【かゆみ、尿もれ、性交痛…】今、注目の「GSMケア」とは?フェムケアの専門医師からアドバイス

 【かゆみ、尿もれ、性交痛…】今、注目の「GSMケア」とは?フェムケアの専門医師からアドバイス
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増田美加
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2024-01-27

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 フェムゾーン(デリケートゾーン)のかゆみ、尿もれ、セックス時の痛みがあれば、GSM(閉経関連尿路性器候群)の可能性があります。GSMは、更年期以降の女性の人生に大きく影響します。どんなケアをいつから始めておけばいいのか、フェムケアの専門家である女性泌尿器科医、関口由紀先生を取材しました。

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2人に1人が悩む女性ホルモンの低下によって起こるGSM

GSM*(閉経関連尿路性器症候群)とは、閉経後、女性ホルモンのエストロゲンの低下にともなって、外陰部や腟の粘膜や皮下組織が萎縮したり、脆弱化したりして、泌尿器や性器症状が顕著に起こる病気のことです。

*GSM=Genitourinary syndrome of menopause

「GSMの症状は、外陰部や腟の乾燥、灼熱感、かゆみ、尿もれ、頻尿、繰り返す膀胱炎、性交痛など多岐に渡ります。女性の2人に1人がこれらの症状に悩んでいると言われています。GSMのトラブルは自然には治りません。放っておくと、ゆっくりと、確実に進んでいきます」と関口由紀先生。

頻尿や尿もれなどの尿トラブルは、エストロゲンの分泌が低下する更年期以降に増加し、40歳以上のなんと約4割の女性が悩んでいると言われているのです。

「尿トラブルの大きな原因のひとつは、骨盤底の機能の低下です。骨盤底は、恥骨から尾骨に広がるひし形のプレート状の臓器で、骨盤底筋群、筋膜、靭帯、皮下組織、粘膜などで構成されています」と関口由紀先生。

骨盤底には、骨盤内の臓器である膀胱や子宮、直腸を支える役割があります。また、排泄コントロールも骨盤底の役割です。便意や尿意があると、骨盤底筋群がゆるみ、排泄します。ところが、過剰な負荷がかかり、締める筋力が低下すると、頻尿、尿もれなどの尿トラブルを起こすのです。

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「また、頻尿、尿もれのほかにも外陰部や腟の乾燥、性交痛などがあれば、GSM(閉経関連尿路性器症候群)かもしれません」(関口先生)

子宮や膀胱が腟から出て来てしまう恐れも!

さらに、骨盤底の機能低下が進む70代以降に増加するのが骨盤臓器脱です。骨盤臓器脱は、子宮や膀胱、直腸、尿道などの臓器が下がり、腟から出てきてしまう病気。腟がつられて裏返ってしまうこともあります。

「尿もれ、骨盤臓器脱などのリスクが高い人は、遺伝的な骨盤底の筋肉や靭帯の弱さがあります。ほかにも、妊娠、出産による骨盤底筋群の損傷、加齢による筋肉量の減少、肥満、便秘、喫煙、慢性の咳、重いものを持ち上げる仕事などの生活習慣も関係します。骨盤底の機能低下は、自然には治りません。ケアをしなければ、トラブルはどんどん進行するのです」(関口先生)。

頻尿、尿もれ、GSMは、自然に治ることはなく、放置して、骨盤臓器脱と合併すると、症状はさらに悪化していきます。今は、症状の程度にあわせて治療法が選べます。婦人科や女性泌尿器科で相談しましょう。

フェムケアは骨盤底トレーニング、インナーマッスルの筋トレも大事

「軽い尿もれや頻尿なら薬を使わず、腟をゆっくり内側に引き込む骨盤底筋トレーニングが有効です。これにより、70%は改善するというエビデンスがあります。呼吸法を加えた骨盤底筋トレーニングは、尿トラブル改善だけでなく、おなか周りの筋肉を使うので、姿勢もよくなり、余分な脂肪もとれます」と関口先生。

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これと併せて、インナーコアマッスルや下半身の筋トレ(スクワットやランジ)も効果的です。また、尿を溜められるようにする膀胱訓練も大切です。トイレは我慢しない方がいいと思っている人がいますが、我慢して尿を溜められる膀胱にすることも大切です。1日4~8回の排尿で済むように、少しずつ我慢して間隔があけられるようにします。

「特に、腟の乾燥、萎縮や性交痛のあるGSMには、腟や外陰部の保湿が大切です。専用オイルで腟と外陰部のマッサージと保湿をすることも有効です。人差し指の第2関節くらいまでを腟に入れ、入り口周囲をグルっとやさしくマッサージします。使用するオイルは、全身に使えるボディ用のもので大丈夫です。閉経前のフェムゾーンは丈夫なのです。それでヒリヒリする人やGSMの人は、敏感になっているので専用のものを使います。当クリニックでは、性ホルモン様抗酸化物質を含有した美容液と、皮下組織のコラーゲン量を保つエストラジオールを配合したオイルを併用して使ってもらっています」(関口先生)

クリニックでは性ホルモン治療、CO2レーザーを使った治療も

「女性泌尿器科や婦人科のクリニックで行う治療では、健康保険が使える腟錠やホルモン補充療法(HRT)もありますが、期待する効果が得られない人もいます。そこで、骨盤底筋群やじん帯の脆弱化による尿もれには、微量の男性ホルモンクリームを使う治療も行われています。皮膚や粘膜の乾燥や萎縮による症状には、弱い女性ホルモンクリームを処方することがあります。また、当クリニックでは、頻尿・尿モレ、腟や外陰部の乾燥、萎縮、性交痛対策に、外陰部と腟へハイフ・エルビウムヤグレーザースムースモード・フラクショナルCO2レーザー等を使い分けて照射する治療も行っています」(関口先生)

この領域の治療は、格段に進歩しています。新しい薬や治療法ができ、種類も増えました。躊躇せず、フェムゾーンのケアを今から始めていきましょう。

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お話を伺ったのは…関口由紀(せきぐちゆき)先生

女性医療クリニックLUNAグループ理事長 www.luna-clinic.jp(株)フェムゾーンラボ社長 www.femzonelab.com
一般社団法人日本フェムテック協会代表理事。横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学終了。医学博士。現在、横浜市立大学医学部泌尿器科客員教授として女性泌尿器外来を担当。日本泌尿器科学会専門医・指導医。著書に『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期』(産業編集センター)ほか多数。

一般社団法人日本フェムテック協会では、2月19日をフェムテックの日と記念日登録。「ジャパンフェムテックサミット2024」を2024年2月19日(オンライン)と2月27日(リアルとオンライン)の両日、開催します。

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ジャパンフェムテックサミット2024

【詳細、申し込みはこちらから】https://j-femtech.com/japanfemtechsummit2024/

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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