【更年期障害の治療薬について学ぼう】ホルモン補充療法(HRT)の種類と選び方

 【更年期障害の治療薬について学ぼう】ホルモン補充療法(HRT)の種類と選び方
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増田美加
増田美加
2022-04-30

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。

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更年期の不調は婦人科で治療できます!

更年期に、生理(月経)が終わる閉経前後になると、毎月の女性ホルモンの波はなくなり、女性ホルモンの分泌量が一気に下がります。そのため、心と体にさまざまな不調が起こるわけです。

そこで、減ってしまった女性ホルモンを補うことで、更年期のさまざまな不調を治療することができます。

女性ホルモン剤(おもにエストロゲン剤)を使って、体内の女性ホルモンの量を少し持ち上げ、不調を改善する更年期障害の治療法がホルモン補充療法療法(HRT)です。

更年期のさまざまな不調は、婦人科で治療可能ですので、我慢したり、仕方ないと思ったり、諦めたりせず、婦人科を受診しましょう。

婦人科での治療は、エストロゲン剤などの女性ホルモン剤によるホルモン補充療法(HRT)と漢方薬が更年期障害の2大治療です。更年期のつらい症状をやわらげることができます。ひとつの方法だけでなく、ホルモン補充療法と漢方薬を組み合わせて使う方法もあります。今回は、ホルモン補充療法(HRT)のエストロゲン剤について紹介します。

HRT
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更年期障害の治療に使うホルモン補充療法(HRT)のエストロゲン剤とは?

ホルモン補充療法(HRT)に使うエストロゲン剤には、さまざまな種類があります。まず、エストロゲンの種類別に紹介します。「エストリオール」「結合型エストロゲン」「エストラジオール」です。

1 エストロゲン製剤「エストリオール」

ホルモン補充療法で使うエストロゲン製剤は、「エストリオール」です。更年期でエストロゲンがなくなったことで起こる症状を「エストリオール」は緩和してくれます。

体調に波があって、更年期の症状が続くようなら、婦人科医に相談して、比較的弱い作用の「エストリオール」から始めてみるという選択肢があります。

まだ若くて、卵巣の機能がしっかりしていて、エストロゲンの分泌が十分な人には、効果を感じない程度の弱い作用です。でも、卵巣機能が落ちてきている人にとっては、症状を和らげる効果があると言われています。

「エストリオール」の商品名は「エストリール錠」、ジェネリックに「ホーリン錠」があります。

●内服薬

商品名「エストリール錠」(1㎎)の内服薬は、1錠約13円と安価です。更年期障害、萎縮性腟炎、骨粗鬆症などの病名で保険が使える薬です。通常の使用量は1日1~2錠です。

「エストリール錠」で症状が緩和されるなら、体内のエストロゲンの分泌が減ってきている証拠です。

いつでもやめられますので、婦人科医に相談して、1~2錠を2週間くらいから試してみてもいいかもしれません。この薬の歴史は長く、日本でも昔から更年期障害の治療薬として使われています。

●腟錠

  また、「エストリオール」には、腟周辺の症状だけに効く腟錠、商品名「エストリール腟錠」があります。これは全身へのエストロゲン補充ではなく、局所にエストロゲンを使う方法です。

ですから、全身へのさまざまな不調ではなく、腟の乾燥、痛み、膀胱炎、頻尿、尿もれなど局所の治療として使われます。腟や尿もれなどに症状が集中している人向きで、健康保険が使える安価なホルモン剤です。「エストリール腟錠」は、腟内に入れる薬で、腟内に作用します。

2 エストロゲン製剤「結合型エストロゲン」

さきほどの「エストリール錠」より、さらに効果を出したいというときに、「結合型エストロゲン」商品名「プレマリン錠」(0.625㎎)という薬を処方されることがあります。「プレマリン錠」も世界中でたくさん売られている薬です。

「プレマリン錠」は5錠で、低用量ピル1錠分のエストロゲン量です。内服薬は、1錠で約19円とこちらも安価で、健康保険が使えます。通常量は1日1錠です。

3 エストロゲン製剤「エストラジオール」

エストロゲン製剤の中で、作用が強いのが「エストラジオール」です。「エストラジオール」には、貼り薬(パッチ剤)、塗り薬(ジェル剤)、内服薬があります。

●貼り薬(パッチ剤)

まず、貼り薬(パッチ剤)は、商品名「エストラーナテープ」(0.72㎎)。これらは、お尻か下腹部に貼って、通常量1日1枚を2日ごとに貼り替える薬です。健康保険適用、1枚当たり約90円。

また、「エストラジオール」には、商品名「メノエイドコンビパッチ」というエストロゲンとプロゲステロンを一緒に配合された貼り薬(パッチ剤)もあります。プロゲステロンを配合することによって、エストロゲンが子宮内膜を厚くするのを軽減します。下腹部に貼って、3~4日で1枚(週2回)貼りかえるタイプです。

●塗り薬(ジェル剤) 

エストロゲン剤の「エストラジオール」には、商品名「ル・エストロジェル」(1プッシュ0.54㎎)や「ディビゲル」(1包1.0㎎)という皮膚に塗るジェル剤もあります。いずれも保険適用薬。

