【最新腟治療】女性泌尿器科医が行う閉経前後の腟の乾燥、緩みを改善する方法
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 閉経前後に尿トラブルに悩む女性が増えています。女性泌尿器科が行う治療の種類は増え、さまざまな治療法が出てきています。女性専門の泌尿器科医が行う、女性の悩みに応える最新腟治療を紹介します。
閉経後の最大の悩みは 頻尿や尿もれ、くり返す膀胱炎
頻尿や尿もれ、くり返す膀胱炎などの尿トラブルは、エストロゲンの分泌が低下する更年期以降に増加し、40歳以上の約4割の女性が悩んでいると言われています。また、頻尿、尿もれ、くり返す膀胱炎だけでなく、外陰部や腟の乾燥、性交痛などの症状があればGSM(閉経関連尿路性器症候群)の可能性があります。
閉経前後から増えるGSM(閉経関連尿路性器症候群)の特徴は、腟の乾燥、性交痛などの症状です。これまで老人性腟炎などと言われ、年だから仕方がないと諦めざるを得ない時代が続いていました。しかしここ数年、新たな腟への治療法が数々生まれ、女性の閉経によって起こるフェムゾーンの悩みに応える医療が増えてきました。
「GSMは閉経後、エストロゲンの低下に伴う外陰や腟の粘膜や粘膜下組織の萎縮と脆弱化で、尿路、生殖器の症状が顕著に起こる病気です。GSMのリスクが高い人は、乳がんに対するホルモン療法中や治療後、遺伝的な骨盤底の筋肉や靭帯の弱さ、妊娠・出産時の骨盤底筋群の損傷、加齢による筋肉量減少、肥満、便秘、喫煙、慢性の咳、重いものを持ち上げる仕事などの生活習慣も関係します」と中村綾子先生。
骨盤底の機能の低下によるGSMは、自然には治りません。GSMによる尿もれ、頻尿、膀胱炎などの症状は、ケアをしなければ、トラブルはどんどん進行します。しかし、ケアや治療をすれば、改善する病気になりました。
「腟ミラジェット」は一歩進んだ選択肢
「従来、女性泌尿器科で行われている腟の乾燥、緩みによる尿もれ、頻尿、繰り返す膀胱炎などのGSMに対する腟治療はおもに次の4種類でした。
①軟膏やクリームによる保湿治療
②ホルモン補充などの薬物治療。
③腟レーザー、腟高周波(美容皮膚科で行う顔へのレーザーや高周波を腟に行う治療)などの腟デバイス治療。
④薬液を腟内に注入する腟注入法でヒアルロン酸注入やPRP療法(多血小板血漿療法)など。
ここにさらに一歩進んだ新しい「腟ミラジェット」という腟治療が登場しました」(中村先生)
腟の乾燥、ヒリつき、性交痛、 不快感に悩む女性に
現在も使われている従来の腟レーザーは、光熱反応を利用しているものが一般的です。
「しかし、腟ミラジェットは、レーザー照射によって発生した衝撃波によって、機器先端の薬剤をマイクロジェット化し、超高速のジェット流が薬剤を腟粘膜下の組織に注入するもので、新しいテクノロジーによる治療です」と中村先生。
ミラジェットが注入する薬剤は、ヒアルロン酸、幹細胞培養上清液、アミノ酸、プラセンタなどで、その人の症状に合わせて選択可能です。治療時間は約15~20分で、最初は2~4週おきに2~3回、その後は半年~1年ごとのメンテナンスで効果を維持できます。痛みやダウンタイムはほとんどなく、腫れ感が2~3日残る程度。当日はシャワーのみOKで1週間は性交渉とタンポンを控えます。
今後、行える医療機関が増えていくことが想定されています。同クリニックでは、薬剤にヒアルロン酸を注入した場合が約8万円。そのほかの薬剤を追加する場合の薬液代は5千円~1万円程度。自由診療のため医療機関によって費用は異なります。現在は、日本と韓国で行われている医療で、今後はヨーロッパなどにも普及していく見通しです。現状では腟の乾燥、ヒリつき、性交痛などのGSMや外陰部のホワイトニング治療に用いられています。
「腟をうるおわせ、ふっくらさせたい人、従来のホルモン療法やレーザー治療などで効果が感じられなかった人、注射やレーザー治療が苦手な人には、おすすめ。治療の選択肢が広がります」(中村先生)
メスを使わない腟治療!腟スレッド治療も登場
「世界で初めて*腟ミラジェットを用いた腟治療を臨床倫理委員会の審査を通過し、臨床試験を開始したのが当院です。泌尿器科は受診しづらいという女性が多く、尿もれや頻尿などは一人で悩まれていることが多い印象をうけます。女性泌尿器科医として日々研鑽を積んで、そんな女性たちの役に立てたらと思っています。そんな思いから、もうひとつ「腟スレッド」という治療を国内で初めて導入し始めました」(中村先生)
腟スレッド治療は、顔に使うのと同様の溶ける糸を腟壁の層に入れて、組織の物理的な支えとコラーゲン新生を狙った治療です。熱ダメージを与えず、メスも使わないため、レーザー治療と外科手術の中間に位置します。GSMや腟のゆるみ改善目的だけでなく、尿もれ症状の治療にも応用されるようになっています。
「腟スレッド治療も臨床倫理委員会による正式承認を取得。臨床研究を開始しています。腟治療やフェムゾーンケアは、今後ますます重要になっていきます。腟ミラジェットも腟スレッドも、医学的根拠を積み重ねることで、多くの女性が自信をもって選べる選択肢になればと思って実践しています。悩んでいる方はぜひ」(中村先生)
*女性医療クリニックLUNA調べ(2025年6月時点、腟ミラジェットを用いた臨床倫理委員会承認済の臨床試験として)
お話を伺ったのは…中村綾子 先生
(女性医療クリニックLUNAネクストステージ 院長、女性泌尿器科医)
2007年横浜市立大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター臨床研修医を経て、横浜市立大学泌尿器病態学に入局。みなと赤十字病院、横浜市立大学附属病院ほかを経て、2013年女性医療クリニックLUNAで泌尿器科外来を開始。2017年LUNA骨盤底トータルサポートクリニック院長就任、2019年移転に伴い女性医療クリニックLUNAネクストステージ院長に就任。日本泌尿器科学会認定専門医。日本女性骨盤底医学会認定専門医。国際フェムテック医療美容研究会理事。Instagram X
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