年間約2900人が命を落とす子宮頸がん|なりやすい人の特徴は?どんな治療予防法がある?医師が解説

 年間約2900人が命を落とす子宮頸がん|なりやすい人の特徴は?どんな治療予防法がある?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-05-21

子宮頸がんとはどんな病気?医師が解説します。

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子宮頸がんとはどのような病気?

我が国では毎年およそ2900人前後の女性が子宮頸がんという病気で死亡していると報告されています(*1)。

日本は先進国で唯一、子宮頸がんの患者数が増加している傾向を示しています。

子宮頸がんは、子宮の入り口の部分に位置する子宮頸部と呼ばれる場所に発生する悪性腫瘍のことを指しており、若年層では20歳代から発症者が増え始めて30代後半で罹患数のピークを迎えることが特徴的とされています。

子宮頸がんは早期の段階で自覚症状が出現することはほとんどなく、かなり進行してから不正性器出血や悪臭を伴う織物などのサインが認められるようになります。

子宮頸癌
子宮頸がんと子宮体癌の違い
イラスト/Adobe Stock

子宮頸がんになりやすい人とは

子宮頸がんの多くのケースでは、主に性行為によって子宮頸部にヒトパピローマウイルスが感染することによって発症するリスクを上昇させることが判明してきました。

このヒトパピローマウイルスに一度でも感染すると必ず子宮頸がんを発症するわけではなく、ほとんどの方は免疫機能によってウイルスが自然に排除されます。

ところが、基礎疾患を有している場合や免疫能が健常よりも低下しているようなケースではウイルスが自動的に排除しきれずに残り続ける結果として子宮頸部に慢性的な炎症が加わり、最終的に子宮頸がんの病変を発症すると考えられています。

また、子宮頸がんという病気は他の癌腫などと同様に喫煙習慣があると発症リスクが上昇すると言われています。

子宮頸がんの治療予防策は?

子宮頸がんは主に性行為を介してヒトパピローマウイルスに感染することで引き起こされる疾患であるため、性行為の際にはコンドームを使用する、あるいは不特定多数との性行為を控えるなど普段から意識して心がけることが重要です。

子宮頸がんは、早期発見できれば子宮頸部の一部を切除する治療を行うことで妊孕性が保たれる確率が高く、将来的に妊娠や出産ができる可能性を残すことが可能ですが、いったん進行した状態で発見されると子宮や卵巣などの臓器を摘出することも少なくありません。

実際の治療方法は、年齢や他にかかっている病気、がんの進行具合によって人それぞれで異なり、進行度を示すステージによって、手術治療、放射線療法、化学療法のいずれか、あるいは複数の治療法を組み合わせて実施します。

子宮頸がんは早期に自覚症状をほとんど呈さず、知らず知らずのうちに病変が進行している場合があるため、本邦では基本的に20歳以上の女性は最低2年に1回のペースで定期的に子宮頸がん検診を受けることが提唱されています。

子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス感染が原因で発症すると考えられているため、2013年からこのウイルスに対するワクチン接種が推奨されました。

子宮頸がんは、早期発見をして早期的な治療が実践できれば治療の選択肢も広がり、根治を目指して予後良好になることが期待されていますので、特段気になる症状がなくても定期的に忘れず検診を受けることを意識しておきましょう。

まとめ

これまで、子宮頸がんとはどのような病気か、子宮頸がんになりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

子宮頸がんは、子宮の入り口にできる悪性腫瘍のことであり、初期段階においては、自覚症状が乏しい状態で病状が進行していくという特徴があります。

子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルスというウイルスの感染が原因であり、主に性交渉によって感染して発症すると考えられています。

子宮頸がんは自分では気付きにくい病気ですので、定期的な検診によりがんになる前の段階やがんの初期に発見することが重要ですし、ワクチンを接種していても、20歳を過ぎたら、2年に1度は子宮頸がんに関する検診を受診することを認識しておきましょう。

 

出典:

*1…国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録/厚生労働省人口動態統計)全国がん罹患データ(2016年~2018年)/全国がん死亡データ(1958年~2019年)

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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