NHKドラマでも話題!30代~60代女性に圧倒的に多い「膠原病」こんな症状は要注意!専門医に聞く


“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 NHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』が話題になっています。主人公は膠原病(こうげんびょう)を患う女性。膠原病というと「難病?」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、今は治療法が進歩し、適切な治療で病気が落ち着いた状態になる人もたくさんいます。30代~60代の女性に圧倒的に多く発症しやすい病気。どんな症状なのか? 早期発見につながる症状の見極め方をお伝えします。
関節リウマチや全身性エリテマトーデスも膠原病
膠原病は、皮膚、骨、血管、内臓などを形成するタンパク質の一種に炎症や変化が生じることによって、全身のさまざまな臓器に病変を引き起こす病気の総称です。
「現在では、30以上の病気が膠原病に含まれていて、もっとも患者数が多いのは、関節リウマチです。ほかに、全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群などさまざまな病気があげられます。膠原病のうち、どの病気かによって皮膚や筋肉、各臓器などに現れる特徴的な症状が異なります。膠原病の共通症状としては、痛みやこわばり、発熱、倦怠感などの全身症状があります。膠原病はよく氷山に例えて説明されます。氷山は、海面上ではいくつもの異なる山に見えますね。しかし水面下では繋がり合ったひとつの巨大な氷の塊です。膠原病も同じ。一つひとつの病気は異なるように見えますが、実は病因が共通するひとつの病気ではないかと考えられているのです」と平松ゆり先生。
更年期世代に発症する膠原病も多い!
女性に多いのは、なぜなのでしょうか?
「膠原病の特徴のひとつに、月経がある世代の女性に発病しやすいと言われています。膠原病と女性ホルモンの間には何か関係がありそうですが、今のところ、その因果関係についてはっきりとは解明されていません。けれども、女性ホルモンには、抗体や免疫反応を高めるサイトカインなどの物質をつくりやすくする作用がありますので、いったん異常な免疫反応が起きはじめると、これを強めてしまう方向に働くのではないかと考えられています」(平松先生)
発病する年齢は、膠原病の病気の種類によってさまざまですが、いちばん多い「関節リウマチ」では、30代~60代の発症が多いことが知られています。近年ではより高齢での発症も報告されています。また「全身性エリテマトーデス(SLE)」という膠原病は、20代~40代の妊娠可能年齢で発症しやすい年齢。もうひとつ女性に多い、ドライアイやドライマウスを伴う「シェーグレン症候群」という膠原病は、40代~60代の更年期世代に発症する人が多くなります。
「月経のある世代や女性ホルモンが大きく揺れ動く更年期世代の女性が発症しやすいことから考えても、女性ホルモンとの関係が何かあるかなと思えますね」(平松先生)

