二の腕や太もものブツブツ、ザラザラの正体「毛孔性苔癬」とは?どう治す?【美容皮膚科医に聞く】


“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 二の腕や太もも、背中に現れる「毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)」。肌がブツブツ、ザラザラとした質感になり、見た目も気になります。半袖やノースリーブに躊躇してしまう悩みです。セルフケアの方法と皮膚科での治療を取材しました。半袖の季節が来る前に対策を知っておきましょう。
二の腕や背中の気になるブツブツ、ザラザラ
「二の腕、太もも、背中などにできる、ブツブツ、ザラザラの正体は、「毛孔性苔癬」という皮膚疾患の可能性が高いです。毛孔性苔癬は、毛穴に古い角質が蓄積し、毛穴が部分的に肥厚して、硬く盛り上がる皮膚疾患。一部では、赤みや茶褐色の色素沈着が見られることもあります。かゆみなどの症状はほとんどなく、放置しても、健康上重大な問題を引き起こすことはありません」と山屋雅美先生。
毛孔性苔癬の根本原因は、まだ完全には解明されていませんが、遺伝やアトピー性皮膚炎、尋常性魚鱗癬、肥満などが関与している可能性があると考えられています。毛孔性苔癬は、子どもから20歳前後までの若い人に発生しやすい傾向があります。しかし、年齢を重ねるにつれて、自然に軽快する人も多いそう。ただし、なかには40代、50代になっても症状が残る人もいて、長い間悩んでいる人もいます。
「発症するタイミングや症状の重さには個人差が大きいため、特定の年齢だけに限定されるものではありません」(山屋先生)
毛孔性苔癬の正しいセルフケアの方法は?
「セルフケアでは根本的な改善が難しい皮膚疾患ですが、症状の悪化を防ぐことは、期待できます。ポイントは、優しく洗う、保湿をする、角質ケアをする、この3つです」(山屋先生)
優しく洗う
毛孔性苔癬は患部を擦ると悪化するので、タオルやブラシで体を洗うことを避けて、手で優しく洗うようにしましょう。ブツブツを取りたいからと、スクラブで擦るのは逆効果です。スクラブの使用は、避けましょう。

保湿をする
毛孔性苔癬は、乾燥すると症状が悪化しやすいため、毎日の保湿が重要です。尿素、セラミド、乳酸が配合された保湿クリームやローションを使用し、保湿を行いましょう。
角質ケアを取り入れる
角質ケアを取り入れることでターンオーバーを促進し、肌の状態を改善する助けになることがあります。ただし、方法を間違えると、肌を傷つけて症状を悪化させる可能性があるため、正しいケアが重要です。
気にして擦ったり引っ掻いたりしないことが大事
放っておけば治るとのことですが、どのくらいで治るのでしょうか? 悪化してひどくなったり、ほかの病気を誘発することがあると心配です。
「毛孔性苔癬は、時間も経過とともに自然に症状が軽快することが多い、良性の皮膚疾患です。先ほどもお話しましたが、特に10代から20代前半に発症しやすいのですが、年齢を重ねるにつれて目立たなくなる場合が一般的です。ただし、完全に治るまでには個人差があり、数年程度で改善する人もいれば、症状が長引く場合もあります。毛孔性苔癬は、健康に大きな影響を与えるものではなく、他人に感染することもありません。気にならなければ治療する必要はありません。
しかし、目立つ症状を気にして、強く擦ったり引っ掻いたりすると、皮膚が硬くなったり赤みが増したりして、症状が悪化する可能性があります。場合によっては、炎症が起きることもあるため、肌を刺激しないよう優しくケアすることがとても大切です。まれに、薬の副作用などで出現することもあります」と山屋先生。
皮膚科の外用薬で治らない場合は…
なかなか改善せず、気になるようなら皮膚科を受診して相談するのも手です。保険診療でできる治療もあります。
「毛孔性苔癬に対する皮膚科での保険診療では、尿素入りのクリームやサルチル酸ワセリンなどの外用薬がよく処方されます。これらの外用薬は、角質を柔らかくし、ターンオーバーを促進する効果があります。しかし、毛孔性苔癬は根本的な治療が難しく、症状が軽減するまでに時間がかかることがあります。個人差があり、場合によっては外用薬のみでは十分な改善が見られないこともあります」(山屋先生)
皮膚科の外用薬では完全しない場合、美容皮膚科で、できることはどんな治療でしょうか?
「毛孔性苔癬の治療は、真皮から皮膚を再生させる「ダーマペン4」というマシンと、角質の溶解、剥離作用とコラーゲン活性の相乗効果を持つ「ピーリング剤」とを組み合わせる治療があります。肌の深くから表層までの皮膚を生まれ変わらせて、毛孔性苔癬を改善する治療です。この2つの治療を組み合わせることで、皮膚表面に溜まった、古い角質を除去することでターンオーバーを促し、毛穴に硬くつまった角質が排出されます。ざらつきが解消されるだけでなく、肌のハリに必要なコラーゲン生成も促されるため、複数回、施術を繰り返すことで、ざらつきのない、なめらかな肌への改善を目指す治療です。

ブツブツを治してなめらかな肌になりたい人、皮膚科で外用剤を使用したが症状が改善されない人、二の腕のブツブツが気になってノースリーブを着られないと悩んでいる人、ブツブツとともに赤みや色素沈着も改善したい人には、おすすめしている治療です」(山屋先生)
お話を伺ったのは…山屋雅美(やまやまさみ) 先生

美容皮膚科タカミクリニック 副院長 https://takamiclinic.or.jp
埼玉医科大学卒業後、東邦大学医療センター大橋病院皮膚科、三井記念病院皮膚科ほかで勤務。2011年タカミクリニックに勤務開始。2021年より現職。ニキビ・毛穴など美肌治療から、シミ・しわ・たるみなどのエイジングケア治療まで、全診療の監修を行う。日本皮膚科学会、日本抗加齢医学会、日本小児皮膚科学会、日本美容皮膚科学会。
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