女性の9人に1人がかかる「乳がん」。予防するための食べ方と運動法【乳がん専門医に聞く】

 女性の9人に1人がかかる「乳がん」。予防するための食べ方と運動法【乳がん専門医に聞く】
AdobeStock
増田美加
増田美加
2023-06-10

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 いまや日本女性にとって身近になってきている乳がん。周りにも乳がんに罹患した方がいらっしゃるのではないでしょうか。食事や運動、生活習慣は、果たして乳がんとどのくらい関係するのでしょうか? 乳がんの危険性を食事や運動で減らすことはできるのでしょうか? 乳腺外科医の片岡明美先生に伺いました。

広告

大豆は乳がんの予防になる?

食事や運動、生活習慣と乳がんとの関係についての疑問、質問が数多く、寄せられます。まず、食事について伺いたいです。食事を変えることでがん予防はできるのでしょうか?

「塩分を摂りすぎない、熱いものは冷まして食べることは重要です。けれども、基本的に食事だけでのがん予防は難しいですね。早期発見と早期治療をめざすことが大切です」と片岡明美先生。

大豆や大豆イソフラボンについては、どうなのでしょうか?

「大豆食品(納豆、豆腐、味噌、大豆など)や大豆イソフラボンを摂ることで、乳がんを発症するリスクが低くなる可能性があると言われています。けれども、イソフラボンをサプリメントとして服用することで、乳がんの発症リスクが低くなることは証明されていません。厚生労働省は、通常の食品の摂取量から判断して、イソフラボンサプリメントの服用は1日30mg以下にとどめることを勧めています。食品の中から、がんの予防に役立つ“可能性”があると考えられる成分を抽出し、サプリメントとして売られているものがあります。しかしこれらは、あくまで食品。当然、乳がんを予防する効果はありません。副作用についても十分に調べられていないのです。大豆イソフラボンは、大豆食品から摂ったほうがいいと思います。大豆食品をたくさん摂ることで、乳がんの発症リスクが低くなることも、わかってきました」(片岡先生)。

 大豆は、良質なタンパク質としても大切。また食物繊維も豊富で腸活にもなります。大豆イソフラボンには、エストロゲンと似た作用があり、納豆、豆腐、豆乳、味噌などの大豆製品を摂ることで、エストロゲン減少による症状によい作用があると言われています。摂取の目安は1日100g(納豆1~2パック。豆腐3分の1~1丁)程度* です。

AdobeStock
AdobeStock

*農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_daizu_qa/

乳製品は、乳がんに関係する?

乳製品について伺います。「乳製品を摂ると、乳がんにかかりやすくなる?」と考えている人もいます。牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品と乳がんとの関係は、どうなのでしょうか? 

「乳製品を摂ることで、むしろ乳がんのリスクが低くなる可能性があります。昔、乳製品は、乳がんの発症リスクを高めるという研究報告や、逆に、低くするという研究報告など、さまざまありました。けれども、近年の研究で、乳製品全般を多く摂取している人は、乳製品摂取が少ない人と比べて、乳がんを発症するリスクが少しだけ低くなることが報告されました。ただし、牛乳そのものと、乳がんの発症リスクについては確かな傾向はなく、よくわかっていません。食品ですから、牛乳もその他の乳製品も、偏らずバランスよく摂るのがいいと思います」(片岡先生)。

太っていると乳がんになりやすいの?

肥満との関係はどうですか? 乳がんは、脂肪が多い、肥満傾向の人のほうが、かかりやすいのでしょうか?

「肥満は、乳がん発症リスクを確実に高めます。また、乳がんだけでなく、肥満はさまざまな生活習慣病(糖尿病、脂肪肝、高血圧、心筋梗塞)の大きな原因にもなります。子宮体がん、大腸がん、膵臓がん、突然死のリスクにもなります。太りすぎないように気をつけることは、とても大切です。適正体重を維持し、睡眠時間を確保しましょう。肥満の指標としてよく使われるBMI[Body Mass Index:体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕]では、25未満が普通、25以上を肥満としています*。BMIが25以上になったら、要注意ですね。

AdobeStock
AdobeStock

日本肥満学会の肥満の定義より http://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html

運動で乳がんのリスクは低下できる?

運動はどうでしょうか? 運動によって、乳がんになりにくいということはありますか?

