【更年期のメンタルヘルス】加齢とともに増える心身の負担…更年期のイライラ・うつの乗り越え方
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。
イライラも落ち込みも両方とも更年期の心の症状です
イライラして、怒りっぽくなるのは、更年期に多い心の症状です。また逆に、理由なく気持ちがふさいで、落ち込み、気力がなくなるという症状も、更年期に多く起こります。なかには、家事や仕事がいつもどおりできない、夕食のメニューも考えられない、人に電話をかけるのもイヤという人もいます。
更年期の症状は、心のトラブルとして現れることが少なくありません。その代表例がイライラと、気分の落ち込みや不安感。一見、真逆に思えますが、原因は同じです。更年期特有の心の症状の乗り越え方をお伝えします。
年齢的に負担が増え、そこに女性ホルモン低下が追い打ちをかける
訳もなくイライラして周りの人にあたってしまったり、なんということはないのに怒りが収まらなかったり…。あとで、そんな自分に悔やみ、またイライラしてしまうという負のスパイラルに陥ります。済んでしまったことをクヨクヨと思い返し、イライラ、ムカムカが募ることありませんか。
その逆に、気分の落ち込みや不安感が起こることもあります。更年期世代は、子どもや夫との関係、自分の仕事の悩みやストレスなども増えていきます。さらに、両親の世話や介護も、となると、もともと女性の負担が重かったものが許容範囲を超えてしまいます。
また、女性ホルモンのエストロゲンの減少で、イライラしたり、怒りっぽくなったり、忘れっぽくなり、判断力が滞ったり、体力や気力も低下してくるころです。なおさら、こういった変化に戸惑うことも少なくありません。
今まで自信を持ってさまざまな役割をこなしてきた人ほど、将来に漠然と不安を抱いたり、役割を失った喪失感や寂寥感から、気分が落ち込んでしまうのも無理ありません。心身ともに不安定になり、何もする気にならない虚脱状態に陥る人もいます。
悩みを抱えこんで我慢してしまわないことが大事です。仕事上の人間関係、子育て、夫とのコミュニケーションや会話の工夫や見直しも必要な年代です。
ワクワク、ウキウキは女性ホルモンのおかげだった
やはり心の不調も、女性ホルモンが低下してきている証拠です。更年期になると、メンタルの不調が強く現れる人もいます。女性ホルモンが十分ある若いころは、箸がころがっただけで楽しくて、フフフッと笑ってしまった経験はなかったでしょうか。女性ホルモンがたくさんあると、明るく楽しい気持ちになるのです。
女性ホルモンの研究が進むまでは、年を重ねて分別ができ、簡単なこと、つまらないことでは笑えないと思われていました。しかし、そうではなかったのです。気持ちがワクワクして素敵!と思えるのは、女性ホルモンのおかげもあったのです。
女性ホルモンは心をコントロールする作用も
ここでもう一度、女性ホルモンの心への影響について、おさらいしておきましょう。女性ホルモンのエストロゲンには、人間の行動や情動、情緒などをコントロールする作用もあります。ですから、更年期に向かって、エストロゲンが低下すると、これらのコントロールがうまくいかなくなり、精神的な症状が出てしまいます。
近年、メンタル系の脳の働きと、ホルモンとの関係が解明されてきています。女性ホルモンは、心の安定をはかるセロトニンの分泌にかかわっていることもわかっています。また、女性は、男性よりセロトニンの合成速度が遅いこともわかっています。女性は立ち直りに時間がかかり、女性ホルモンが低下すると、余計にセロトニンの分泌が落ちます。このように、更年期世代の女性は、メンタルの対策が不可欠であることがわかります。
更年期うつから、うつ病に移行する前に
ひどい落ち込み、気分低下が長く続く人は、一度、精神科や心療内科を受診しましょう。更年期障害と心の病気は、合併していることが多いと言われています。更年期の症状による、うつっぽさから、本格的なうつ病へと以降する場合もあります。そうなる前に、受診することも大事。
更年期の心の不調を診てくれる精神科、心療内科で相談するといいでしょう。通いやすいクリニックが見つからない場合は、婦人科を受診しましょう。また、全国に展開されている女性専門外来も丁寧に話を聞いてくれるでしょう。医師と相談して、よりふさわしいクリニックや専門医を紹介してもらうこともできます。
低用量ピルやホルモン補充療法は心の変動を整える
婦人科で相談して、低用量ピル(OC)やホルモン補充療法(HRT)を試してみるという手もあります。低下した女性ホルモン(エストロゲン)を補充すると、精神的に安定し、気持ちが明るく、穏やかな気持ちになれます。
ホルモンのアップダウンがあると、精神的に不安定になり、不安感も増すと言われています。ホルモンの変動を少なくして一定にすることは、精神的な安定に大切です。生理がある時期なら、医師と相談の上、低用量ピル(OC)の選択も可能です。閉経後には、エストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT)が選択肢になります。気分の落ち込み、イライラ、焦燥感などを緩和でき、メンタルを安定させる作用があると言われています。
自分のストレス発散法を確保して
更年期のメンタルケアに対して、運動の効果は抜群です。好きな運動を見つけて、始めるにはいいチャンスです。更年期世代に運動を習慣にしておくことは、一生の財産になります。ヨガやピラティス、ウオーキングなどのエクササイズはおすすめです。
植物や水、川、海を見て歩くだけでも、精神的に上向きになれます。また水には、マイナスイオン、フィトンチット効果もありますね。昔から海洋療法があるくらい、海も心と体を穏やかにしてくれます。植物や動物などの世話で、日常的なメンタルケアをしたり、趣味の時間を多くとったり、買い物、エステ、ネイルサロンなど、小さな楽しみを見つけることも大切です。
好きな香りを楽しむのもいいでしょう。香りと脳やメンタルとの関係も明らかになってきています。また、セントジョーンズワート、イランイラン、カモマイル、ラベンダー、ローズ、ジンジャーなどのアロマオイルは、気持ちを穏やかに明るくする作用があると言われています。
不調を周りの人につらさを理解してもらって
自分だけでうまく改善できないときは、友人や信頼のおける人に相談してみるのも方法です。同じつらさや悩みを乗り越えた経験者の言葉が救いになることもあります。また、夫や家族、近しい仕事仲間には、「更年期でこんな不調がある」「意味もなくイライラして」とか「理由もないのに落ち込んでやる気が出ない」と、体調の変化を伝えて理解してもらうことも大切です。特にいつも一緒にいる夫や家族には、「つらいので、家事を手伝って」と言葉に出して協力を求めましょう。
逆に、家族に、更年期世代の人がいて、つらそうなら、「手伝えることがあったら手伝うよ」「つらいときは休んでいいよ。代わりにやるから」と声をかけて、家事や役割を分担してあげてください。
完璧主義の人ほど気分が落ち込み、不安感に落ち入りやすいと言われています。完璧主義の人は、目標を高くもちやすく、達成も難しく、自分を責めることにつながりがち。完璧にはできないこともあるので、ありのままの今の自分を認めて、受け入れると気持ちが楽になることもあります。
若いころのように、仕事も家事も時間をかけてできなかったとしても、当たり前。その分、経験値が高いので、効率よく道具を使ってこなせたり、丁寧さが少しダウンしても自分優先でわがままにやれる仕事や家事のこなし方で良しとしましょう。また、禁煙、睡眠を十分にとる、疲労、ストレスをためないことも大事。楽しい、のびのびしたことを考えると、脳が活性化するのにいい影響を与えます。自分らしい精神コントロール法を、更年期に身につけておくと人生100年時代を生きる将来に渡って役立ちます。
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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