【更年期によくある症状】人前に出るのがイヤ…顔がほてる、大汗をかく「ホットフラッシュ」の改善策

 【更年期によくある症状】人前に出るのがイヤ…顔がほてる、大汗をかく「ホットフラッシュ」の改善策
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増田美加
増田美加
2021-10-15

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。

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人前に出るのがイヤになるホットフラッシュの悩み

「更年期症状で困っている…」という悩みが最も多いのが“のぼせ、ほてり、多汗”=ホットフラッシュです。ホットフラッシュは、昼夜、関係なく突然起こりますが、人に会うなどの緊張感がきっかけで、起こることもあります。なかには、いつ症状が現れるか心配で、人前に出るのがイヤになってしまうという人も。

また、夜中に急にたくさん汗をかくために熟睡できず、睡眠不足でイライラが強くなるなど、日常生活に支障をきたすこともあります。今回は、ホットフラッシュの対策についてご紹介します。

ホットフラッシュ
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暑さ、寒さの感じ方が違う。体温感覚がわからない

「今、暑い? 寒い?」と、周りの人に聞いてしまうことはないですか? みんな寒がっているのに、自分だけ暑くて、冬でも上着を脱いでしまって恥ずかしく思ったことはありませんか? 

このように更年期になると、体温感覚がわからなくなってしまうことがあります。夜、暑くて布団をはいでしまう。すると寒くなる、その繰り返しで熟睡できない。また、メークが落ちて、髪がぐっしょり濡れるくらい、汗をかいてしまう人もいます。首の回りにタオルを巻かないといられないほどで、汗をかいたあと、逆に冷えてしまうなどもありますね。

更年期になると、首から上に汗をかきやすくなります。頭の中や額、口の周り、今までとちょっと違うところから汗が出ます。人からわかるところに汗をかくため、よけいに困ってしまいます。そして、汗をかいたあと、寒くなりゾクゾクして体温調節がうまくいかなく感じます。このような症状が、更年期ののぼせ、ほてり、多汗。つまり、ホットフラッシュです。

女性ホルモンの乱れで自律神経が影響されるのが原因

更年期になると、卵巣から分泌される女性ホルモンの分泌が減ってきます。すると、脳の視床下部、下垂体が影響を受けます。急に女性ホルモンが下がるのを脳が認識し、慌ててFSH(卵胞刺激ホルモン)を分泌して、卵巣に「エストロゲンをもっと出せ」と指令を出します。

そのとき、下垂体のほかの部分が影響されます。下垂体には、自律神経中枢系統があって、生きるための体の調節を受け持っています。一か所が狂うと、ほかも引きずられて狂ってきます。

自律神経はもっとも早く反応し、体を調節しようとします。自律神経に関係するのは、体温調節、胃腸、呼吸、血圧、心拍などで、同時に調節しようとします。

たとえば、寝ているとき、立ち上がったとき、走るときに、血圧を調節するのも自律神経です。また、立毛筋(りつもうきん)といって皮膚に鳥肌をたてて、熱を逃げていかないようにするのも自律神経です。急に、暑くなったり、鳥肌がたったり、寒気がしたりするのは、そのためです。

エストロゲン
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血管の収縮、拡張の調節がうまくいかなくなるから

更年期は、日によって、あるいは1日に数回、エストロゲンの分泌が急上昇したり、急降下したりします。この急激なエストロゲンの変動に影響を受けて、自律神経が乱れるために、のぼせやほてり、多汗といった症状が生じてくるのです。

本来、自律神経は、血管を拡張させて放熱したり、逆に血管を収縮させて熱が逃げることを防いで、体温を一定に保つ働きがあります。

しかし、自律神経が乱れると、血管の拡張と収縮の調節がうまくいかなくなります。一時的に血管が拡張すれば、のぼせやほてり、多汗などが起こります。逆に、末端の血管が収縮して血液の循環が悪くなれば、冷えの症状が起こってくるのです。

更年期障害以外の病気が原因のことも

のぼせやほてりは、高血圧や心臓疾患が原因のこともあります。また、多汗は甲状腺機能亢進症が原因で起こることもあります。甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。初期には多汗や動悸、頻脈など、更年期の症状とよく似た症状が多いので注意が必要です。

これらの症状に加えて、ダイエットをしているわけではないのに、だんだん痩せてくるといった症状がおきてきたら、婦人科、あるいは甲状腺の専門クリニックを受診して原因を確かめておいたほうがよいでしょう。

甲状腺
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ホットフラッシュ対策は、合わせ技で

更年期症状ののぼせやほてりは、病気ではありませんが、人目につきやすいので、つらい症状のひとつです。日常生活に支障があったり、気になる場合は、婦人科で相談しましょう。治療には、HRT(ホルモン補充療法)や漢方薬、自律神経調整剤などが用いられています。

閉経前であれば、低用量ピルもおすすめです。少量のエストロゲンとプロゲステロンを補充することができます。低用量ピルは、婦人科で処方してもらえます。

エストロゲンと似た作用をする大豆イソフラボンのエクオールというサプリメントを飲むのもいいと思います。つらい症状への対処法は、ひとつの方法で、全てをカバーできるわけではありません。さまざまな方法を組み合わせて、試してみるのが賢い方法です。

HRT
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メンタルケアも試してみては

ほてりやのぼせは、本人にとって恥ずかしいことであっても、周りの人には意外と気づかれないもの。心の持ちようも症状に影響します。気にしすぎないようにしましょう。また、思い切って口に出すと、気持ちが楽になります。人前で汗をかいたとき、恥ずかしがって緊張すると、余計に自律神経が乱れて汗が出ます。

「私は汗かきなんです」と言ってしまえば、気持ちが楽になり、体の緊張も解けます。慌てた様子を見せるよりも、「見苦しくて申し訳ございません」とひと言添えて、汗をかくほうが楽かもしれません。

外出の際は、吸湿性のある大きめのハンカチを何枚か準備していきましょう。準備を万全にしておくと、それが安心感につながるので、それだけでも汗が出にくくなります。

 

自律神経訓練法や運動はおすすめです

自律神経訓練法を行って、自律神経系を鍛えると、体温調節が安定し、ほてりや発汗が落ち着きます。静かな場所でゆっくりできる時間をつくり、床にあぐらで座るか、あお向けで寝ます。目を閉じて、ゆっくり呼吸をしながら、頭のてっぺんから、手先、足先まで酸素がゆっくり巡っているのをイメージします。ポイントはリラックスです。体の力を抜いてリラックスできれば、体内を酸素が巡ることで自律神経を安定させることに役立ちます。

運動も大事です。運動を日常的にしていると、体温を一定に保ったまま、汗をかくことができるようになります。ウォーキングなどの有酸素運動は、気楽にできておすすめ。運動はリラックスなどのメンタルケアにも役立ち、体の機能を潤滑にすることができます。入浴時に腰湯をするのもいいでしょう。じっくり汗をかくので、自律神経を整えてくれます。

半身浴
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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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