PMSの吹き出物対策!皮膚科専門医が薦める肌ゆらぎの時期のスキンケア
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 生理前のPMS(月経前症候群)の時期になると、毛穴の開きを感じたり、肌が脂っぽくなったりします。その結果、吹き出物もできやすくなり、気分が落ち込む時期ですね。PMSの肌トラブルは、女性ホルモンのゆらぎに影響されて起こります。ホルモンバランスを意識したスキンケアについて、皮膚科専門医の慶田朋子先生に伺います。
肌の皮脂量を増やすプロゲステロン
毎月の女性ホルモンの揺らぎによって、肌コンディションも影響されます。女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンによって、肌はどのような影響を受けるのでしょうか。
「女性ホルモンは、皮膚にさまざまな作用をもたらします。エストロゲンとプロゲステロンの総量というより、どちらのバランスが多くなるかが影響しています。たとえば、エストロゲンの量がプロゲステロンに比べて最も多くなる(優位になる)時期は、生理後から排卵前後です。このころは肌の調子がよく、トラブルも少なく安定しています。
一方で生理前は、エストロゲンよりもプロゲステロンの量が多くなる時期で、プロゲステロン優位になります。そのことで、便秘になりやすく、ニキビができやすくなるのです。プロゲステロンには、肌の皮脂量を増やす作用があるため、毛穴の開きを感じたり、肌の脂っぽさを感じたりします。けれども、プロゲステロンが肌の皮脂量を増やすことは確かなのですが、吹き出物やニキビとの直接な因果関係はわかっていないのです」と慶田朋子先生。
PMSの時期の便秘が原因に!?
PMSの時期は、肌の皮脂量が増えるから、吹き出物が出やすいと思っていましたがそうではないのですね。では、PMSに吹き出物が増える理由は何なのでしょうか?
「PMSの時期に吹き出物やニキビが増える理由としては、プロゲステロンの作用として腸内の蠕動運動が抑制されて、便秘になりやすいことが原因のひとつと考えられます。便秘になると、腸内環境が悪化し、悪玉菌が増え、悪玉菌が腸内のタンパク質を腐敗させて、有害物質が腸内に蓄積されます。その有害物質が腸壁の毛細血管から吸収されて、血液中に入って全身に巡ります。その結果、皮膚も有害物質の影響で、乾燥、肌荒れ、吹き出物、ニキビが出やすくなったり、肌が黒ずんでツヤがなくなったりと、肌のトラブルにつながるのです」と慶田先生。
もうひとつ、PMSの便秘による肌の乾燥がニキビの原因になっているというルートがあります。便秘の人は、肌の乾燥が進むという研究結果が日本でも海外でも複数出ています。肌が乾燥すると、細胞が生まれ変わる肌のターンオーバーが乱れます。すると、正常に剥がれ落ちなかった角層が硬化することで肌荒れになり、毛穴をふさいで炎症を起こします。これが吹き出物やニキビの要因とも考えられているのです。
男性ホルモンの影響が女性にも!
「皮脂量の増加、便秘、肌乾燥…と、女性ホルモンのプロゲステロンが吹き出物に影響するホルモンではあります。しかし、プロゲステロンだけでなく、吹き出物やニキビのできやすさには男性ホルモンの影響が大きいと言われています。女性の男性ホルモンは、男性に比べて少ないですが、女性でも副腎から分泌されています。男性ホルモンは、思春期の若いころから分泌され始めます。すると皮脂腺の活動が活発になり、皮脂が出過ぎて、詰まることで吹き出物やニキビができやすくなるのです。
男性ホルモンの分泌量や皮脂腺の大きさは、人ぞれぞれで個人差が大きいのです。思春期にニキビが重症化しやすい人は、男性ホルモン(テストステロン)が高活性型のジヒドロテストステロンに変換されやすく「皮脂量が多いタイプ」。もうひとつは、遺伝的に皮脂腺が大きく「分泌量が多いタイプ」。この両方の素因を持つタイプの人だと思います」(慶田先生)
ほかにもPMSの時期以外にできる吹き出物やニキビもあります。ストレス、睡眠不足、遺伝的素因、年齢、男性ホルモン、食事(脂肪分、糖分過多)、化粧品、環境因子(気温、湿度、紫外線)なども原因に。原因は本当にたくさんあるのです。
便秘と乾燥対策が大事!
