フルーツが原因?突然、発症する「大人の食物アレルギー」見分け方と対策【専門医からの警告】

 フルーツが原因?突然、発症する「大人の食物アレルギー」見分け方と対策【専門医からの警告】
AdobeStock
増田美加
増田美加
2023-07-01

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 アレルギーというと真っ先に浮ぶのは、国民病と言われるほどの花粉症ですが、それと並んで増え続けているアレルギーが食物アレルギーです。専門医が少ないため、間違った情報が多く出回っているこの領域で、長年診療を続けているアレルギー専門医の福冨友馬先生を取材しました。どんなアレルギーが増えていて、どう対策したらいいのかもご紹介します。

広告

大人の食物アレルギーのリスクがある人は?

花粉症と並んで増え続けているアレルギーが食物アレルギー。食物アレルギーは、子どもの病気というイメージを持ちますが、大人になって初めて発症するケースが数多くあることがわかってきました。

「大人の食物アレルギーの症状は、特定の食物が原因となり、唇や口の中、喉に腫れやかゆみの症状が出る口腔アレルギー症候群(OAS)が多くなっています。また、稀に深刻なアナフィラキシーを起こすこともあります。日本での有病率は正確にはわかっていませんが、成人の1~2%程度ではないかと言われています。しかし、私が以前行った調査では大人の10人に1人は、特定の食べ物を食べたときにアレルギーの症状が出ると答えています」と福冨友馬先生。

大人の食物アレルギーは、これまでアレルギーの体質がまったくなくても、誰にでも起こり得て、しかも予想が難しいと言われています。大人になって初めて発症する人も少なくありません。以下に、ひとつでもあてはまると、大人の食物アレルギーの発症リスクがあります。

【大人の食物アレルギーを発症するリスクは?】

・花粉症である
・自分または肉親がアレルギー体質である
・子どものころにアレルギーがあった
・食生活が乱れている(偏っている)
・過度の綺麗好きである
・最近、日光を浴びていない
・調理業、食品加工業で食物を扱う仕事をしている
・料理などで食材に触れると手がかゆくなる

手が痒い
AdobeStock

子どもと大人とは原因になる食物が大きく違います!

「また、大人と子どもとでは、原因になる食物にも大きく異なる特徴があります。乳幼児と成人では異なる原因物質と合併の仕方をします。」

子どもの食物アレルギーは、卵、牛乳、小麦、クルミなどが大多数ですが、大人の場合は圧倒的に果物、野菜、豆乳、大豆が多く、次に小麦、甲殻類のほか、多種多様な食物がアレルゲンになります。子どもの場合は、卵も牛乳も小麦粉も、といった具合に複数の食物アレルギーになりますが、大人は複数の食物でアレルギーが出るケースが少ないのが特徴です。

AdobeStock
AdobeStock

花粉や化粧品などからも食物アレルギーを起こす!

なぜ、子どものときに起こっていない食物アレルギーを、大人になって発症するのでしょうか?

「メカニズムのひとつとして、ある食物を毎日のように食べ続けるうちにアレルギーになることがあります。この理由は、現代の医学ではまだわかっていません。大人のアレルギーのメカニズムのもうひとつは、食べること以外のアレルギーです。花粉、化粧品、手で触る食品などの環境中に存在するアレルゲンに触れることで、目や鼻、粘膜、皮膚などにアレルギーを起こします。これら環境中にある花粉などのアレルゲンと食物アレルゲンの形が似ている場合、その食物を食べることでアレルギー反応を起こしてしまうのです。これを交差反応と言います」(福冨先生)

つまり、花粉症の人は、その花粉とアレルゲンの形が似ている食物(野菜・果物・大豆)を摂ると、体はアレルゲンである花粉と勘違いし、アレルギー症状を起こす可能性があるというのです。花粉症は女性の有病率が高く、野菜や果物の摂取機会が多いのも女性なので、注意が必要です。

AdobeStock
AdobeStock

石鹸の小麦成分からも!

