唾液力が低下すると起こる生活習慣病、感染症、うつ、肌老化…原因と対策は?|唾液の専門家からの警告

 唾液力が低下すると起こる生活習慣病、感染症、うつ、肌老化…原因と対策は?|唾液の専門家からの警告
GettyImages
増田美加
増田美加
2023-11-25

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。PMSや更年期のときは唾液の低下を感じます。「唾液力」とは量だけでなく、質も含めた唾液の総合的な健康指標。唾液力低下がもたらす不調や病気には何があるのか。唾液力を上げる方法についても具体的に聞きました。

広告

11月28(ツバ)日は「いい唾液の日」。唾液について意識するいい機会です。

唾液の「量」だけでなく、「質」が低下していませんか?

さまざまな研究成果によって、急速に唾液の力が解明されてきています。

「唾液力とは、量だけでなく、質も含めた唾液の総合的な健康指標です。唾液中には、わかっているだけで健康に大切な成分や物質、100種類以上が含まれています。代表的なものは、ウイルスや細菌の繁殖を防ぐIgA、細胞老化を防ぐラクトフェリン、粘膜保護成分、脳や体の細胞の栄養源となるグロースファクター。ほかにもメラトニン、コラーゲン、ヒアルロン酸など、多くの物質が含まれていて、想像以上に機能性の高い液体なのです」と槻木恵一先生。

唾液は、毛細血管中の血液が唾液腺を通過することで作られます。さらに興味深いことに、唾液腺で作られた唾液中の全ての物質は、舌下部の血管からまず脳へと移行します。その後、血液とともに全身へと行き渡るのです。唾液の成分が脳に入っていくとは、驚きです。

唾液の質の低下チェック

唾液の「質」が低下している可能性がある内容を紹介します。上記4項目は、唾液の質を低下させやすい食行動。後半の3項目は日常生活の活動性が低く、唾液力の低下につながりやすい状態や習慣を指します。

・朝食を食べないことが多い……1点
・ヨーグルトはほとんど食べない……3点
・野菜やイモなどはほとんど食べない……3点
・脂っこい食べ物が好き……2点
・買い物など外出することが億劫になってきた ……1点
・家にいることが多く歩くことが少ない……1点
・よく便秘になる……2点

合計点が3点以上の人は唾液の「質」が落ちている可能性があります!

更年期以降は年齢を重ねるほど唾液力が低下

唾液力が低下することで、リスクが高まる病気や症状はたくさんあります。歯周病、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病、がん、大腸炎、インフルエンザなどの感染症、うつや認知症、視力低下、肌老化なども、そうです。

「今、注目されているのは、唾液腺から産出されている成長因子BDNFという成分。BDNFは脳の神経細胞をストレスなどのダメージから守り、脳神経細胞の栄養となっています。記憶を司る脳の海馬で多く見られます。ストレス発生時には、海馬でのBDNFの量が一時的に減少しますが、唾液や血中濃度は逆に上昇し、脳のストレス耐性を回復し、強化する成分になります。BDNFの減少は、認知症やうつ病の発症リスクにもつながり、BDNFの産出量を増やせば、認知症やうつ病を予防する効果も期待できるのです」と槻木先生。

しかし女性は、特に閉経後、年齢を重ねるほど唾液力が低下します。唾液力をできるだけ維持する方法はないのでしょうか?

「唾液力を高める方法はいくつもあります。たとえば、よく噛んで食べると、咀嚼で脳内のBDNF量が増加します。咀嚼がうつ病、認知症の発症を抑制し、ストレスに強い脳を作ることも注目されています。ほかにも日常生活でできることを紹介します」(槻木先生)。

GettyImages
GettyImages

食事や生活習慣など毎日の継続です

健康な成人の唾液量は、1日1000~1500㎖。人間が1日にかく汗の量が500~1500㎖とされていますから、唾液は平常時でも酷暑の中で汗だくになったときの汗と同じくらいの量が出ていることになります。ですから、水分をこまめに摂ることは大切。1日1~1.5ℓの水分補給が目安です。ドライマウスや喉が渇くのは、唾液力低下の危険信号です。唾液力を上げるために、食材を大きめに切って食べるのも良い方法です。また、活性酸素は唾液力低下に影響するため、いわし、さばなどの青魚、玉ねぎ、長ネギ、もずく、めかぶ、大豆、トマト、レモン、イチゴなどの抗酸化作用のある食事を摂ることも有効です。脂質の多すぎる食事やアルコールは、唾液力を低下させるので注意しましょう。

また、唾液中に最も多く含まれているIgAという成分を増やすことは、唾液の質を高めるために重要です。抗菌物質IgAは、体の免疫力を高め、虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎、風邪、インフルエンザなどの感染症予防に重要な役割を担っています。IgAを増やす方法として有効なのは、乳製品を毎日継続して食べること。特に、ヨーグルトが効果的です。唾液中に含まれる抗菌物質IgAの濃度を高める作用があるからです。根菜類、海藻などの食物繊維や、ぬるめのお湯で抽出した緑茶にも唾液中のIgAを増やす作用が確認されています。 

耳下腺マッサージで唾液量をアップ!

耳下腺マッサージや舌の体操で、唾液力がアップしますので試してみてください。唾液の量と質を上げるマッサージや体操は、毎日継続することが大切です。

唾液の量を促す「耳下腺マッサージ」

耳下腺は、耳の下より少し手前の位置。そこに3本の指を当て、円を描くように指を回します。強く押さずに、ゆっくりと回すのがポイント。これを1~2分くらい10回以上繰り返します。

唾液の質を上げる「舌の体操」

リラックスした楽な姿勢で、舌を前に出したり、喉の奥へ引き込む動作を繰り返します。次に、口の両端に舌を動かし、最後に鼻の下、あごの先に向けて動かします。朝晩2~3回ずつ繰り返しましょう。

GettyImages
GettyImages
 

ほかにも、全身のストレッチやウオーキングなどの軽い運動も、BDNFやIgAの増加につながります。

教えてくれたのは…槻木恵一 先生(つきのきけいいち)

神奈川歯科大学環境病理学教授。神奈川歯科大学歯学部卒業。同大学院歯学研究科修了。同大学副学長。歯学博士。唾液中IgA分泌量増加のメカニズムや腸管内の役割を研究。「腸-唾液腺相関」発見の第一人者。著書に『唾液サラネバ健康法』(主婦と生活社)ほか。

・11月26日(日)には、第2回日本唾液ケア研究会学術集会が「いい唾液の日(11月28日)」を記念して開催されます。https://thnty.hp.peraichi.com/

広告

AUTHOR

増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

GettyImages
GettyImages