PMS症状、女性の約8割[頭痛、胸、おなか・腰]痛みをケアする方法は?産婦人科医からのアドバイス

 PMS症状、女性の約8割[頭痛、胸、おなか・腰]痛みをケアする方法は?産婦人科医からのアドバイス
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増田美加
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2023-12-09

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。「PMS(月経前症候群)」のつらい症状の中に、「痛み」の症状もたくさんあることがわかりました。頭痛、胸(乳房)の痛み、おなかや腰の痛みです。PMSの時期の痛みをどうケアしたらいいか、産婦人科医の八田真理子先生に伺いました。

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PMSはなぜ起こるの?つらい人とそうでない人がいるのはなぜ?

PMS(月経前症候群)を経験している女性は、生理(月経)のある女性の約70~80%もいて、そのなかで中等症から重症のつらい症状に悩まされている人は、約20人に1人とされています。年代別では20歳~49歳が多く、なかでも20代に多くなっています*1。

*1 20~49歳の日本人女性1187人を対象に行われた調査「Arch Womens Ment Health; 9(4): 209-212, 2006」より

「PMSは、生理前3日~10日の期間におこる精神的、身体的症状で、生理が始まると3日以内に、軽快、消失する症状です。原因はまだはっきりわかっていないことが多いのですが、2つの女性ホルモン、エストロゲンとプロゲステロンの変動が関係していると考えられています。排卵がある女性は、排卵から月経までの期間に、エストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されます。この期間の後半(つまり月経前)にエストロゲンとプロゲステロンが急激に変動し、脳内の神経伝達物質のセロトニンやGABA(γ‐アミノ酪酸)などが低下することでPMSが起こると考えられています。けれども、脳内の神経伝達物質はストレスの影響も受けますから、PMSは女性ホルモンの変動だけではなく、さまざまな要因が関係して起こるのです」(八田真理子先生)。

PMSの症状で多いのは?

PMSの症状は多種多様で、100~200種類もあると言われています。多いのは、イライラ、怒りっぽい、うつっぽい、胸(乳房)が張る・痛いなどです。食欲が増す、眠い、腹痛、むくむなどもあります。PMSの主な症状をまとめました。

【PMSのおもな症状】

生理前になると症状が現れて、生理が始まると症状がなくなる、あるいは軽くなる症状。これらはPMSでよくある症状です*2。

イライラ・怒りっぽい
情緒不安定
うつっぽい
不安
無気力
頭痛
下腹部が痛い・おなかが張る
胸が張る・痛い
めまい、動悸
吐き気
だるさや疲れ
微熱が出る
むくむ・体重が増える
ニキビ・吹き出物
不眠
眠くなる
便秘
甘いものが食べたい
食欲が増す
衝動買いが増える

*2 『産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020』日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会: 174-176, を参考に改変。

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症状がつらい人の特徴は?

基本的に、排卵が正常に起こっている女性ならば、症状の程度に違いはあっても誰もがPMS症状が出る可能性はあります。人によって、PMS症状がつらい人とそうでもない人がいます。症状がつらい人の特徴はあるのでしょうか?

「一般的には、食生活(栄養バランス)や生活スタイル(睡眠、運動など)の乱れ、塩分・糖分・カフェインの過剰摂取、喫煙、飲酒などが症状を悪化させると言われています。特にメンタルの症状は、エネルギー摂取量の不足がベースにあるのでは、と思っています。炭水化物を摂っていないと、イライラの原因にもなります。私の印象ですが、無理なダイエットを続けていたり、食事をバランスよく摂れてない女性にPMSが多いようです。つらい症状に悩んでいる人には、特に食生活の大切さを伝えています。脳内の神経伝達物質のセロトニンやGABAは、腸内細菌からも分泌されています。生理前に便秘になりやすい人が、便秘を改善したことでPMSがよくなる場合もあります。お通じを良くするためにも、食事や運動は大切。また、PMSと性格の関係はまだよくわかっていませんが、几帳面な人は、自分の体や心の症状に、より気づきやすいという可能性はあります」(八田先生)

PMSがつらい人と生理痛(月経痛)がつらい人とは、重なることが多いと言われています。PMS症状が強い傾向の人のうち約8割は、生理痛がひどいという報告も。女性ホルモンの変動の振幅が大きい人は、PMSにも生理痛もひどくなりやすいのかもしれません。

PMSで頭痛、胸の痛み、腹痛に悩む人がいる

PMSの不調で「痛み」を訴える女性は少なくありません。なかでも、頭痛、胸(乳房)の痛み、おなかや腰の痛みはよくあります。

「これらの痛みで生活に支障があり、つらいと思ったら、婦人科に相談していいケースです。迷わず婦人科に相談してください。痛みが生理の3日前~10日前に限られているのなら、PMSの不調と考えられますので、低用量ピル、漢方薬などを服用すると軽減できるかもしれません」(八田先生)

また、女性は片頭痛の人が多いので、片頭痛なのかPMSの頭痛なのか、見極めるのが難しいケースもあります。なかには、生理周期にリンクして排卵後と生理の終盤に片頭痛が起こる人もいて、低用量ピルを飲んでみたいが、前兆のある片頭痛は、低用量ピルが禁忌とされているので、怖くて服用していないという声があります。

「視野が欠けたり、視界にギザギした光が表れる“前兆”のある片頭痛の人には、低用量ピルは処方できないとされています。このような場合は、片頭痛治療を専門とする頭痛外来を受診するのがいいでしょう。今、片頭痛専用の新しい治療薬や予防薬も出ていますので、片頭痛専門医にぜひ相談してください。前兆のない片頭痛が生理の3~10日前ころに出るのであれば、低用量ピルで改善できることもあります。婦人科で相談してみてください」(八田先生)

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また、PMSで胸(乳房)が痛む人もいます。排卵後から生理前のPMSの時期は、女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増えて、受精卵が着床しやすくなるよう子宮内膜を厚くして、妊娠のための準備をします。プロゲステロンには、基礎体温を上げ、水分を溜め込んでむくみやすくする作用があります。胸が張って痛くなるのも、プロゲステロンの分泌が増えるためです。

「PMSで胸が張って、痛くて動きづらいときは、締めつけないように、伸縮性のあるブラジャーにしたり、サイズを少し大きめにしてみてはどうでしょう。PMSの時期は、胸も少し大きくなります。下着のサイズを変えてみる工夫もしてみてください。運動は、いつもよりペースを落としたりして、無理のない範囲なら行なって大丈夫。逆に、有酸素運動で汗をかくことで、気分もスッキリしむくみもとれて、痛みが楽になることもあります。運動は、女性ホルモンのバランスも整えてくれます。また、心拍数が上がると脳からエンドルフィンというホルモンが出て、うつっぽさが軽減し、楽しい気分になるとも言われています。適度な運動は、PMSも生理痛も軽減してくれる可能性があります」(八田先生)

PMSの痛みに対する治療は、低用量ピルや漢方薬、サプリメントなどいろいろあります。セルフケアで工夫することも大事です。いろいろ試して、自分に合ったケアを見つけていきましょう。

お話を伺ったのは…八田真理子(はったまりこ)先生

聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 理事長・院長。産婦人科専門医。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。順天堂大学、千葉大学産婦人科学教室に入局後、関連病院での研修を終え、松戸市立病院産婦人科勤務。1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から更年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行っている。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『「産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話」』(アスコム)ほか多数。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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