PMSより深刻…生理前に起こる心の不安やイライラ「PMDD」を改善する方法|専門医がアドバイス

 PMSより深刻…生理前に起こる心の不安やイライラ「PMDD」を改善する方法|専門医がアドバイス
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増田美加
増田美加
2024-01-13

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 生理前のPMS(月経前症候群)の時期に、イライラや落ち込み、不安などのメンタルに関する悩みが強い人がいることがわかってきました。生理前に、特に精神症状が強い場合には、PMDD(月経前不快気分障害)の可能性もあります。産婦人科医で心療内科医でもある小野陽子先生に改善法を伺います。

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PMDD(月経前不快気分障害)とはどんな病気?

生理(月経)前にさまざまな不調が起こるPMS(月経前症候群=premenstrual syndrome)の中でも、特に心の症状が重くて、日常生活や社会生活に非常に大きな支障をきたすものはPMDD(月経前不快気分障害=Premenstrual Dysphoric Disorder)と呼ばれます。これはPMSと別の病気というわけではなく、「PMSの中でも精神的な症状が重いタイプ」と考えられています。

「PMSもそうですが、PMDDは生理周期に伴って起こる女性特有の症状なので、周囲の人に理解してもらいにくく、ひとりで悩んでいる人が多いのではないかと思います。PMSやPMDDの症状は、基本的に「生理が始まるとラクに」なります。けれども、もしも生理前に加えて、生理が始まってからも症状がなくならず、つらい症状が毎月続くようなら、うつ病や不安症など、別の心の病気が潜んでいる可能性があります」(小野陽子先生)。

PMDD
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PMDDはどうして起こるの?

PMDD(月経前不快気分障害)は、生理前になると、対人関係に摩擦が生じるほど情動が不安定になる病気で、2013年に診断基準がつくられた比較的新しい概念です。

「PMDDの原因やメカニズムは残念ながら、明らかになっていません。ですが、PMSやPMDDはプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されている黄体期に症状が出現し、プロゲステロンが低下する生理の時期にはやわらいでいきますので、プロゲステロンが症状になんらかの影響を与えていると考えられています。ただし、血液中のホルモン量と、PMSやPMDDの症状やその程度との間には、直接の関係はないことがわかっています。大切なことは、PMSもPMDDも、「女性ホルモンの過不足」や「女性ホルモンバランスの不調や乱れ」があるから起こるものではないということです。卵巣に病気があるわけでも、卵巣の働きが悪いわけでもない。むしろ、ちゃんと女性ホルモンが分泌されていて、排卵があり、生理周期がきちんとあるからこそ起こる症状なのです」(小野先生)。

家族に当たってしまう、周りに迷惑をかける…と悩む

「家族に当たってしまう」「人間関係が絡むためつらい」などの声もあります。たとえば、「生理前にイライラして家族にひどい態度をとってしまう」「情緒不安定になり、周りに迷惑をかけそうで怖い。外ではなんとか気持ちを保てていても、家に帰ってからはつらい」「生理前は人と良好な関係を保てない」「生理前だけ、悲しくなり、ムカムカする。すごく落ち込むときも。そんな不調を隠しきれずに、人に当たってしまう自分が嫌になる」「小さなことでイライラして家族に当たる。友達関係が面倒になって、口数が減って心配させてしまう」「生理前は、憂鬱な気分で夕食を作ることすら手をつけられず、家族に迷惑をかける」

「このような症状は、PMDDにとてもよく見られる症状です。ぜひ病院を受診していただきたいです。受診の目安は、「自分がつらい」と思うかどうかです。つらいと思うなら、ためらわずに受診してください。つらさには、症状の重さだけでなく、対人関係への支障や日常生活の問題などももちろん含まれます。病院で相談や治療を行なうことで、つらい症状を改善して、自分らしい生活を取り戻すことにつながります」(小野先生)

カウンセリング
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PMDDになりやすい人の特徴は?

生理のある日本女性の約70~80%が、生理前になんらかの症状があると言われています。PMDDは、生理がある女性の1.8~5.8%程度の割合です*1。

*1 DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル; 日本精神神経学会日本語版用語監修, 医学書院: 171-174, 2014

【PMDDになりやすい傾向は…】

①うつ病や不安症などの心の病気にかかったことがある 
②過去にトラウマがある 
③心の浮き沈みが激しい(社交的で気さくで親切である一方で、落ち込みやすくストレスを溜めやすいなど) 
④ストレスを自分で調整するのが下手 
⑤BMI(Body Mass Index)が30を超えるくらいの肥満 
⑥喫煙、飲酒習慣がある 
⑦親にPMSやPMDDの既往がある 

などの項目にあてはまる人です。

「しかしながら、PMDDの原因は、明確になっていませんので、PMDDになりやすい理由もここにあげたものだけではありません。要因はひとつではなく、性格や物事の捉え方の傾向、食生活の偏り、運動不足、喫煙などの生活習慣、環境や対人関係のストレス度合いなどが複合的に絡み合って、症状の現れ方に影響を及ぼしているのではないかと考えられています」(小野先生)。

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生理前の不安やイライラがつらいPMDDを治すには

PMDDを改善するにはどうしたらいいのでしょうか?

