これまでと同じ食事・運動だと閉経後、血糖値が上がる!?【専門医が教える血糖値を下げる方法】

 これまでと同じ食事・運動だと閉経後、血糖値が上がる!?【専門医が教える血糖値を下げる方法】
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増田美加
増田美加
2025-03-29

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。今まで通り気をつけているのに、閉経してから血糖値が徐々に上がって下がっていかない、と悩んでいる人は多いと思います。食事と運動の気をつけ方に落とし穴があるのかも。糖尿病の専門医に、血糖値を下げる方法を聞きました。

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更年期以降、血糖値が上がりやすいのはなぜ?

エストロゲンのバリアが解け、血糖値が上がりやすくなる更年期以降は、血糖値が高いと太い血管を壊して動脈硬化、さらに脳卒中や心筋梗塞を引き起こす原因になりますから怖いですね。毛細血管も傷害され、目の網膜や腎臓、神経にも影響を及ぼします。

日本人の約1000万人が「糖尿病が強く疑われる人」でさらに約1000万人が「糖尿病の可能性を否定できない人」と言われています。糖尿病予備軍は、日本の人口の15%を超える推定がされています*1。糖尿病はもっとも警戒したい病気のひとつです。

*1 国民健康・栄養調査 糖尿病実態調査(2022年)

更年期以降、なぜ血糖値は上りやすいのでしょうか? 

「更年期には女性ホルモンのエストロゲンが減少します。エストロゲンには、血糖を下げるインスリンの働きを助ける作用がありますが、エストロゲンが減少することで、インスリンの働きが低下するため、血糖が上がりやすく糖尿病になりやすいのです。インスリンが低下する原因は、生活環境やストレスもありますが、遺伝的なリスクも大きいです。太っていなくても、祖父母や親に糖尿病があれば、発症確率が高いので、早くから以下の生活習慣をチェックして早めに改善することが大切です」と山内晃先生。

【糖尿病リスクの生活習慣をチェック】

  太り気味(最近5kg以上太った)
  野菜や海草、キノコ類があまり食べない
  お酒をよく飲む
  おやつやデザート、清涼飲料水を摂る
  定期的な運動をしていない
  脂っこいもの、コクのあるものが好き
  ゆっくり休めない
  ストレスがたまっている
  食事時間が不規則(夕食が遅い、朝食べない)
  煙草を吸う
  妊娠中に血糖値が高いと言われた
  3人以上出産している
  4000g以上の赤ちゃんを出産した
  膀胱炎や腟カンジダ症などを繰り返している 
  40歳以上で血縁に糖尿病の人がいる
  高血圧、あるいは脂質異常症、あるいはメタボである

これらのチェック数が5個以上だと、「糖尿病要注意」です。生活習慣を見直しましょう。10個以上では、糖尿病の可能性(肥満、高血圧も含む)が高く、危険です。糖尿病の専門病院で検査をしてください。

体重計
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黄色信号の段階では無症状。放っておかずに専門医の受診を

健康診断の結果で、血糖値やHbA1c値はどう見ればいいのでしょうか? 黄色信号、赤信号の値を教えてください。「空腹時血糖値が110~125、もしくはHbA1c値が5.9~6.4だと、境界型糖尿病(糖尿病予備軍)の可能性が高く、黄色信号です。放っておかずに専門医への受診を勧めます。空腹時に血糖値126以上、もしくはHbA1c値が6.5以上になると、赤信号で、糖尿病です。速やかに受診してください。また、昨年との比較は大事です。HbA1c値が5.9でも急激に上昇していれば、すぐ受診したほうがいいです」(山内先生)

糖尿病は進行すると喉が渇く、トイレが近くなるなどの症状が出てきますが、“境界型糖尿病”の段階では無症状です。予備軍のままが一生続く人もいますが、受診せずにいると2~3割が糖尿病になります。

【糖尿病の診断基準】

空腹時血糖:126mg/dl以上
随時血糖値:200mg/dl以上
75g経口糖負荷試験2時間値:200mg/dl以上
HbA1c:6.5%以上

*「日本糖尿病学会」糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告 (国際標準化対応版)

