ドライアイ「マイボーム腺機能不全( M G D )」に目薬以外の選択肢、新治療「IPL」とは?

 ドライアイ「マイボーム腺機能不全( M G D )」に目薬以外の選択肢、新治療「IPL」とは?
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増田美加
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2023-08-26

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 ドライアイに悩んでいませんか? 日本のドライアイの患者数は、1200万人以上と言われ、増加傾向にあります。最近の研究で、「マイボーム腺機能不全(MGD)」という病気とドライアイの関連性が明らかになり、ドライアイの改善に繋がる新たな治療法が注目されています。これまでドライアイを目薬で治療してもよくならなかった人は、試してみる価値があるかもしれません。ドライアイ治療の専門家、堀裕一先生(東邦大学医療センター大森病院眼科教授)に伺いました。

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ドライアイが進行すると、視力低下を起こすことも

ドライアイは、涙の量が不足したり、涙の成分が変化して目の表面を均一に潤すことができなくなる病気です。目が乾くといった不快症状だけでなく、乾燥によって目の表面を傷つけてしまう場合もあります。

「ドライアイの原因はさまざまで、空気の乾燥、パソコンやスマホでの作業、コンタクトレンズの使用、高齢化による涙腺の機能低下、薬剤やほかの病気による影響なども考えられます。眼精疲労の目が疲れやすい、ゴロゴロする、目やにが出るなどの症状と、ドライアイの症状は重なります。ドライアイは進行すると、視力低下や痛み、角膜上皮剥離(角膜が乾燥してはがれる病気)を発症してしまうこともあります。慢性化する前に早めに眼科を受診することが大切です」と話す堀裕一先生。

ドライアイ治療に新たに登場したのは?

今、ドライアイの治療にはどのようなものがあるのでしょうか?

「ドライアイの治療にはこれまで、①外から水分を補う、②体内から涙の成分を出させる、③涙を留める、といったアプローチがあります。

①は点眼薬による治療が主流で、人工涙液やヒアルロン酸製剤など目を潤すタイプの点眼薬
②はムチンなどの涙の成分を体内から出させる点眼薬
③は涙を留める治療法で、「涙点プラグ」といって、涙の排出口を液体コラーゲンやシリコン製のプラグで塞いでしまう方法

これら、既存の治療法に加えて、新たな治療法として登場してきたのが、涙の脂不足が引き起こすタイプのドライアイの原因となる「マイボーム腺機能不全(MGD=Meibomian Gland Dysfunction)」という病気に対する治療法です」と堀先生。

MGDは、さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が大きく低下してしまう病気です。最近の調査では、MGDによるドライアイは、ドライアイ全体の86%以上であると言われています*1。
*1 DEWS II report, Ocular Surface, 2017 Lemp, et al.Cornea. 2012 May;31(5):472-8.

「これまでのドライアイの治療では、改善できないと悩む方が少なくありませんでした。MGDが原因で涙の脂不足が引き起こすドライアイに対して、診察でマイボーム腺の状態を調べ、治療していく方法が新たに可能になりました」(堀先生)。

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MGDの原因になる「マイボーム腺」ってどこにある?

マイボーム腺は、まぶたの中にある脂分を分泌する皮脂腺です。マイボーム腺から分泌される脂は、涙の表面を覆うことで、涙の蒸発を抑え、涙を安定させる働きをもっています。マイボーム腺は、涙と関係が深いのです。マイボーム腺の開口部は、上下のまつ毛の生え際よりやや内側にあって、そこから脂が分泌されます。開口部は、上まぶたに25~30個、下まぶたに20~25個 、あります。

「MGDという病気は、さまざまな原因で、マイボーム腺の機能が大きく低下して、詰まることによって起こります。MGDになると、涙の脂が不足して、涙が不安定になりドライアイが発症します。MGDの症状は、ドライアイのほかに目がゴロゴロする、目やにが出る(眼異物感)、まぶたが熱い、目が痛い、眼精疲労などです。MGDを起こす原因としては、加齢が最も大きく関係していますが、ほかに喫煙、コンタクトレンズの装用、緑内障の点眼薬、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧などが挙げられています」(堀先生)。

ドライアイに目薬以外の選択肢。最新「IPL治療」

『マイボーム腺機能不全診療ガイドライン』(2023年2月)が発表され、そこで推奨されている治療法としては、ホームケア(セルフケア)、病院からの処方薬、病院での施術の3本柱です。ホームケアとしては、温罨法(まぶたを温める)、眼瞼清拭(まぶたの縁をきれいにする)、オメガ3脂肪酸サプリメントがあります。病院からの処方薬は、アジスロマイシン点眼、ステロイド点眼、抗菌薬内服です。クリニックでの施術では、マイボーム腺に詰まった古い脂を絞り出すように圧出する方法、「リピフロー」(機器でまぶたに熱と圧力を与える治療法)、そして、新しい治療法として薬事承認された「IPL(Intense Pulsed Light)」と呼ばれる治療法です。IPLは、目薬では改善しにくいドライアイにも効果が期待されています。

写真提供/ルミナス・ビー ジャパン
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IPL治療に使う医療機器。美容皮膚科の「フォトフェイシャル」で使われるものと同じ。MGDの治療として使うときは、ハンドピース(光を当てる部分)をMGD治療用のものにして使います。

約80%の人のドライアイを改善できる期待が!

IPLとは、どのような治療法なのでしょうか?

「IPL は、医療機器で下まぶたに強い光を照射してマイボーム腺の詰まり、炎症を改善して、涙の脂不足を解消する治療です。照射時に、輪ゴムではじかれたような軽い痛みがある程度で、副作用はほとんどありません。IPLは、光治療で、皮膚科・美容皮膚科領域で、顔のシミ、そばかす、ニキビ跡などに対する治療として以前から、フォトフェイシャルと呼ばれ行われているものです。マイボーム腺の機能が低下しているまぶたに対して、まぶたの深部にある血管の炎症を除去し、その光による温度上昇によって、マイボーム腺からの脂分の分泌を増加させる効果が認められています。マイボーム腺機能不全(MGD)に対するこれからの新しい治療として注目されています。3~4週間おきに4回以上行うことで、改善効果が期待されています。MGDの重症度にもよりますが、約80%の患者さんにドライアイ症状が改善したことが報告されています。費用は自由診療で施設によって異なりますが、1回10,000円前後で行っている施設が多いと思います」(堀先生)

写真提供/ルミナス・ビー ジャパン
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IPLのハンドピースは、下まぶたから鼻の部分に当てて、光を照射します。かかる時間は3~4分間程度です。目の周りにはたくさんの血管が走っており、下まぶたへ照射することで血流改善と周辺部分の温度が上昇することで、上まぶたのマイボーム腺にも効果が及びます。

◆MGD治療を行っている医療機関はこちらから探せます 
【LIME研究会】 https://www.lime.jp/

お話を伺った先生…堀裕一(ほりゆういち)先生

東邦大学医療センター大森病院 眼科教授
1995年大阪大学医学部卒業、大阪大学医学部眼科学教室入局。米国ハーバード大スケペンス眼研究所研究員。大阪大学医学部眼科助手(助教)、東邦大学医療センター佐倉病院眼科准教授を経て現職。角膜疾患やドライアイが専門。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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