わきの多汗症に悩む人は260万人も!臭いが気になるわき汗とわきがの最新治療法【皮膚科医が解説】

 わきの多汗症に悩む人は260万人も!臭いが気になるわき汗とわきがの最新治療法【皮膚科医が解説】
増田美加
増田美加
2023-09-23

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 まだまだ暑い日が続きますね。秋の声が聴こえて来ても「洋服のわき汗が心配」「制汗剤が手放せない」「仕事に集中できない」とわき汗に悩む声も聞こえてきます。わき汗で病院に行っていいのか? どんな症状なら、病院へ行くべきか? わき汗治療の専門家、藤本智子先生に取材しました。

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わき汗に悩んだら、どんな治療ができるの?

「わき汗は、日常生活の支障を感じているかどうかが、治療のとても大事な指標になります。“汗じみや汚れが気になって着る服が限定される”“わき汗が気になって人との会話に集中できない”などの悩みがある人は、皮膚科を受診してください」と藤本智子先生。

わきの多汗症は、体温調節に必要な量を超えて、通常よりも多くわき汗をかいてしまうことで日常生活に支障をきたす病気です。医学的には「原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)」と呼ばれています。

「わきの多汗症は、12~59歳の男女の3.7%にいらして、日本には約260万人の患者さんがいると推測されています。女性のほうが気にする方が多いので、患者さんは女性が3倍多いです」(藤本先生)。

わき汗に困るのは夏が多いですが、ある調査では、わき汗をかいて困ったことがある人のうち約7割の人が、冬でも1週間に1回以上困ることがあると答えています*1。

*1 「脇に大量に汗をかいて困ることがある15~69歳男女1,505名Webアンケート調査」 2022年1月(マルホ)

わき汗があると、ニオイが気になる人も多いと思います。わき汗を治療すると、ニオイも気にならなくなるのでしょうか?

「わきの多汗症を治療することで、汗による衣服のニオイや体臭が気になるのを防ぐ可能性もあります。わき汗が多いからといって、必ずしも、わきがとは限りませんが、汗が皮膚表面で皮脂などと混ざると菌が繁殖しやすくなり、汗の成分などが分解されて、ニオイが発生することもあります」(藤本先生)。

わき汗
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わき汗が気になる人はチェック!

わき汗が気になる人は、以下をチェックしてみましょう。

□  明らかな原因がないまま、6カ月以上、わきに必要な量を超えて汗をかいている

+(プラス)以下の2項目以上があてはまる

□最初に過剰な汗が出たのは25歳以下である
□左右同じように汗が出る
□睡眠中は汗が止まっている
□1週間に1回以上、過剰な汗が出る
□家族にも同じ病気の人がいる
□汗によって日常生活で困ることがある

これらに当てはまる方は、原発性腋窩多汗症と診断名がつく可能性が高いです。

参考資料:『原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版』(日本皮膚科学会ガイドライン)

「緊張する場面など、精神的な問題でわき汗は増えます。それが余計にワキ汗をふやす刺激となります。一部では家族性も認められ、遺伝の関与も考えられることもあります」(藤本先生)。

湿った耳垢で、外耳道に毛が多いと、わきがの可能性が高い!?

日本人(東アジア人)でわきがに悩む人は、15~20%と言われていて、黒人、白人の90~100%と比べて決して多くありません。

「欧米人では当たり前のことなので治療する人が少なく、悩むのは東アジア人が圧倒的に多くなっています。わきがは、アポクリン汗腺から分泌される汗の成分や皮膚の細胞の関与により発生します。アポクリン汗腺の数は、毛量と関係していて、わきがの重症の人は、わきの毛量が多い場合がほとんどです。湿った耳垢で、かつ外耳道に毛が多いと、アポクリン汗腺が多く、わきがの可能性が高いとされています」(藤本先生)。

日本は、わきがが少ない社会だから、逆に自分のニオイが気になってしまうのかもしれません。両親のどちらかに、わきががあると、発症する可能性が高くなるとされています。また、性ホルモンが活発な思春期から40代は、アポクリン汗腺の働きが活発になるため、わきがが起こりやすくなります。原因として、食生活の乱れや過度の飲酒や喫煙などの生活習慣も関係します。

ワキガ
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わきがの予防と対処法

わきがの予防や対策は、どのようにすればいいのでしょうか?

