20代30代の5人に1人は栄養失調!?やせ過ぎに要注意!不妊リスクや骨粗しょう症に!専門家が警鐘

20代30代の5人に1人は栄養失調!?やせ過ぎに要注意!不妊リスクや骨粗しょう症に!専門家が警鐘
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増田美加
増田美加
2025-08-09

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 今日本女性の20代~30代は、戦後より飢餓状態にあると言われています。20代~30代の5~6人に1人は、やせ過ぎで栄養失調なのです。では、「どのくらいだとやせ過ぎなの?」「何が危険?」「どのくらい体重があればいいの?」を栄養の専門家で医学博士の女性健康科学者である本田由佳先生に伺いました。

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戦後よりカロリー不足の日本女性

20代、30代の日本女性のやせ過ぎ(栄養失調)が問題になっています。やせ過ぎかどうかは、どう判断するのでしょうか?

「いまの若い日本女性は、戦後よりカロリー不足で、飢餓状態と言われています。単に、見た目が痩せているから問題というわけではありません。いろいろな指標があるのですが、わかりやすいのは、「BMI(体重 (kg) ÷ 身長 (m)の2乗)」 です。BMIが18.5未満で「やせ(低体重)」です。BMIが18.5 ~ 25 未満が「普通体重」、BMIが25以上が「肥満」と定義されています。20代、30代の日本女性は、5~6人に1人がBMI18.5未満のやせ過ぎのグループに入っています。そのため2025年4月に、日本肥満学会が過度な「やせ願望」に警鐘を鳴らしました。

そのうえ、日本女性は細身の体形(平均BMIが20.7)にもかかわらず、「今より4.4㎏やせた体形が理想」と言っているのです*1。これは日本女性にとても多い傾向で、やせの割合は先進国の中で日本が最も高く、先進国でやせ過ぎ女性の割合は1位です。20代女性でBMIが18.5未満を理想とする日本女性が88%もいることがわかっています。日本女性が飢餓状態だということは、20代女性のエネルギー摂取量を見てもわかります。2002年以降、20代女性のエネルギー摂取量は、必要とする摂取量に届いていません。まさに栄養不足の状態なのです」(本田由佳先生)

BMI = Body Mass Index:体格指数

痩せすぎ
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*1 厚生労働省「国民健康・栄養調査」2019年、1998年

海外では、やせ過ぎのファッションモデルに規制が!

日本女性がやせ過ぎているのは、なぜなのでしょう? 

「日本人がやせを好む価値観が普及している理由は、日本ではボディイメージや自己肯定感をもつ教育が積極的に行われていないことなどもその理由になります。メディアの影響も少なくありません。海外(イタリア、スペイン、フランスほか)では、やせ過ぎのモデル規制を行ない、BMIが18.5以下のやせ過ぎのモデルは、ファッションショーやテレビなどへの出演を禁止されています。しかし、日本ではいまだに何の規制も行われていません。

また、日本女性にやせが多いのは、美意識の問題だけではありません。女性の社会進出が進んだことで、忙しくて必要な栄養とエネルギーが摂る時間や環境が減ってきていることも理由のひとつなのです。残業をすると、どうしても夕食の時間が遅くなり、翌朝の食欲がわかず、朝食を欠食するという悪循環に陥ります。食事は、コンビニのインスタント食品やクッキー、チョコレートなどのお菓子で済ませることも増えてきます。学校教育の中で、食育を通じて生活習慣に関する正しい知識は教育されていますが、自分の体や見た目に対する感じ方と対処の教育はされていないため、日本人の健康・セルフイメージへの知識・スキル・認識の不足が課題となっています」と本田先生。

生理不順、肌荒れ、骨折や不妊のリスクも

やせには、さまざまなリスクが伴います。やせということは、カロリーと栄養不足であることを表しているのです。栄養不足によって、生理が遅れたり、疲れやすくなったり、肌荒れが起こるなどは想像できますがさらに、現在の不調に加えて、将来の病気のリスクも上がります。

「まず、やせによる現在の不調で多いのは、生理不順、無月経、疲れやすい、冷える、肌や髪の調子が悪いなどがあります。代謝が落ちて太りやすくなったり、肌や髪にも悪影響です。また、やせていて見た目はスリムでも、骨密度や筋肉量が少ない“隠れ肥満”だったり、“フレイル予備軍(寝たきりの一歩手前)”の可能性もあります。