「はい!運動は乳がんのリスク低下に役立ちます。特に閉経後の女性は、定期的に運動を行うことによって、乳がん発症リスクが低くなることは、“ほぼ確実”とされています。日ごろから、運動習慣をつけることは大切です。もちろん、閉経前の女性にとっても定期的な運動は、重要です。運動は、女性ホルモンやエネルギーバランスによい影響を与えます。女性ホルモンは、乳がんの発症と密接に関係しますので、日常生活における運動量と乳がん発症リスクとの関連について、数多く研究されてきています。その結果、定期的な運動を行っている人は、運動量の少ない人に比べて、乳がんを発症するリスクが低くなっているのです」(片岡先生)

どのような運動をするのがいいのでしょうか?

「定期的な軽い運動がいいと言われています。たとえば、少し汗ばむぐらいのウオーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を毎日10~20分程度が目安です。閉経後の女性だけでなく、閉経前の女性でも、肥満や生活習慣病の予防にもなりますので、定期的な軽い運動をお勧めします。激しい運動をしたからと言って、乳がんの発症リスクが下がるわけではありませんので、軽い運動で十分です。私も、乳がん予防のために病院内の階段を2階から9階まで上り下りしたり、休日にはウオーキングやランニングをしています。乳がんにかかるリスクと乳がん再発のリスクのデータを見ると、どちらも運動習慣があるとリスクは低下します。具体的には、軽いジョギングなら週に90分くらいが効果的です。1キロ7~8分程度のジョギングで1回4~5キロのランを週2回行う計算です」(片岡先生)

AdobeStock
AdobeStock

参考文献/『患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版』

お話を伺ったのは…片岡明美(かたおかあけみ)先生

がん研有明病院乳腺外科医長。1994年、佐賀医科大学卒業。九州大学医学部第二外科、国立病院機構九州がんセンター乳腺科などを経て、2016年より現職。日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本外科学会指導医、日本乳癌学会乳腺指導医。検診マンモグラフィ読影認定医師、認定NPO法人ハッピーマンマ理事、日本乳癌学会評議員、日本サポーティブケア学会妊孕性部会メンバー。

★片岡先生が所属する一般社団法人日本乳癌学会の第31回学術総会と乳がん関連のNPO法人が、「乳がんを知るための一歩、知らせるための一歩、支えるためにもう一歩」をテーマに、「ミニウオーク&ランフォーブレストケア ピンクリボンウオーク」を開催します!

今回は、装いも新たに〝シン・ピンクリボンウオーク〟としてスタート。増え続ける乳がんに対し、参加者と企業や団体、公共団体が一丸となって、乳がん早期発見の大切さを伝え、乳がんにやさしい社会をめざして発信する大会です。ウォーキングアプリを使うので、全国どこからでも、誰でも参加できます!6月1日~7月1日までの1カ月間で、1キロ、10キロ、30キロの中から距離を選んで、自分のペースで歩いて、乳がんの啓発活動に参加しませんか?一度に完走しても、毎日少しずつでも、合計の距離で目標達成を目指します。

【1㎞】2030年までに乳がんで命を落とす人を1万人以下に。

乳がんにかかる人が増加している日本では毎年約1万5千人の方が乳がんで命を落としています(*1)。その中には早期発見と適切な治療で救える命がたくさんあります。あなたの一歩が力になります。

【10km】この1年間で新たに乳がんと診断された10万人(*2)に思いを。

乳がんと診断された人が安心して治療できるよう、回復するよう、一人ひとりの力になるためにあなたにできることがあります。歩きながら、走りながら、思いを巡らせる10kmです。

【30㎞】乳がんリスクを減らす運動習慣(*3)を身につける。

乳がんにかかるリスクと乳がん再発のリスク。どちらも運動習慣があるとリスクは低下します。具体的には、週7メッツ以上の運動量が効果的。軽いジョギングなら週に90分くらいです。1キロ7~8分程度のジョギングで1回4~5キロのランを週2回行う計算で月に30㎞です。まずはウオークからでも挑戦しませんか。

参考文献/
*1*2 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」
*3『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』『ピンクリボンと乳がんまなびBOOK』

「第19回ミニウオーク &ランフォーブレストケア ピンクリボンウオーク 2023」

ピンクリボンウォーク

【公式サイト】https://pinkribbonwalk.breastcare.jp/  

【対象】主旨に賛同する方ならどなたでも

【開催期間】2023年6月1日~7月1日(エントリー締切 6/30(金)13:00)

【開催形式】アプリ(TATTA)を使ったオンライン開催

【参加費】1,000円(税込み)高校生以下無料

【共催】第31回日本乳癌学会学術総会と認定NPO法人乳房健康研究会、認定NPO法人ハッピーマンマ

広告

AUTHOR

増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

AdobeStock
AdobeStock
AdobeStock
ピンクリボンウォーク