「ル・エストロジェル」は、通常量1日1回2プッシュを、両腕の手首から肩までの広い範囲に塗ります。症状に応じて減量して、低用量では1日1回1プッシュという使い方もできます。1g当たり約23円。「ディビゲル」は、通常量1包を1日1回、左右どちらかの大腿部か下腹部に塗るタイプです。1包約54円。

●内服薬

「エストラジオール」の内服薬には、商品名「ジュリナ錠」(0.5㎎)で通常量1日2錠、低用量1日1錠の内服薬があります。

また、「エストラジオール」と黄体ホルモンが一緒に配合された商品名「ウェールナラ配合錠」(エストロゲン1.0㎎、黄体ホルモン0.04㎎)、通常量1日1錠の内服薬もあります。骨の量の減少を抑制します。通常、閉経後の骨粗鬆症の治療のお薬として使われますが、更年期障害の治療にも使われています。

使い方別にホルモン補充療法の薬を分けてみると…

ホルモン補充療法(HRT)の薬を使い方によって分けてみます。飲み薬、貼り薬、塗り薬、腟錠に分けられます。

● 内服薬 ⇒ 消化管から吸収されます

  「エストリール錠」「プレマリン」「ジュリナ錠」「ウェールナラ配合錠」

● 貼り薬(パッチ剤) ⇒ 皮膚から吸収されます 

  「エストラーナテープ」「メノエイドコンビパッチ」

● 塗り薬(ジェル剤) ⇒ 皮膚から吸収されます  

  「ル・エストロジェル」「ディビゲル」

● 腟錠  ⇒ 局所(腟の粘膜)から吸収されます

  「エストリール腟錠」

メリット、デメリットを知って、使い勝手の良いものを選択する!

内服薬は、口から服用するので、小腸などの消化管で吸収されて、全身を循環する前に肝臓を通過します。このとき、肝臓にある代謝酵素によって、摂取した薬が代謝されてしまいます。この点が内服薬のデメリットです。

一方、貼り薬、塗り薬は、内服薬と違い、肝臓を通過しない点がメリットです。ほかに、貼り薬、塗り薬のメリットは、中性脂肪や動脈硬化の原因物質が増加しないこと、静脈血栓塞栓症のリスクを高めないこと、乳がんのリスクが飲み薬に比べて低いことなどが報告されています。しかし、貼り薬、塗り薬の皮膚から吸収されるタイプは、皮膚のかぶれに注意が必要で、その点がデメリットです。

ここに紹介したのは、更年期に欠乏した女性ホルモンのエストロゲンを補充することで、更年期症状を改善するエストロゲン製剤ですが、子宮がある人はエストロゲン製剤だけでは、子宮内膜が厚くなり子宮体がんなどのリスクが上がりやすいと言われています。そのため、子宮のある人は、子宮内膜を厚くしないために、黄体ホルモン剤もエストロゲン剤とあわせて使う必要があります。

しかしながら、「ウェールナラ配合剤」「メノエイドコンビパッチ」は、エストロゲン剤だけでなく、黄体ホルモンも一緒に配合されているので、別に黄体ホルモン剤を使う必要がありません。ここで紹介したエストロゲン製剤などの女性ホルモン剤のどれを選んで使うかは、それぞれメリット・デメリットがありますので、医師とよく相談して自分の使い勝手がよいものを選びましょう。

世界に比べて日本は女性ホルモン後進国です!

低用量ピルや女性ホルモン剤には長い歴史があり、世界中の何十億人という人が使ってきている薬が数多くあります。更年期障害のような不調を感じている人は、婦人科を受診して試してみる価値はあります。世界ではエストロゲンの作用がさらに明らかになってきていて、たくさんの新しいピルやホルモン剤が研究、開発されています。

骨粗鬆症の治療薬は、子宮体がんや乳がんのリスクを減らすと言われていたり、膠原病、甲状腺、心臓などの発病に女性ホルモンが関係するとした研究も行われています。目的別、リスク別に開発され、ホルモン剤はさまざまな研究を背景に進化しています。

日本は、昔からホルモン剤を使っていない国で、今もホルモン後進国です。海外にはあるけれども、日本にはないホルモン剤がたくさんあります。低用量ピルの服用率は、日本は低い国で、服用率はわずか2.9%。欧米諸国に比べ、非常に低い状況です。

東アジアにおけるピル服用率は、中国2.4%、香港6.2%、韓国3.3%ですが、東南アジアの国で見ると、ミャンマー8.4%、ベトナム10.5%、タイ19.6%、マレーシア8.8%、カンボジア13.7%、と日本よりもピル服用率の高い国がたくさんあります。

さらに、欧米のピル服用率は、ノルウェー25.6%、英国26.1%、フランス33.1%、カナダ28.5%、米国13.7%という数字です*1。同様に、ホルモン補充療法(HRT)の日本での普及率は低く、1.5%と言われています*2。

40代前半までは低用量ピル、更年期になったらホルモン補充療法(HRT)というように、女性ホルモン剤を上手に使っていいと思います。

ヨーロッパでは体調をよくするために、更年期対策にホルモン剤を使うという考え方は一般的です。更年期の不調をコントロールしようとする考えは、すでに世界の女性たちの常識なのです。

*1 国連『避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)』データより

*2「更年期と加齢のヘルスケア 2009年Vol8」より

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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