将来、隠れ肥満だと生活習慣病になりやすく、病気リスクが上がります。糖尿病リスクは1.9倍、骨粗しょう症リスクは1.6倍、骨折リスクとフレイルリスクはどちらも2倍もあるのです。若い人のやせは、肥満の人と同じくらい糖尿病リスクがあるというデータもあります*2。さらに不妊症になりやすく、妊娠したとしても、妊娠高血圧症を発症しやすくなります。お母さんのやせは、生まれてくる赤ちゃんにも影響があります。低出生体重児(2,500グラム未満)として生まれやすくなり、小さく生まれた赤ちゃんは、将来、糖尿病や高血圧などになりやすく、身長が低くなる可能性があるとも言われています」(本田先生)

骨粗しょう症
キャプション

*2 JClin Endocrinol Metab.2021;106(5):e2053-e2062

カルシウムだけ摂っていても骨には足りない

やせている(低体重:BMI 18.5未満)女性の不調は、栄養不足から来ている可能性が高いのです。若い年齢にもかかわらず、骨粗しょう症になって骨折しやすくなっている人もいます。健康のため、骨のために、摂るべき栄養には、何が必要なのでしょうか?

「健康で美しい骨をつくるためには、食事、運動(ジャンプ)、日光浴が必要です。骨のためにはカルシウムを摂ればいいと思っているかもしれませんが、栄養は、カルシウムだけではダメです。特に必要な栄養素をあげると、タンパク質、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB、ビタミンDです。

タンパク質は、大豆、肉、魚、卵、牛乳などから摂りましょう。
カルシウムは、小魚、ヨーグルト、牛乳などから。
マグネシウムは、大豆、魚、果物、野菜などから。
ビタミンB(葉酸)は、イチゴ、緑色野菜、ケールにもたくさん含まれています。
ビタミンDは、普通に生活して日光を浴びていれば体内で合成できるのですが、UVケアをしっかりしている人は不足気味です。サケ、干ししいたけ、きくらげなどに多く含まれています」(本田先生)

グラフ

これらの栄養素を上手に食べるコツは、なんでしょうか?

「朝昼晩のどこか1食でもいいので、意識するところから始めてください。海のもの(海藻や魚介類)を摂ると、タンパク質もビタミンDもミネラルも摂れるのでおすすめです。わかめ、しらす、かつお節もいいです。それから、栄養不足を回避するためには、朝食を摂ることがとても重要! 朝食を食べていない人は、まずヨーグルトとバナナからでもいいので始めてください。

バナナは、ミネラル、ビタミンのバランスもよく食物繊維も豊富で、甘味があってもGI値(グライセミック・インデックス)が低いので血糖値も上がりにくい果物です。果物で言えば、パイナップルも食物繊維、ミネラルが豊富でおすすめです。もう少し食べられる人には、おすすめの朝食を紹介します。朝は忙しいので、包丁や火を使いたくない場合でも大丈夫です。

【骨にいいおすすめ朝食 ~包丁も火もいらない~】

① スープボールに即席のしじみ味噌汁の素を入れ、少量のお湯で溶いておきます。
② ①に豆乳約200mlを入れて軽く混ぜ、レタス1枚くらいひと握りをちぎって入れ、ミニトマト3つ、チーズ少し、ご飯(または冷やご飯)大さじ2~3を入れてかき混ぜ、レンジで1分半~2分温めます。
③ ②を取り出して、オリーブオイルを少々、貝割れを入れて、お好みで胡椒を加えて出来上がりです。

レシピ考案・制作:慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムTeamROSE(本田由佳・山口紫乃)
参考資料/厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書

日光浴と運動も大事

「骨のためには、日光浴も必要です。紫外線対策にUVケアをしていると思いますが、夏の昼間なら約10分、日に当たることはビタミンDを作るために大切です。しかし、冬は日光だけでは必要なビタミンDを作るのには足りません。食事でビタミンDを忘れずに摂ってください」(本田先生)

また、運動も大切です。骨のためには、骨に少し衝撃を与える運動がおすすめなので、ジャンプがいいと言われています。「その場でジャンプしてもいいですし、縄跳びもいいですね。低い台から飛び降りることをくり返すのもいいでしょう。私たちのチームで、骨のために良い体操を考えました。歌いながら踊る「チームボーン体操」です。ここから動画を見て、ぜひ一緒にやってみてください」(本田先生)

 

お話を伺ったのは…本田由佳(ほんだゆか)先生

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任准教授
女性健康科学者・健康情報学者・博士(医学)。順天堂大学スポーツ健康科学部卒業後、タニタで体組成計や睡眠計のアルゴリズム開発と商品企画に携わる。2018年~2021年まで国立成育医療研究センターでプレコンセプションケアと女性の健康の包括的支援政策研究事業の政策研究を行った。現在は産科婦人科舘出張佐藤病院、慶應義塾大学SFCに所属。Femtechコミュニティモデルの構築やウエルビーイング健康教育プログラムの開発・研究・啓発を行う。著書に『価値創造の健康情報プラットフォーム 』(慶應義塾大学出版会)ほか。

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