります。これらは、見た目では区別がつきにくいことがありますので、イボの自己判断は、禁物です。
皮膚老化で体と顔に起こる注意すべき病気はこれ!
皮膚が老化すると起こる3大症状は、
①乾燥、カサカサ
②バリア機能の低下
③ターンオーバーの低下
です。これら3つは関連していて、ターンオーバーの低下によって、バリア機能の低下と乾燥につながります。皮膚老化によって体と顔に起こりやすい病気をまとめると、
【体に起こる病気】
①乾皮症
皮脂や汗の分泌が減って、皮膚が乾燥します。そのことで、ガサガサして亀裂やひび割れ、かゆみなどの症状も起こります。
②皮脂欠乏性湿疹
乾皮症に、なんらかの刺激物の接触があると、刺激性接触皮膚炎などが加わって、湿疹を起こした状態になります。
【顔に起こる病気】
イボ
①脂漏性角化症
紫外線や加齢にともなって生じる皮膚の良性腫瘍。いわゆる老化による「イボ」のひとつです。
②日光角化症
紫外線を浴び続けたことで発症する皮膚がんのごく早期の病変(前がん病変)です。60歳以上に多くなります。
シミ
①肝斑
皮膚とシミとの境界があいまいで、頬骨、目尻、口の周辺など、広範囲に左右対称に現れるのが特徴のシミです。
②日光性(老人性)色素斑
5~20mmの大きさで円形にできることが多く、シミの境界がはっきりしているのが特徴です。
体に起こりやすい皮膚の病気を防ぐには?
体に起こりやすい乾皮症、皮脂欠乏性湿疹は、更年期以降から老年期に、すねや太もも、腰背部、前腕などによく見られます。
「原因としては、おもにアトピー素因などの先天性のものと、皮膚老化です。あとは、過度な空気の乾燥、洗浄剤などに含まれる界面活性剤などによる脱脂、物理的な接触刺激があります。
なかでも、原因として特に多いのが、洗いすぎによる強い刺激です。1日2回以上お風呂やシャワーを浴びる、洗浄力の強い石鹸の使用や垢すりもよくありません。皮脂膜は、強くこすり過ぎることや過剰に洗うことで剥がれてしまうのです。天然保湿因子(NMF)やセラミドまで洗い流してしまうことさえあります」(慶田先生)。
皮膚が乾燥してきている年齢なのに、強い石鹸を使ったり、ゴシゴシと洗ったりすることがよくないのですね。洗いすぎない、こすらないことが大事ですね。ほかに対策として気をつけることは、ありますか?
「とにかく保湿することです。また、熱いお湯で長風呂をしないことも大事。入浴時は、ミルク系の入浴剤を使うのもいいと思います。また、入浴後はすぐにボディークリームを塗ることも大切です。朝晩2回塗ると、保湿効果が上がります」(慶田先生)。
イボはがんとの見極めが大事
顔にできるイボで、日光角化症(前がん病変)の見極めは、どうしたらいいでしょうか? 「急に大きくなる、左右非対称、いびつな形、色ムラがある、イボ周囲に炎症があるなどが特徴です。特に、黒くて7ミリ以上のイボなら、悪性黒色腫や基底細胞上皮種の可能性があります。気づいたらすぐ、皮膚科専門のクリニックを受診してください。より正確な診断には、ダーモスコピー(特殊な拡大鏡)が有効です。皮膚の性状を観察するだけなので、痛みはありません」(慶田先生)。
顔のイボの治療法でおすすめは?
顔にできる脂漏性角化症や日光角化症の治療には、どんなものがあるのでしょうか? 「脂漏性角化症も、日光角化症も、治療は、炭酸ガスレーザーで削り取ればきれいになります。液体窒素で焼くのは、黒ずみが残りやすいのでオススメしません。更年期後半の50代から始まって60代以降に、どちらのイボも起こりやすいので気をつけましょう。
予防には、日焼け対策が重要です。加齢により、抗酸化力が低下するので50代以降もしっかり対策して頂きたいですね。日焼け止めは、飲むものも、塗るものも効果があります」(慶田先生)。
顔のシミへの有効な対処法は?
シミは、がんなどの大きな病気に繋がることはないですが、顔は毎日、目にするところなので、老化や衰えを自覚しやすいところです。顔のトラブルは、メンタルや生活の質にも影響します。顔の皮膚のメンテナンス法として、おすすめの治療があれば教えてください。
「お顔のメンテナンスは、更年期を過ぎて60代、70代になっても精神面を支える意味で決して軽視できないところです。シミが隆起してイボのようになっていく場合もあります。50代以降目立ってくる方が多いので、早いうちに治療やケアをしておくほうが、治療も楽に済むことが多いのです。
それぞれのシミに合わせたピコセカンドレーザーやIPL(フォトフェイシャル)などの照射治療を症状が軽いうちから行っていくことは、効果的だと思います」(慶田先生)。
皮膚老化を最小限に抑えるために、食事などで気をつけられることはありますか? 「体も顔も皮膚を元気に保つには、食事は大切です。偏らずバランスよく、たんぱく質と良質の脂質を摂ることをおすすめしたいです。皮膚を健康に保つためにも、油抜きは厳禁です。
皮膚は、自分で毎日、見えるところなので、不調を発見しやすい場所でもあります。エイジングコンプレックスにも大きくかかわりますから、更年期以降の女性の人生にとって重要だと思っています。皮膚老化が始まる更年期のタイミングからケアしておけば、治療が簡単で将来の土台づくり(予防)にもなります」(慶田先生)。
監修/慶田朋子(けいだともこ)先生
銀座ケイスキンクリニック院長、医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医、日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会会員。東京女子医科大学医学部卒。同大皮膚科助手を経て、「銀座ケイスキンクリニック」を開設。最新の医療機器と注射によるメスを使わないナチュラルな若返り治療、食と美容、健康などの幅広い知識から、テレビや雑誌、WEBなどで活躍。著書に『365日のスキンケア』(池田書店)や『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)がある。
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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