「大豆は乳がん発症リスクを上げる?」その誤解を科学が否定、むしろリスク低下に効果あり!
大豆は日本人の食生活に深く根付いており、豆腐や納豆、味噌など多様な形で日々の食事に取り入れられている。栄養面でも、大豆はタンパク質や食物繊維、ビタミンやミネラルが豊富で低カロリーなことから、世界的にも健康食品としても注目されている。一方、大豆に含まれる「フィトエストロゲン」ががんリスクに関連するのではないか?という懸念が一部で根強く残っている。特に女性が気になる乳がんリスクについて、大豆の影響はどのようなものなのか気になる人も多いはず。
大豆食品と乳がんリスクに関する誤解
日本の食生活において、大豆は味噌や豆腐など多様な食品として親しまれている。大豆にはタンパク質やビタミン、食物繊維が豊富に含まれ、健康に良いとされているが、「大豆に含まれるフィトエストロゲンが乳がんなどのホルモン系リスクを増加させる」という懸念も耳にする。特に乳がんリスクについては欧米で誤解が広まった。しかし、最新の研究により、大豆の摂取がむしろがんリスクを低下させる可能性が示唆されている。科学的根拠をもとに、どのような効果が期待できるのか見てみよう。
研究が示す大豆の乳がんリスク低下効果
近年の研究から、大豆を豊富に摂取することで乳がんリスクが低下する可能性が示されている。例えば、2010年に発表された「上海女性健康研究」では、上海在住の女性を対象にした調査の結果、大豆を多く摂取する女性は乳がんリスクが24%低いと報告されている。また、2020年の米国国立がん研究所(NCI)のメタ分析では、イソフラボンの摂取が乳がん再発リスクを21%低減することが示された。このメタ分析には8万5千人以上のデータが含まれており、複数の研究結果を統合して解析した結果、大豆の摂取とがんリスクの低下が関係していることが明確になった。
フィトエストロゲンの作用とがん予防のメカニズム
大豆に含まれるフィトエストロゲンは「植物性エストロゲン」とも呼ばれ、エストロゲンに似た化学構造を持っている。これにより体内のエストロゲン受容体に結合し、実際のエストロゲンの働きを弱める作用があると考えられている。国際がん研究機関(IARC)によると、イソフラボンのようなフィトエストロゲンがエストロゲン依存性のがん(乳がんを含む)のリスクを下げる可能性があるという。2012年の「アジア太平洋大豆研究プロジェクト」では、1日平均20 mg以上のイソフラボン摂取が、エストロゲン陽性の乳がんリスクを約15%低下させると結論づけられた。イソフラボンは受容体に結合し、過剰なエストロゲン活性を抑えることで乳がん予防に寄与すると考えられている。
乳がん再発リスクを減少させる
乳がんサバイバーにおいても、大豆摂取が再発リスクを減少させることが示されている。2017年に発表された「癌疫学・生物標識・予防誌」の研究では、大豆食品を摂取している乳がんサバイバーの再発リスクが13%低下するという結果が得られた。この研究は、特にアジアの乳がんサバイバーにおいて、イソフラボンの摂取が乳がん再発の予防に効果的であることを示唆している。さらに、BRCA1およびBRCA2遺伝子変異を持つ人でも、イソフラボン摂取により乳がんリスクが低下するというデータが報告されている。これらの遺伝子変異は乳がんリスクを高める要因として知られているが、大豆に含まれるフィトエストロゲンが予防効果を発揮する可能性がある点は注目に値する。
大豆食品を積極的に取り入れるためのヒント
日本の伝統的な食事に含まれる味噌汁や豆腐などの大豆食品は、無理なくフィトエストロゲンを取り入れる手段だ。特に納豆や豆乳もイソフラボンが豊富であり、日常生活で大豆を摂取するための優れた選択肢となる。また、最近では大豆を主成分とした植物性ミートも普及しており、さまざまな形で大豆を取り入れることができる。
出典:
Is soy safe for patients with breast cancer?
This Controversial Ingredient May Actually Help Decrease Breast Cancer Risk
AUTHOR
山口華恵
翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く