食べる順番&食後の運動、低GI食を選ぶ

「多くの女性が閉経を境に、血糖値は上昇し、糖尿病のリスクが高まります。閉経後、血糖値を上げない生活習慣(食事、運動ほか)は、まず“これまでと同じ食生活を見直す”必要があります。閉経後と言わず更年期になったら、食事と運動で、できることから今までの生活習慣を見直していきましょう。血糖値を上げないための食事と運動の特に大切な3項目を紹介します」(山内先生)

1 食べる順番が大事。最初に、食物繊維を多く含む野菜や海藻類からゆっくり食べる。次に、魚や肉などのタンパク質。最後に、炭水化物を摂ることで急激な血糖値上昇を抑えます。

2 食後に20~30分の散歩やインターバル歩行(早めとゆっくり歩行を交互に数分間ずつ)をして、血糖値上昇を緩やかにします。

3 低GI食品を選ぶ。GI値(グリセミックインデックス)が高い食品ほど、食後血糖値が高くなります。そばや肉、魚、ヨーグルトなどの乳製品、野菜ではほうれん草やブロッコリーなどはGI値が低い食品。これらを積極的に摂りましょう。

低GIイメージ
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「○○ダイエット」は危険です!

極端に単一の食材を増やすと、栄養バランスの過不足が生じ、必要な栄養素が足りなくなる可能性があります。

「極端な食事は長続きしません。一生続けられる食習慣が大事です。

“〇〇ダイエット”のうち、特に、“糖質(炭水化物)制限ダイエット”は、その人のタイプ、体質によって向き・不向きがあります。炭水化物を抜くことで、食事のバランスが崩れ、かえって脂質、塩分が高くなり、コレステロール、中性脂肪、血圧が上がりやすくなります。糖質制限は、長期的なエビデンスも不足しています。糖質制限を持続できず、当初は減少していた体重がリバウンドする例もあります。栄養のバランスが崩れるために起こる弊害に注意が必要です。糖質制限には、ほかにも以下のようなリスクがあります」(山内先生)

1 塩分過多 (おかずが増えると塩分摂取量が増える)
2 脂肪過多 (糖質が減った分、脂肪摂取量が増える)
3 ビタミンD不足 (骨粗鬆症、発がんリスク上昇)
4 カルシウム不足 (骨粗鬆症、高血圧、動脈硬化リスク上昇)
5 マグネシウム不足 (糖尿病リスク上昇)
6 亜鉛不足 (味覚異常、糖尿病リスク上昇)

間食を減らす、油ものを減らす、3食きちんと食べる、夜遅い時間の飲食を避けるが重要。「特に効果的なのは、レコーディングダイエットです。1日の食事と間食を手帳に記録して振り返るだけで、自分で食習慣を見直せるようになります。ストレスを避けることも重要。喫煙は、心筋梗塞のリスクを高くします。また、上腕後部に装着して、血糖変動を測定し、スマートフォンなどで見える化する『フリースタイルリブレ』などを利用してもいいでしょう。インスリン治療をしている人には保険が適用されます」(山内先生)

レコーディングダイエット
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最近話題の糖尿病治療薬とは

生活習慣を改善してもダメなら薬で治療します。最近話題の糖尿病治療薬には、SGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬があります。

「糖尿病の数値がよくなり、体重を減らす効果も認められ、心臓病や腎臓病などの合併症も減ります。しかし、副作用もあり、専門医から処方してもらうことが重要です。

注意しなければならないのは、美容クリニックで減量目的のために使われていることです。糖尿病の患者さん以外に使用した場合の効果や安全性は確認されておらず、重大な健康被害につながる可能性も指摘されています。糖尿病学会からも注意喚起が出されていますのでくれぐれも注意してください」(山内先生)

お話を伺ったのは…山内 晃(やまうちあきら) 先生

医療法人社団梨慶会 山内クリニック、するがクリニック 理事長
医学博士。山梨大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部内科勤務、静岡市立清水病院内科、慶応義塾大学病院腎臓・内分泌代謝内科助手、静岡市立清水病院内科医長を経て現職。日本糖尿病学会専門医・指導医、総合内科専門医、慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科。

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