生理の出血、どのくらい多いと異常?婦人科医が【過多月経の対策と治療】について解説

 生理の出血、どのくらい多いと異常?婦人科医が【過多月経の対策と治療】について解説
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増田美加
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2023-10-14

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。「昼間でも夜用ナプキンを使うことがある」「夜用でもモレる」という人は少なくないと思います。生理の出血量(経血量)がどのくらい多いと異常なのでしょうか?婦人科に行くべきか迷っている人に、産婦人科専門医の中込彰子先生からアドバイスをもらいました。

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生理の出血量、異常の目安は?

生理の量が非常に多く、生活に支障があるような場合を「過多月経」といいます。過多月経かどうかの見分け方、過多月経の背後には、どんな病気が隠れているのかを、産婦人科医の中込彰子先生に伺いました。

生理の出血量は、どのくらいの量だと異常なのでしょうか?

「正常な生理の出血量の目安は、1回の生理周期の総出血量が20~140mlといわれています。出血量が多い“過多月経”は、1回の生理周期で140ml以上出血する場合とされています。でも、自分で出血量を毎回測る人はいませんよね。過多月経かどうか、自覚症状からチェックできるポイントがありますのでご紹介します」(中込彰子先生)。

【過多月経 チェックポイント】

・500円玉以上のサイズの、レバーのような塊が出る
・普通のナプキンでは2時間もたない
・タンポン使用していても、ナプキンを頻回に取り替えている
・昼間でも夜用ナプキンを使わないとカバーできない

「これらにひとつでも当てはまったら、過多月経です。出血量が多くて気になると思ったら、ぜひ婦人科にご相談ください。過多月経の背後には、原因となる病気が隠れている場合があります。そして、その病気によっては、不妊の原因になったり、今後貧血になるほどの出血となる可能性があります」(中込先生)

過多月経の原因には、どんな病気が?

過多月経の原因になる病気には、どのような病気があるのでしょうか?

「過多月経には、さまざまな原因があります。婦人科系の病気としては、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープなどが考えられます。そのほかでは、血を固める作用のある血小板が少なくなる病気が隠れていて、出血が止まりにくい場合もあります。また、10代20代の若い人ですと、ホルモン分泌がまだ確立していないことによって起こる「無排卵性機能性出血」が原因の場合が多い一方、更年期と言われる閉経の前後5年ずつの期間では、ホルモンバランスの乱れが原因で過多月経となる場合があります。そして、子宮頸がんや子宮体がんなど悪性の病気が隠れていることもあるんです。」(中込先生)。

「生理のことが気になる」「生理のために生活に支障がある」という人や、「私の生理は異常なのかな?」と不安になったら、一度、婦人科を受診しましょう。過多月経は、先ほどお示しした通り、ホルモンバランスの変化だけでなく、治療が必要な病気が原因になっていることがあります。何が原因なのかは、受診して診察や検査をしてみないとわからないことが多いのです。

「また、内診台に抵抗がある方は、診察室のベッド上で膝を立て、タオルをかけて診察することもできます。また、腟からのエコー(超音波検査)が難しいときは、お尻からのエコー(経直腸エコー)やお腹の上からのエコー(経腹エコー)検査をすることも可能です」(中込先生)。

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過多月経は、治療できます!

「ナプキンを二重に使うので、費用が大変」「夜用にショーツ型のナプキンが必要で費用がかかる」「生理用品の消費が早く、毎月の出費が大変」という声も聞かれます。生理の出血量が多いと、ナプキン代がかかります。過多月経を治療すれば、生理用品の費用の負担も減るでしょうか?