2010年に起きた旧「茶のしずく石鹸」事件を知っていますか?この石鹸を使ったために約2000人に、食物アレルギーが集団発生した大事件です。「あれは石鹸のアレルギーでは?」と思う方もいるかもしれません。なぜ食物アレルギーなのでしょうか?実は、この石鹸に含まれていた加水分解小麦という小麦由来の成分が、使用した人に小麦アレルギーを発症させる危険性のあるものだったのです。

「「小麦アレルギーなら、小麦を食べなければいいでしょ」と思うかもしれません。しかし、私たちが口にする食品の多くに小麦成分が含まれています。パン、うどん、パスタはもちろん、カレー、ハンバーグなど数えきれません。それらを口にすることでアレルギー症状が現れるため、日常生活の制限は非常に大きくなります」と福冨先生。

旧「茶のしずく石鹸」事件の真相とは?

旧「茶のしずく石鹸」事件とは、この石鹸を使ったために、もともと食物アレルギーがまったくなかった人に、小麦の入った製品が食べられなくなり、顔にじんましんが出たり腫れ上がったり、アナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難で救急搬送されるなどの被害が全国各地で多発しました。約2000人を超える方が小麦アレルギーを発症。一時は意識不明になる重篤な人も出るなど、深刻な社会問題になりました。

「のちの研究で、この石鹸に含まれていたグルパール19Sという名の加水分解小麦成分がアレルゲンであることが判明したのです。それが眼球結膜や皮膚を介して体内に入り、その後、食べた食品に含まれていた小麦アレルゲンと反応して即時型小麦アレルギーを発症したことがわかりました」(福冨先生)

治療の基本は、原因を特定して、避けること

「食物アレルギーの症状が出るのは、原因となる食物を食べて数分~15分くらいです。ピークは1~3時間以内。症状は早ければ、3~4時間後、遅くても半日で跡かたなく消えます。しかし一部ですが、なかには、アナフィラキシーショックなど重い症状が出る方もいます。全て即時型アレルギーで、一部で出回っている遅延型アレルギー検査などの情報は、学問的にも議論が多く、注意が必要です」と福冨先生。

食物アレルギーかどうかは、血液検査IgE抗体や皮膚テストで調べます。

AdobeStock
AdobeStock

「検査で食物アレルギーとわかったら、治療は、まずは原因食物を避けることです。抗ヒスタミン剤などを使うこともありますが、薬よりも食物を除去、つまり食べないことが基本です。ただし、原因食物を絞り込めないことが少なくないのが、食物アレルギー治療の難しいところです。食物アレルギーを疑って受診を考えている方は、症状が出たときに、調味料を含めた全ての食材、何時に何を食べ、どんな症状が出たか、その日の体調、起床、就寝時間、入浴時間、使用薬剤などを詳細に書いておいてください」(福冨先生)。

また、子どもの食物アレルギーの専門家は一定数いますが、大人の食物アレルギーの専門家が全国で約20人しかいないという現状があります。もしも、大人の食物アレルギー症状に困ったら、厚生労働省・日本アレルギー学会のサイト「アレルギーポータル」で全国の医療機関やアレルギーの正しい情報を得られます。

お話を伺ったのは…福冨友馬(ふくとみゆうま) 先生

国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター アレルゲン研究室 室長。広島大学医学部卒業。医学博士。2006年より国立病院機構相模原病院アレルギー科勤務。2014年より順天堂大学連携大学院客員准教授併任。日本アレルギー学会(代議員)アレルギー指導医。専門は、成人の食物アレルギー、アナフィラキシーの臨床、成人アレルギー疾患の疫学研究など。著書に『大人の食物アレルギー』(集英社新書)。貴重な大人のアレルギー専門医として16年診療し続けている福冨先生。その豊富な知見から得た情報は、これまでの食物アレルギーのイメージを大きく変えるものです。

広告

AUTHOR

増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

手が痒い
AdobeStock
AdobeStock
AdobeStock