【唾液不足が原因?更年期から増える歯黄ばみ】歯科医師に聞く、ホワイトニングはどうすれば?
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。
年齢を重ねると気になる、歯の黄ばみとは?
年齢を重ねるごとに、歯の黄ばみが気になってきます。美白を目指して、肌のお手入れを一生懸命しても、笑ったときの前歯が黄色いと、かえって目立ってしまいます。更年期に、歯の黄ばみが気になるのは、どうしてなのでしょうか? 歯科医師でホワイトニングの日本の第一人者、石井さとこ先生に伺いました。
「歯が黄ばむ原因は、表面を覆うエナメル質とその内側の象牙質にあります。象牙質は、年齢とともに、黄みが増していきます。さらに、エナメル質も摩耗して、薄くなることで、象牙質の黄みが透けて見えるようになるのです」と石井さとこ先生。
エナメル質には、無数の細かいすき間があり、歯の表面を歯ブラシでゴシゴシこすると、エナメル質を傷つけ、黄ばみの原因につながります。
女性ホルモンの低下による唾液不足が歯黄ばみの原因!?
更年期以降、特に気になってきたのですが、その理由はありますか?
「更年期以降の女性は、エストロゲンの分泌が減少することで、唾液の量、質とも低下します。
まず、唾液の量が減ると、歯の表面が乾燥し、艶がなくなり、黄ばみやすくなります。さらに、唾液の質も変化します。唾液には、歯の再石灰化を促す作用があり、エナメル質にできた小さな傷や初期虫歯を修復するのですが、唾液が減ると、エナメル質の修復力も落ちてしまうのです」(石井先生)。
また、外的な要因もあります。エナメル質の表面に、飲食物の色素や煙草のヤニが徐々に付着し、目に見える着色となって現れます。特に、着色しやすい飲食物は、赤ワイン、紅茶、ウーロン茶、ココア、コーヒー、チョコレート、ブルーベリー、トマト、ブドウ、カレー、しょう油、ケチャップ、ソース、ほうれん草、ターメリックなどです。
「ほかにも、金属製の歯の詰め物やかぶせ物は、年を経て劣化、腐食が進みます。すると、金属がイオンとなって溶け出し、歯や歯茎の黒ずみや変色を招くことがあります」(石井先生)。
更年期以降に増える3つの歯黄ばみ
更年期以降に増えてくる歯黄ばみは、おもに3つあります。この中で最も多いのは、加齢による歯黄ばみです。いずれも歯科医院の治療である程度、白くすることができます。
【加齢による歯黄ばみ】
女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減少することによる唾液の量、質の低下が原因のひとつ。口腔内のうるおい不足による黄ばみです。
【テトラサイクリン歯による歯黄ばみ】
テトラサイクリン系抗生剤によるものです。40代~50代に多い。ホワイトニングをしたあと、時間が経つと色戻りする可能性はありますが、ホワイトニングだけでもある程度、白くなります。
【ブラックマージンと歯黄ばみの合併】
かぶせた歯の内側の金属が変色し、摩耗してずれたことで、歯と歯茎の間に黒く見えてくるのがブラックマージン。その影響で、歯や歯茎も色素沈着を起こします。
進化しているホワイトニング治療
歯のホワイトニング治療で、歯黄ばみはある程度、綺麗に白くなりますか? 気をつけるべき点は? 「歯科でホワイトニングを行うときには、歯のクリーニングと一緒に行うことが歯と口腔内の健康のために大切です。
まず、ホワイトニングの前に、歯の表面のクリーニングや歯垢をとるスケーリングなどのケアを行いましょう。虫歯や歯周病ケアを行うことで、歯の黄ばみ予防にもつながるのです」と石井先生。
歯科医院で行われているおもなホワイトニング治療には、痛みを感じにくいレーザーによる治療と、過酸化水素ジェルによる治療などがあります。以前行われていた赤外線ランプやハロゲンライトを使った治療では、歯面の温度が上昇し、しみるような痛みがありましたが、最近はこの方法を行う歯科医院は減っています。
「私は、過酸化水素ジェルによる治療を行っています。ホワイトニング効果が高く、短時間の施術が可能で、歯への負担を最小限に抑えた治療だと思います」と石井先生。
ホワイトニング治療前に、空気と水を高圧で噴射させるエアフローという機械で、歯ブラシでは落としきれない汚れを落とします。その後、過酸化水素ジェルを歯にのせ、約20分。1回の治療時間は40分程度。色戻りを抑え、より確実に白さをステップアップさせるために3~5回行われます。治療間隔は、連続毎日行っても、1週間おきでも可能だそう。費用は自由診療のため施設により異なりますが、参考までに石井先生のクリニックでは、3回コース12本約10万円(ホームホワイトニングキット+フッ素イオン導入付き)。
ホームホワイトニングで白さを維持
クリニックでのホワイトニング治療を維持するために、週1~2回ホームホワイトニングを行うと白さの維持につながります。専用のマウスピースと歯の間にジェルを入れ、約20分間、マウスピースをつけます。
参考までに、石井先生のクリニックのホームホワイトニングキットは、単品で上下のマウスピース+ホワイトニングジェル4本で3万800円(税込み)です(ホームホワイトニングキットは、石井先生のクリニックで行う全てのホワイトニング治療に含まれています)。
セルフケアはどうすれば?