「過多月経は治療できます。原因として、子宮由来の病気がある場合と、体内のホルモンや血液中の成分のバランスの乱れがある場合があります。原因になりえる子宮の病気は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープなど。これらの病気がある場合は、治療を行うことで出血量を減らしたり、出血しなくすることも可能です。治療としては、病気の部分の大きさや症状の程度にもよりますが、いずれの場合も、低用量ピルや黄体ホルモン製剤、そして卵巣からの女性ホルモンを抑えて閉経のような状態を作るホルモン剤など、飲み薬や注射薬でまず治療することが多いです。大きな子宮筋腫やポリープは手術することもありますが、サイズがまだ小さいときには、先ほどお示ししたホルモン治療を行なっても出血量が減らない場合などに検討されます。つまり、過多月経の症状が出てから早めに検査・治療開始ができれば、その結果、手術を回避できる可能性があるのです。

また、出産経験のある方なら、「ミレーナ」(レボノルゲストレル放出子宮内システム)という人工の黄体ホルモンを持続的に放出する柔らかい器具を子宮内に入れておく治療もあります。黄体ホルモンには、子宮の内膜が厚くなるのを抑える作用があります。この効果により内膜が薄くなれば、出血量は減り、過多月経になることはありません。最近、過多月経や生理痛がつらい人の治療として使用される機会が多くなってきました。5年間は入れたままで大丈夫ですし、過多月経の治療であれば保険も効くので、費用面でも抑えられます。出産経験がない方でも、挿入時に痛みを感じるケースが多いようですが、使用できないわけではありませんので、婦人科にご相談ください。妊娠したくなったときには、取り出してしまえばOKです。

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また、30代までの女性たちに多いのは、ホルモンバランスの不安定さや無排卵周期、子宮内膜症や子宮腺筋症です。これらは低用量ピルや黄体ホルモン製剤で治療することができます。低用量ピルを服用すると、生理痛が良くなっていきますし、出血量もかなり減ります。早めに治療しておくことで、子宮や卵巣など妊娠に関わる環境を整えることになるので、将来の不妊を予防することにもなります」(中込先生)。

ナプキン代より低用量ピルの方が安い!

「ナプキン代について、わかる範囲で調べてみたところ、大きさやメーカーによってかなり幅はありますが、昼用1枚が10~40円くらい、夜用1枚は25~130円くらいでした。生理期間中に2~4日目だけは、夜用ナプキンを2時間おきに交換するとして「1日12枚+夜はショーツ型」をベースに使うとしたら、いくらになるか計算してみました。夜用ナプキンを1枚30円、ショーツ型ナプキンを1枚100円とすると、1日460円。ほかの日は、夜用と昼用で5枚くらいとしても、7日間で2000円くらいになります。それにタンポンを併用したら、1カ月3000円以上になります。低用量ピルは、1カ月分で約2000円。出血量も減るので、おりものシート数枚で済みます。生理の出血量がとても多くて、困っている人にとって、費用面でもお得です」(中込先生)。

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低用量ピルを使うと、ナプキンの費用も抑えられ、ナプキンかぶれ防止、下着が汚れない、洋服へのモレを気にしなくてよいなど、メリットがたくさんあります。過多月経の病気に対する治療も、種類が多く、いろいろな治療法があります。過多月経は治療できます!生理による不快を少しでも減らして、快適な生活に近づけるといいですね。

お話を伺ったのは…中込 彰子(なかごみ あきこ)先生

山梨大学医学部産婦人科学教室 臨床助教。愛媛生まれ、広島育ち。日本産科婦人科学会専門医。漢方家庭医。NPO法人女性医療ネットワーク理事。琉球大学医学部医学科卒業後、地域に根ざした女性総合診療医を目指し、長崎で研修。日々の診療の中で、目指す医師像は「家庭医」ではないかと考え、Oregon Health & Science Universityに短期留学。そこでの経験を経て、総合診療医から産婦人科医への転科を決意。2014年より、東京で産婦人科医として7年間勤務後、夫の出身山梨へ転居し現職。『内診台がなくてもできる女性診療 外来診療からのエンパワメント』『Rp.+(レシピプラス)ホルモンとくすり』共同執筆。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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