エストロゲンが減ると血糖値が上がる?予備軍含め2000万人、専門医に聞く「閉経後の糖尿病対策」
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 国内の糖尿病と糖尿病予備群の人を合わせると約2,000万人いると言われています* エストロゲンが減少する更年期以降は、誰もが糖尿病リスクが増大します!自覚症状がなく気づかないうちに高血糖になっている可能性が。更年期こそ生活習慣を変えて、血糖値の上がりにくい生活と体質を身につけましょう! *厚生労働省「国民健康・栄養調査」結果 平成28年
血糖値が高い状態は、更年期の不調とよく似ている
血糖値のコントロールは、更年期以降の女性にとって、なぜ重要なのでしょうか?
「更年期になると女性ホルモンのエストロゲンが減少します。エストロゲンには、血糖を下げるインスリンの働きを助ける作用があります。しかし、更年期からはエストロゲンが減少することで、インスリンの働きが低下するため、血糖が下がりにくくなり糖尿病になりやすいのです」と山内晃先生。
もうひとつ知っておくべき重要なことがあります。
「実は血糖値が高い状態は、更年期に起こる不調によく似ているのです。頭痛、めまい、ほてり、冷や汗、動悸、イライラなどは、糖尿病の初期や高血圧の症状に似ています。更年期症状だと思っていると、糖尿病の初期症状(反応性低血糖)ということもあるので、注意が必要です」
血糖値が高い人はコレステロール、中性脂肪、血圧も上がりやすい!
血糖値が上がりやすい人のタイプはありますか?
「次にあげるチェックリストの項目にあてはまる人や、家系に糖尿病の方がいる人は、特に閉経以降に注意が必要です」と山内先生。
このような人は、閉経後、LDL(悪玉)コレステロール、中性脂肪、血圧なども上がりやすい生活習慣です。これら3つとも動脈硬化を進行させ、将来、脳卒中や心臓病(心筋梗塞や狭心症)など命にかかわる病気を引き起こす原因となります。
「糖尿病は、血糖値が高い状態のことですが、空腹時に血糖値126以上、もしくはHbA1c値が6.5%以上です。-糖尿病になる前の“境界型糖尿病”の段階だと無症状です。しかし、進行すると喉が渇く、トイレが近くなるなどの症状が出てきます。糖尿病が怖いのは、高血糖の状態を長期間放置すると、糖尿病特有の合併症(神経症、網膜症、腎症)を引き起こします」
更年期以降は、若いときと同じ生活はNG!
糖尿病のリスクになる生活習慣をチェックしてみましょう。
・太り気味である
・野菜や海草、キノコ類があまり好きではない
・食べ過ぎていると思うことが多い
・朝食は食べないことが多い
・お酒をよく飲む
・ドリンク剤をよく飲む
・おやつやデザートを必ず食べる
・定期的な運動をしていない
・脂っこいもの、コクのあるものが好き
・ゆっくり休めない
・甘いものが好き
・ストレスがたまっている
・夕食が遅いことが多く、たくさん食べる
・食事時間が不規則である
・煙草を吸う
・妊娠中に血糖値が高いと言われた
・40歳以上で、血縁に糖尿病の人がいる
・高血圧、あるいは脂質異常症、あるいはメタボである
「これらのチェック数が5個以上だと、糖尿病要注意です。生活習慣を見直しましょう。10個以上では、糖尿病の可能性が高く危険です。糖尿病の専門病院で検査をしてください」(山内先生)
閉経後、血糖値を上げない方法を教えて!
閉経以降になっても血糖値を上げない、予防法を教えてください。
「多くの女性が閉経を境に、血糖値は上昇し、糖尿病の発症リスクが高くなります。まずは、若いときと同じ食生活を見直す必要があります。閉経後と言わず、更年期になったら、食事と運動でできることから生活習慣を見直していきましょう」
糖質ダイエットは効果的でしょうか?
「糖質(炭水化物)制限ダイエットは、その人のタイプ、体質によって、向き・不向きがあります。炭水化物を抜くことで食事のバランスが崩れ、かえって脂質、塩分が高くなり、コレステロール、中性脂肪、血圧が上がる人もいますので、注意してください。効果的なのは、レコーディングダイエットです。1日の食事と間食を手帳に記録して自分を振り返るだけで、自分で食習慣を見直せるようになります」(山内先生)
血糖値だけでなく、HbA1c値を見ることが大事
健康診断の血液検査で、血糖値はまだ正常範囲内ですが、徐々に血糖値が上がってきて、異常値に近づいている人は少なくありません。正常範囲内のうちに、自分で注意すべきことはなんですか?
「体重や腹囲が増えていないかどうか? 運動不足ではないか? ストレスが多くないか? なども関係しますので注意してください。血圧も上がってきていないか、注意します。家で血圧測定をすることもおすすめします。メタボ(メタボリック症候群)になっていないかどうかも重要です。血糖値以外に注目すべき、健康診断の血液検査の項目としては、HbA1c値(最近1~2か月間の血糖値の状態を表す数値)です。また、関連して総コレステロール値だけではなく、LDLとHDLコレステロール比(LDL÷HDL=2以下が理想)、中性脂肪値(食前で150mg/dl以下が正常)もあわせて見てください」(山内先生)
血糖値を上げないための食事と運動のポイント
若いときと同じ食生活をしていると血糖値はあがってきます。予防のポイントは、食事と運動です。特に大事な6項目をあげました。
1 食べる順番が大事。食物繊維からゆっくり食べる
2 とくに夕食は和食中心に
3 麺類、丼、炊き込みご飯はなるべく控えて
4 緑黄色野菜を毎食摂る
5 肉より魚、大豆、大豆製品を積極的に食べる
6 軽い運動を週2回程度続ける
上の6つ以外にも、間食を減らす、油ものを減らす、3食きちんと食べる、夜遅い時間の食事を避ける、です。運動習慣のない人は、食後1回20分の散歩やインターバル歩行(早め歩行とゆっくり歩行を交互に数分間ずつ行う歩行)から始めることでも、予防になります。ストレスを避けることも重要です。喫煙は、心筋梗塞のリスクを高くしますので、禁煙も重要です。
病院ではどんな治療をする?
糖尿病の専門病院では、どのような治療をしているのでしょうか?
「食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて行うのが基本です。専門医、糖尿病療養指導士の資格をもった管理栄養士、看護師がチーム医療を行っています。糖尿病だけでなく、脂質異常症、高血圧は、生活習慣病ですから、まず一人ひとりに合わせた生活習慣の改善を一緒に考えていきます。特に、初期の段階では、薬だけに頼る治療はおすすめしていません。治療も予防と同じ、まずは食事と運動で生活習慣を見直すことが基本です。
糖尿病前の境界型糖尿病や初期の糖尿病であれば、血糖値が上がった原因になる生活習慣を見つけることが大事です。その中で一度に全てを変えるのでなく、できそうなことを見つけて実行します。結果が出てくると頑張れます。薬なしで血糖値を下げることも不可能ではありません。まずは、薬に頼らない糖尿病対策をお勧めしたいです」(山内先生)
お話を伺ったのは…糖尿病専門医 山内晃(やまうちあきら) 先生
医療法人社団梨慶会 山内クリニック、するがクリニック 理事長。山梨大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部内科勤務、静岡市立清水病院内科、慶応義塾大学病院腎臓・内分泌代謝内科助手、静岡市立清水病院内科医長を経て現職。日本糖尿病学会専門医・指導医。総合内科専門医。
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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