こんな症状なら要注意! 病院へ
更年期世代に多いと聞くと、最初に現れやすい症状には、どのようなものがあるのかが気になります。
「膠原病にはいくつもの病気の種類があるので、それぞれ症状の特徴は違うのですが、発症時に多いのは発熱です。微熱(37℃台)から高熱(38℃台)まで、発熱の程度はさまざまです。それ以外には、関節のこわばり、腫れ、痛みなどがあります。関節リウマチで、特に顕著ですが、そのほかの膠原病でも現れることが多い症状です。風邪で発熱したときに起こる関節痛のような感じです。また、筋肉の痛みなどが現れる病気もあります。頭を持ち上げるのが大変とか、しゃがんで立ち上がるのが難しいといった症状を訴える方もいます」(平松先生)
膠原病は、微熱や関節痛・倦怠感といった症状から見つかることが多いと言われています。いつもと違う症状が起きて、なかなか改善しなかったら、病院を受診することが大切です。
「関節リウマチの場合は、朝起きたときの関節のこわばりが30分以上あり、これが1か月以上程度続いたら、受診のタイミングです。また、健康診断で見つかる方もいらっしゃいます。全身性エリテマトーデス(SLE)の場合は、尿検査で蛋白尿などが出たり、血液検査で赤血球、白血球、血小板、赤血球数、白血球数、血小板数などの異常が出て受診される方もいます」(平松先生)
いつもと違う症状があったら、放っておかずに受診して確かめることは大事。また、健康診断で何か異常値が出たら、症状をあまり感じていなくても、放っておかずにすぐに受診することは早期発見につながります。
「受診するのは、かかりつけ医に相談するのがいいと思いますが、かかりつけ医がいない場合は、まず総合内科がいいかもしれません。その後、必要ならリウマチ科、膠原病内科など専門の診療科を紹介してくれると思います」(平松先生)
膠原病を診てくれる専門医は『一般社団法人日本リウマチ学会』ホームページから全国の地域ごとに探せます。
なぜ膠原病にかかるの? 原因は?
膠原病の原因が気になります。何が原因で膠原病を発症するのでしょうか?
「膠原病を発症する原因は、免疫の異常にあると考えられています。私たちの体には、細菌やウイルスのような異物を排除し、自分を守るための免疫という機能が備わっています。一方で、自分の体を異物のように誤って認識し、排除しようとする免疫の暴走を“自己免疫”と呼びます。膠原病の患者さんの体の中には、自分の体を攻撃する細胞(自己反応性リンパ球)やタンパク質(自己抗体)が存在し、これらが皮膚や筋肉、関節、内臓、血管などの細胞を攻撃して炎症をひき起こすと考えられているのです」(平松先生)
自己免疫によって自分の体を攻撃してしまうのは、どういう人なのでしょうか?
「まだわかっていないことが多いのですが、ひとつの原因として親から受け継ぐ体質と言われています。つまり遺伝的な素因が関係しているのではないかと考えられています。母、祖母などの血縁に膠原病の方がいらっしゃる場合は、リスクが少し上がるかもしれません。けれども、遺伝的な素因だけが原因ではありません。もともと持って生まれた遺伝的な体質に、なんらかのきっかけが加わることで、異常な免疫反応が起こり始めるのではないかと言われています。なんらかのきっかけになる環境因子にはいろいろありますが、ストレスや寒冷刺激、外傷や外科手術、妊娠・出産、薬物、紫外線、美容整形(シリコン埋入)などのほか、感染症、喫煙、歯周病などが誘因となることも言われ始めています」(平松先生)
どんな人がかかりやすい? 予防する方法は?
膠原病のリスクが高い人はどんな人なのでしょうか?
「血縁のご家族に、膠原病の方がいらっしゃる場合は、ハイリスクと考えて気をつけた方がいいかもしれません。発熱や関節痛の症状が3週間以上続いたら、受診してください。それから、禁煙、大きなストレスを避ける、歯周病を治療するといったことも大切です。また、家族に全身性エリテマトーデス(SLE)の方がいらっしゃる場合は、日光浴を控えて紫外線対策をしましょう。SLEの方は日光過敏で、太陽を浴びると赤くなることが多いので、南の島に行くときには気をつけてください。ハワイや沖縄での紫外線刺激などでSLEが発症・再燃する方の話もたまに聞きます」(平松先生)
新型コロナやインフルエンザ対策に、免疫力を上げることの大切さが言われていました。膠原病は自己免疫疾患だとすると、免疫力は上げないほうがいいの? 免疫が上がることで発症することはないのですか?
「自分で自分の体を守る免疫力は、ぜひ上げてください。免疫力を上げるために、運動をしたり、体を温めたり、腸内環境を整える、などのバランスのとれた食事を摂ることはとても大切です。自己免疫疾患の膠原病と診断された方にとっても、免疫力を上げるのはいいことです。主治医の先生に相談されながら、規則正しい生活を心がけて下さい」(平松先生)

近年は、研究の進展にともなって、膠原病がさらに解明され、治療方法の開発も進んでいると言われています。ひと昔前の一生治らない病気ではなくなりつつあります。
「主治医と相談しながら、一人ひとりの患者さんが、自分の病気の状態やライフステージ、ライフプランに合った適切な治療を受けることができるようになりました。多々注意するべき事項はあるものの、多くの患者さんが健康なときと同じような日常生活が送れるようになり、病気が落ち着いて寛解(かんかい)という状態で過ごされている方もたくさんいます。以前は敬遠されていましたが、この10年ほどで病気を持ちながらでも治療と併用しながらの妊娠・出産も可能になってきました。もし気になる症状があったら怖がらずに、病院を受診してください」(平松先生)
お話を伺ったのは…平松ゆり(ひらまつゆり)先生
大阪医科薬科大学病院リウマチ膠原病内科 母性内科外来
2009年関西医科大学医学部卒業。大阪医科大学リウマチ膠原病内科入局。大阪医科大学大学院医学研究科博士課程修了。2018年より大阪医科大学リウマチ膠原病内科助教(現・大阪医科薬科大学)。2013年より同大学病院で膠原病疾患女性の妊娠をサポートする母性内科外来を開設、担当(現在非常勤勤務)。日本内科学会認定医、日本リウマチ学会専門医・指導医・評議員、日本女性医学会女性ヘルスケア専門医、日本母性内科学会診療プロバイダー。
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