「生活習慣で予防や改善ができることもありますので、紹介します」(藤本先生)

【わきがの予防と対策】

・動物性脂肪の食事は控えめに … 肉、乳製品、バターなどの高カロリー、高脂肪食は控えます。タンパク質は大豆製品や魚を中心に。

・飲酒や喫煙を控える … アルコールやニコチンは、アポクリン汗腺の働きが活発になり体臭が強くなる原因になります。

・ストレスを溜めないこと … ストレスによって、交感神経が優位になり、精神性の発汗が増えます。

・運動習慣をつける … 運動で汗をかく習慣をつけると、塩分の低いサラサラの汗が出るようになります。

・こまめに汗を拭く … ニオイの原因となる汗をまめに拭くことで、ニオイを抑えます。

・制汗剤や殺菌剤を使います … 汗の分泌を抑える制汗剤、細菌繁殖を抑える殺菌剤を塗るのも効果的です。

・わき毛を処理する … わき毛があると細菌の繁殖が活発になります。ニオイが気になる人は脱毛処理をしましょう。

飲酒
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「これらのセルフケアを行なってもさらにニオイが気になる場合は、皮膚科を受診してください。わきが治療は、アポクリン汗腺や皮脂腺を除去する手術、レーザー治療などがあり、わきがと診断されれば、健康保険が適用されます。また、実際は臭っていないのに、臭っていると思い込んでしまう人もいます。考え方のクセを変える認知行動療法が有効な場合もあります」(藤本先生)。

わき汗は治療したほうがいいの?

わき汗(原発性腋窩多汗症)は、皮膚科で治療できるのでしょうか? 

「わき汗によって日常生活で困っている方のために、保険適用の塗り薬など身近な治療法があります。治療法の選択肢も増えています。でも、わき汗に困っていなければ、治療する必要はありません。そもそも汗をかくことは大事なことです。けれども必要以上の汗は、汗のために対人関係に困ったり、普段の実力を発揮できないなど生活のQOLが低下させることがあります。更年期の方は、ホットフラッシュと同時にわき汗に悩む方もいらっしゃいます。日常生活で困る、と思ったら治療されていいと思います。

治療は、さまざまな方法があるので、皮膚科医と相談して、自分の症状やライフスタイルに合った方法を選ぶことができます。治療を続けることで、過剰な汗を改善、抑制して、わき汗による日常生活への支障をなくすことを目指します。暑い日や運動をしたときは、制汗剤やわき汗対策のインナーなど、一般的なセルフケア対策も大切。汗を必要以上に避けるのではなく、定期的な運動で必要な汗をかく習慣をつけることも大切です」(藤本先生)。

わき汗の治療法は?

わき汗の治療薬としては、どんなものがありますか?

「以前は、汗腺を物理的に閉じて発汗を抑える「塩化アルミニウム外用薬(自費)」しかなく、かぶれなどの副作用がありました。しかし今は、1日1回塗るだけの保険適用の抗コリン外用薬があります。汗腺に作用して、交感神経から伝達される汗を出す信号をブロックして、過剰な発汗を抑えてくれるものです」(藤本先生)。

重症例には、わきに薬を注射して、交感神経から伝達される汗を出す信号をブロックして、過剰な発汗を抑える治療法もあります。わきへのボトックス注射(保険適用)で数か月に1回行います。1回の注射で約半年間(4か月~1年)の効果を保てます。

「また、多汗症の症状が重く、ほかの方法で効果がない場合には、マイクロ波による照射(自費)という方法もありますが、ボトックス注射までで、ほとんどの人が効果を感じます」(藤本先生)。

ボトックス
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セルフケアでできること、制汗剤などの選び方は?

制汗剤や殺菌剤など、一般的なセルフケア対策もありますが、有効なのは、どんなセルフケアでしょうか? 

「制汗剤は、発汗を緩やかに防ぐことを目的とした「医薬部外品」、または清潔にすることを目的とした「化粧品」です。市販のお薬や制汗剤、汗拭きシートで効果を感じている方は、そちらでも決して悪くないです。特に軽症の方は、市販の制汗剤などでも十分効果を感じる方は多いです。市販の制汗剤を選ぶときは、ワキ汗制汗成分である「塩化アルミニウム水和物」(クロルヒドロキシアルミニウム=ACH)が入っているものにすると、効果を感じやすいでしょう。また、スプレータイプより、ロールオンやクリームタイプのほうが、肌に密着するのでいいと思います」(藤本先生)。

セルフケアでは、制汗剤、殺菌剤のほか、汗拭きシート、下着のわき汗パッド、速乾性のある下着なども上手に使いましょう。いろいろなケア用品から、自分に合ったものを選んで、組み合わせて対策していきましょう。

わき汗
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参考資料/『原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版』日本皮膚科学会

お話を伺ったのは…藤本智子(ふじもとともこ)先生

池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長 https://fukurou-hifuka.com/
浜松医科大学医学部医学科卒業。東京医科歯科大学皮膚科入局。東京医科歯科大学皮膚科医員・助教、多摩南部地域病院皮膚科医長、東京都立大塚病院皮膚科医長を経て2017年より現職。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医。東京医科歯科大学皮膚科臨床講師、日本発汗学会理事ほか。『原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版』(日本皮膚科学会ガイドライン)策定委員会メンバーのひとり。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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