9人に1人がかかる乳がんを早期発見するために。専門医がすすめるセルフチェックと運動習慣

9人に1人がかかる乳がんを早期発見するために。専門医がすすめるセルフチェックと運動習慣
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増田美加
増田美加
2025-09-20

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。いま、乳がんは9人に1人がかかるがんです。乳がんは働き盛りの若い世代にも多く発症します。ピンクリボン強化月間の10月を前に、乳がん予防に効果がある方法について乳腺専門医に聞きました。

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乳がんは早期発見できるがんです

日本では毎年、約10万人の女性が乳がんにかかっています。乳がんは他のがんと比べて若い世代にも多く発症し、ピークは40代から60代です。乳腺専門医の島田先生は次のように語ります。

「乳がんは、早期発見が何より大切です。早期発見なら比較的治りやすく、5年相対生存率は約92%と高く、早期乳がんなら約98%が治ります。早期に発見して早く治療につなげることで、乳がんは“治る”がんになっています。」

毎年約9万人の乳がんが発見されますが、そのうち0期〜1期で発見された人が5万人を超えています。乳房は手で触れたり鏡で見ることができるため、日常のセルフチェックと適切な検診が早期発見につながります。

乳がんを早く見つけるコツ(ブレスト・アウェアネス)

まず、自分の乳房の普段の状態を知っておくことが大切です。ブレスト・アウェアネス(Breast Awareness)とは、乳房に日頃から関心を持ち、状態に気づく習慣のことです。知識を身につけ、変化を感じたら迷わず受診してください。

【ブレスト・アウェアネスのポイント】

  • ① 日ごろから見て、触って、感じること(セルフチェック)。
  • ② 乳房の変化に気づくこと。
  • ③ 変化を感じたら検診を待たずに受診すること。
  • ④ 症状がなくても、40歳からは2年に1回はマンモグラフィ検診を受けることを推奨。
乳がん
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乳房チェックの仕方(実践)

お風呂で体を洗うときやボディクリームを塗るときなど、毎日行う習慣の中でセルフチェックを取り入れるのがおすすめです。

鏡の前で見るポイント

  • 左右差はないか。
  • 皮膚の色に変化はないか(赤みやただれなど)。
  • 皮膚のくぼみやへこみ、毛穴が目立つ箇所はないか。
  • 乳首をつまんで分泌液が出ないか。

入浴時に触るポイント

  • 石鹸で洗うときやクリームを塗るときにまんべんなく触る。
  • 痛みや違和感がないか確認する。
  • 鎖骨〜わきの下〜背中の方向まで触る。
  • 乳房の下の輪郭まで丁寧に触れる。
  • 基本は「の」の字。4本指を揃えてクルクルと連続して動かす。

参考資料:『ブレストケアノート』島田菜穂子著(日本家族計画協会発行)

運動は乳がん発症リスクを下げる!

乳がんは早期発見だけでなく、日常の生活習慣で予防できる点もあります。ピンクリボン運動でウオーク&ランのイベントが多く開催されるのは、運動が乳がん予防に寄与することが示されているためです。

最新の乳癌診療ガイドラインでは、閉経後女性に対して「運動が乳がん発症リスクを減少させることはほぼ確実」とされ、閉経前女性でも高強度の運動によりリスク低下の可能性が示されています。また、乳がん診断後も身体活動を高く維持することが強く推奨されています。

週2時間のウォーキングが目安

運動量の指標としては「週7メッツ(METs)」程度が推奨されています。メッツ(METs)は安静時に対する運動時の消費エネルギーの比です。目安として:

  • ウォーキング:1時間あたり3〜5メッツ
  • 水泳:1時間あたり4〜8メッツ
  • ジョギング:1時間あたり7〜12メッツ

週に合計で7メッツを目標にすると、ウォーキングであれば週に約2時間が目安となります。

*METs=metabolic equivalents(代謝当量)

乳がん予防に加え、更年期症状の改善にも

更年期の女性が運動習慣を持つメリットは多岐にわたります。主な点は以下の通りです:

  • 乳がんの発症や再発予防。
  • 抑うつや不眠、代謝低下に伴う肥満・脂質異常症・高血圧・骨粗しょう症・心血管障害・GSM(閉経関連尿路性器症候群)の予防や軽減。
  • サルコペニアやフレイルの予防。
  • ヘルスリテラシー向上による検診受診率の向上や病気の早期発見につながる効果。

身体活動量が多い人ほど、がん全体の発生リスクが低くなるという報告もあります。ピンクリボンウオークをきっかけに、日常的に体を動かす習慣をつくりましょう。

ウォーキング
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欧米ではピンクリボン運動で死亡数が減少

乳がんは早期発見すれば治癒の可能性が高い病気です。欧米では1980年代からの啓発活動と検診普及により乳がんによる死亡が減少しました。ピンクリボンウオークはその象徴的な運動です。

日本でもピンクリボン運動を通じて、乳房を意識する生活と検診受診、そして運動習慣の定着を図り、乳がんによる死亡を減らしていきたいと島田先生は話します。

『ピンクリボンウオーク2025』について

スマホアプリで距離を計測し、全国どこからでも参加できるオンライン型ウオーク&ランイベントです。

実施期間:2025年9月23日〜11月2日。エントリー期間:2025年8月18日〜10月31日。

公式サイト:ピンクリボンウオーク2025

注意点

  • セルフチェックは重要ですが、セルフチェックだけで安心せず、定期的な検診(マンモグラフィ等)を受けてください。
  • 運動を始める際、既往症や心疾患などがある場合は事前に医師に相談してください。無理な高強度運動はかえって体調を崩すことがあります。
  • 乳房に明らかな変化(しこり・皮膚のひきつれ・分泌など)を感じたら、検診日を待たずに医療機関を受診してください。

NGな取り入れ方(やってはいけないこと)

  • 自己判断で検査や受診を避けること(症状がない=安心ではありません)。
  • 根拠のないサプリメントや療法に頼りすぎること。科学的根拠の乏しい方法に代えて、検診と生活習慣改善を優先してください。
  • 急に激しい運動を始めること。段階的に増やし、体調を見ながら継続することが大切です。

参考資料・リンク

本文は取材に基づく情報を掲載しています。検査や治療については、個別の状況により最適な判断が変わりますので、具体的な相談は専門医へご相談ください。

お話を伺ったのは…島田菜穂子(しまだ なおこ)先生

ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道 院長。NPO法人乳房健康研究会副理事長。1988年筑波大学医学専門学群卒。筑波大学付属病院などを経て、東京逓信病院放射線科で乳腺外来開設。1998〜1999年米国ワシントン大学留学。2002年日本初の乳がん啓発ランニング・ウオーキングイベントを開催。2008年より現職。

資格:放射線科診断専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、マンモグラフィ読影指導医、乳房超音波診断認定医、日本がん検診診断学会認定医、認定スポーツドクター、健康スポーツ医 ほか。

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