歯の黄ばみを予防し、ホワイトニングの治療後も白さを維持するには、セルフケアが大切です。
「歯のエナメル質を傷つけるので、堅い歯ブラシでゴシゴシ磨くのはNGです。歯は磨くのではなく、洗う意識が大事です。
特に、エナメル質が低下する更年期以降は、研磨剤入りの歯磨き粉は避けましょう。防腐剤も、歯に負担をかけます。できれば、防腐剤フリーの歯磨き粉を使いましょう。そして、1日1回は、丁寧なケアをしてください。歯ブラシ、フロス、歯間ブラシの3点を使ってケアをします。
心がけたいのは、汚れたらすぐに落とすことです。色素沈着しやすい、赤ワイン、紅茶などを飲んだら、綿棒で歯の表面や歯間をサッとこすります。歯ブラシより効果的です」(石井先生)。
40代以降に多いテトラサイクリン歯の治療法
昔、テトラサイクリン系の抗生剤を永久歯の象牙質が形成される乳児期~12歳ころに服用したことで、象牙質が着色する副作用がありました。現在、この抗生剤は使用が控えられていることがほとんどです。
「テトラサイクリン系抗生剤による副作用による歯の変色は、濃い黄色やグレー、左右対称の縞模様が特徴です。テトラサイクリン歯を白くしたい人には、強めのホワイトニングを行う方法がありますが、時間が経つと元に戻ることもあります。半永久的に白くするには、ラミネートベニヤを貼る治療やオールセラミックを被せる治療があります。しかし、ラミネートベニヤは、歯の表面を削るため、エナメル質が弱くなっている更年期以降には、すすめられない治療です。それぞれのメリット、デメリットを歯科医師と相談して決めることが大切です」(石井先生)。
質の良い唾液分泌のための「歯ブラシきゅっとアップ」
最後に、質の良い唾液を分泌させるためのエクササイズを石井さとこ先生に伺いました。唾液の質が低下してくる更年期以降の女性にはおすすめです。このエクササイズは、朝の歯磨きのあとに行うと、より効果があります。
①歯ブラシをくわえて噛みながら、口角をグッと10秒上げます
咬筋に刺激を与え、寝起きで少なくなっている唾液分泌を促します。口角の筋力をつけて、さがりがちになる口角を上りやすくします。この歯ブラシを横にくわえたときに、口角が上がる感じが、笑ったときの理想的な口角です。毎朝くり返して見ましょう。
お話を伺ったのは…石井さとこ先生
歯科医師。口もと美容スペシャリスト。ホワイトホワイトデンタルクリニック院長。歯のホワイトニングを日本で広めた第一人者。歯と体を美しく保つための食事や、歯が美しく見える口もとメイクについてのアドバイスに定評がある。女優・モデル・アナウンサーからの信頼も厚い。コスメキッチン限定発売のオーラルケア商品「NATURAL DROPS」監修。著書に「マスクしたまま30秒!! マスク老け撃退顔トレ」(集英社)など。https://s-d-m.jp/talents/ishii-satoko/
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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