「まず、PMDDかなと思ったら、生理があった日やその前後の体調の変化を“症状日誌”に記録してみてください。日誌でなくても、手帳やカレンダー、スマホの記録でもいいです。自分の心と体に何を感じたか、そのとき生活ではどんなことが起きたか、書き留めてみましょう。異常を認めた日に✔印をつけるだけでもしてみてください。

約2カ月続けると、どんな症状が何日間続いているか、症状が起こるときに自分に何が起きているか、いろいろなことが見えてきます。予測もできるようになるかもしれません。また、この症状日誌は、病院でPMDDの診断をするときにも役立ちます。PMDDかもしれないと来院する患者さんの約半数は、生理周期とはまったく関係なく症状が出ている人もいました。生理前は体調が悪いと思い込んでいる人も多く、実際に日誌をつけてみたら、PMSやPMDDではなかったという人もいます」(小野先生)。

PMDDの治療法は?

落ち込みやイライラといった気持ちの不調は、どこを受診すればよいのか迷うことも多いです。PMDDを疑ったら、何科を受診すればいいのでしょう?

「婦人科でも大丈夫ですが、もし生理前に心の症状が強く現れることを自覚しいているようであれば、精神科や心療内科を受診していただくのもいいと思います。もし精神科や心療内科の敷居が高いと感じるようであれば、PMDDの疑いが強い場合でも、まず婦人科を受診して問題ありません。状況を確認しながら、必要な場合には精神科を紹介してもらうこともできます」(小野先生)。

病院での治療は大きく分けて、薬物療法と精神療法があります。

「PMDDの薬物療法は、うつ病や不安症などに効果があるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬が有効とされています。海外では、数種類のSSRIが、PMDDの治療薬として使われています。また、婦人科では、低用量ピルを使うこともあります。PMSの身体的な症状には、低用量ピルが効果的です。ただし、PMDDの重い精神的な症状は、人によって改善されないこともあります。比較的症状の軽いPMDDには、症状によっては漢方薬が有用な場合もあります」(小野先生)

また、不眠には睡眠導入剤、不安には抗不安薬や抗うつ薬、頭痛には鎮痛剤、むくみには利尿剤など、症状に対するお薬が検討されることもあります。PMDDの精神療法は、認知行動療法、マインドフルネス(瞑想)、自律訓練法などが有効とされています。これらの精神療法は、精神科・心療内科で受けられることが多く、残念ながら婦人科では行っていないことがほとんど。精神療法を希望する場合は、受診を考えている精神科・心療内科に問い合わせて受診をしてください。

セルフケアで軽くする方法はある?

自分の症状に気づき、きちんと向き合うことは大切ですが、なかなか難しい。自分でケアできることもあるのでしょうか?

「治療薬も生活を整えることで、治療薬の効果まで変わってきます。PMDDの症状日誌の記録を見て、自分のリズムがわかったら、この時期は無理しないと割り切ることも大切。PMDDは生理が来れば症状は軽減するので、仕事の量やスケジュールを調整してみましょう」(小野先生)。

生活習慣を整えることは大切。夜ふかししたり食事時間が不規則であれば、規則正しい生活を送れるようにしましょう。また、お菓子だけ、サラダだけ、ファーストフードなどのような偏った食事は、できるだけ避け、塩分控えめで栄養バランスのいい食事を摂ることも、症状の安定につながります。食事では、カルシウム、ビタミンD、鉄、ビタミンB群、ビタミンEなどを意識して摂りましょう。ヨーグルト、緑黄色野菜、レバー、ほうれん草などはおすすめです。症状を悪化させるものには、甘いもの(精製糖)、チョコレート、カフェイン、アルコールがあります。PMDDの時期だけでもできるだけ控え目にしましょう。禁煙はとても重要です。

有酸素運動も、症状改善につながるとされています。ウォーキング、ヨガ、水泳、自転車など、適度な運動は、症状を改善するのに有効です。理想としては1回20~30分程度の有酸素運動を週2~3回続けることがすすめられています。とはいえ、なかなか時間が取れない人も多くいることと思います。そういう場合は、1日15分歩くだけ、動画のCM中にスクワットするだけでもいいです。取り組めそうなところから行ってみてください。

音楽や映画を楽しむ、マッサージなどのリラクゼーションに通うなど、普段からストレスをうまく発散できる方法を見つけておくのも有用です。心地よいこと、リラックス、リフレッシュを感じられることは、PMDD、PMSの改善だけでなく、長期的な健康にもプラスになります。

「自分がストレスに感じることは何かを認識しておきましょう。そして、そのストレス源から距離を置いたり、周囲にヘルプを求めることも大切ですね」(小野先生)

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教えてくれたのは…小野 陽子(おの ようこ)先生

産婦人科医/心療内科医

日本産科婦人科学会専門医。心身医療専門医。日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医。日本女性心身医学会認定医師。女性の心身の不調の背景には社会的・環境的要因が影響していると感じ、産婦人科研修後、心療内科でも研修。女性が自分自身で心と体の対話を大切にできるようサポートしていく女性医療を心掛けている。Addots WOMEN「Addots女性の心と体のオンライン相談室」https://addots.co.jp/women/ を開設。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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