【更年期障害とは】ならない人もいる? 症状は日によって変わる?意外と知らない「症状と原因」
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。更年期の症状は、まさに千差万別。人によってつらさも、どんな症状が出るかも違います。そして、その症状は、日によっても変わります。更年期障害に苦しむ人がいる一方、更年期障害にならない人もいます。それはなぜでしょうか?
更年期障害と更年期の不調は、区別します
更年期とは、閉経を挟んで前後5年ずつの計10年間を言います。閉経の平均が50.5歳なので、45歳~55歳ころを更年期と呼んでいます。更年期の不調のつらさをほとんど感じず、更年期の時期を通り過ぎてしまう人もいれば、日常生活に支障をきたすほどつらいという人もいます。以前は、更年期に起こる不調すべてを更年期障害と呼んでいましたが、今は日常に支障があるほどひどい症状を更年期障害と呼び、それ以外は更年期症状と呼んで区別しています。
では、なぜ症状や症状の出方に個人差が大きいのでしょうか? いろいろな要因が考えられ、それらが複雑に絡み合っています。更年期に不調を起こす原因は、大別すると3つの要因が考えられます。
卵巣の機能や体質の要因も原因に
まず、一つ目は、卵巣機能の衰え方の差や体質的な要因です。更年期の不調は、卵巣機能の低下による女性ホルモンのエストロゲンの分泌の減少が直接の原因です。けれども、卵巣機能が衰える度合いや、女性ホルモン分泌の低下の仕方は人によって異なります。
さらに、女性ホルモン分泌の乱れに対する体の反応も、人それぞれ違います。ホルモン分泌の変動に敏感に反応する人は、症状が強く出たりします。ホルモンへの反応性も症状の出方の差に関係するのです。
更年期前から、女性ホルモンの分泌が乱れやすく不規則になりがちで、月経(生理)不順があったり、自律神経失調症の症状が起こりやすい人ほど、更年期症状が出やすい傾向にあると言われています。また、不規則な生活や過労、睡眠不足なども、ホルモンや自律神経の乱れに拍車をかけ、影響します。
性格的に「不調」をどう捉えるか
ふたつ目は性格的な要因です。ストレスは誰にでもありますが、それにどのように対応するかも、更年期の症状が出やすいかに関係します。クヨクヨするタイプの人は、少しの体の変調がとても気になり、落ち込んで、そのことがさらに大きなストレスになります。
また、誰かに頼りたい依存タイプの人は、更年期のつらさを家族や周囲に理解してもらえないと、不安や孤独を感じ、気分がますます落ち込みます。
何に対しても真面目で頑張る人は、更年期の不調で、これまで通りにできない自分がもどかしくて、自分を責めたりして、症状を重く感じさせます。
そのほか、閉経という現象を「女性でなくなる…」と否定的に考えている人も、症状に過剰に反応して悪化させることがあります。
環境的な要因、家庭や職場の問題も
更年期は、自分の老後の準備に加えて、夫との関係、子どもの自立、親の介護の問題など、自分だけでは解決できないさまざまな問題が起こる時期と重なります。
仕事を続けてきた人は、仕事の責任も重くなり、プレッシャーを感じる人もいるでしょう。また、仕事上の人間関係も大きなストレスのひとつになります。女性の人生の更年期という時期に増えるさまざまな社会的ストレスが、エストロゲン分泌の低下に拍車をかけて、自律神経のバランスを乱していくことも少なくありません。
最初に現れる不調は、ホルモン変動への戸惑い!?
このように更年期障害や更年期の不調は、人によって、症状やつらさの度合い、起こる時期も千差万別。まったく症状を感じない人もいれば、つらくて仕方がないと訴える人もいます。さらに、症状は、日によっても変化します。
更年期の前半(40代前半から半ば)に多い不調は、ほてりや発汗、動悸、頻脈などの“血管運動神経障害”と、不安、不眠、イライラなどの“精神神経障害”です。これらの症状は、エストロゲンの急激な変動と減少に、体と心が戸惑っているようなものです。
不安定なエストロゲンの状態に、体が「これではいけない」と慌てふためいているのです。体のほうがその状態に慣れてくると、これらの症状はいつの間にか治まってきます。更年期障害や更年期症状と呼ばれるものの多くは、このような感じです。
自律神経の乱れは、自律神経失調症が原因なので、多くは、検査をしても特に病的なものは見つかりません。これらの症状は、閉経前後の1年くらいが一番つらかったという人が多いですが、閉経の数年前から起こる人、また閉経後に強く現れる人もいて、やはり個人差があります。
症状は日によって変化します
更年期の症状のもうひとつの大きな特徴は、症状が一定せず、また同じ症状でも日によって強さが違うことです。たとえば、下腹部張りが続いたかと思えば、次は頭痛に、そのうちだるさや、疲れを感じ、いつの間にか、だるさや疲れは消えて、耳鳴り、めまいが気になるなど、不調が次々と現れ、ひとつでなく複数重なったりもして、一定しません。そのため、その都度、あちこちの診療科で検査をしますが、結局、最後に更年期の不調と気づくこともあります。
症状は、あなたのせいではありません
このように更年期が起こる症状は、さまざまな要素が複雑に絡み合って起こります。「更年期の症状は、気持ちの問題」「ヒマな人に起こる」という人がいます。もちろん、同じ症状でも深刻に受け止める人、軽く受け止める人がいるのは事実です。
けれども、気の持ちようで症状が出なくなるほど、更年期の不調は単純ではありません。心や体に不調が現れたら、家族や周囲の人に話し理解してもらいながら、適切なケアや治療を受けることが大切です。今、更年期外来や閉経外来、女性外来など、おもに婦人科で、更年期の心と体を総合的に診る医師も増えています。こうしたクリニックを積極的に受診してください。
人生の折り返し地点、新たな人生のスタートが更年期です
更年期は、女性であれば誰もが通る人生の通過点です。わかっていても、何となく寂しく思うのは、更年期に人生の黄昏時というイメージがあるからかもしれません。でも、更年期は、人生の黄昏時でしょうか? 今は、人生100年、長寿の時代。40代~50代は、まだ人生の折り返し地点に立ったところです。
人生を1日の時間の流れにたとえると、更年期はランチの後のティータイム。人生の午後みたいなもの。楽しいこともたくさんありますし、充実した仕事ができるのはこれからです。今の60代、70代の女性は、いきいきと美しく、自分らしく人生をエンジョイしている人がたくさんいます。
これまで、家事に子育て、仕事との両立など、時間に追われた忙しい生活を送ってきた人も少なくありません。更年期はちょっとひと息入れて、自分の心と体を見つめて、ねぎらってあげる時期。それもまた、楽しいことです。これから始まる人生の後半戦をどう充実させていくかの作戦を練る時期です。更年期をうまく乗り超えると、人生の後半戦は、これまで以上に楽しくなり、新しい自分に出会えると思います!
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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