PMSの時期の吹き出物、ニキビの原因から考えると、便秘と乾燥対策が予防にもなり、悪化させないケアにもなります。
「便秘と乾燥対策は大切です。便秘があって吹き出物やニキビに悩んでいる人は、酸化マグネシウム剤などで便秘を改善し、腸内を整えることで吹き出物がよくなることも少なくありません。ヨーグルトや発酵食品、水溶性食物繊維、雑穀などの穀類を食べることで腸内環境を少しずつ整えていくことも大切です。便秘改善には、食事の工夫、睡眠、運動習慣、ストレスコントロールが重要。過度なストレスは、腸内機能を低下させると言われています。
また、吹き出物ができやすい人は、脂性肌の人だけでなく、乾燥肌であることも珍しくありません。乾燥肌=肌のバリア機能が低い証拠ですので、肌荒れを起こしやすく、炎症をきっかけに毛穴の入り口の角層が厚くなり、毛穴が詰まってしまいます。すると、皮脂が溜まって常在菌のアクネ菌が増えることで、ニキビができる人もいます。皮脂腺が大きく皮脂量が多い人の吹き出物やニキビとは、メカニズムが違うのです。このタイプの人の対策としては保湿が大事です。肌の水分量が下がっていて、メイクノリが悪い、くすむ、透明感がない、キメが粗くなるなどを感じたら、吹き出物、ニキビ予防のためにも保湿をしっかりしてください」(慶田先生)
皮膚科を受診するタイミングに悩みますが、PMSの生理前は、皮脂腺が活発になります。炎症のないニキビ(白ニキビ)が2~3個できるくらいであれば、皮膚科を受診する必要はないでしょう。
「しかし、もし長引く吹き出物やニキビで悩んでいたら、皮膚科を受診してください。皮膚科での治療の基本は、毛穴に皮脂が詰まりにくくする、アクネ菌に対する治療です。保険診療では、おもに塗り薬と飲み薬で治療を行いますが、そのほか、専用の器具で毛穴に詰まった皮脂を押し出す処置、ケミカルピーリング(古い角質や毛穴汚れに詰まった角栓を優しく溶かす治療)、ステロイド局所注射IPL照射(フォトフェイシャル)などの治療が行われています」(慶田先生)
洗顔は泡でそーっと
スキンケアは、洗顔が基本。PMS期の洗顔の方法としては、洗顔料で普段以上にやさしく洗うよう心がけることが大事です。
「朝の洗顔は、洗顔料の泡を肌にのせて、やさしくそっと手のひらで泡をフルフルっと動かします。その後、すぐに流してください。夜の洗顔は、メイク落としをしたあと、肌に洗顔料の泡をのせます。のせている時間を朝より少しだけ長くします。皮脂が多めの人は、先にTゾーンに泡をのせ、最後に乾燥しやすい目の周りにのせるようにして、時間差にします。そうすると皮脂の多い場所は、しっかり脂を落とせます。
洗顔料の泡をのせて、手のひらでやさしく動かすのは、界面活性剤が乳化して、毛穴の脂まで洗顔料の成分が行き渡る時間を待つ目的があります。毛穴が広がっている人は、肌表面が凸凹と立体的になっているので、より丁寧にしましょう。大人のニキビと言われる吹き出物の場合、厚くなった角層と皮脂が層状に固まった角栓ができていたり、真皮の構造の劣化により毛穴が開いてきたりするので、酸化した皮脂は、角層の炎症などをしっかり落とし、不要な角層のターンオーバーを促すことが大事です。気をつけたいのは、泡や洗顔ジェルなどで長時間マッサージをすると、汚れだけでなく大事な肌のバリア成分が流れ出す危険があることです。洗い流したときに、肌にツッパリ感があったら、バリア成分が流れ出してしまった証拠です。気をつけましょう」(慶田先生)
洗い方ひとつでも、肌質、年齢、季節、生理のゆらぎの時期、メイクの濃さによってもアドバイスが異なります。夜、塗ったものの種類がオイルか、ジェルか、によっても朝の洗顔をどうするかが変わります。もし、トラブルに悩んでいるようでしたら、一度、美容皮膚科を受診して相談を。
吹き出物に保湿ケアが必要な理由
吹き出物で保湿するのは意外な気がしますが、保湿は必須。保湿の仕方も、皮脂量の多い時期か、少ない時期かによって変わります。
「PMS期の皮脂量が比較的多い時期には、バームやクリームなどの重たいものではなく、軽めの乳液やジェルなどで保湿します。季節によっても変えることが大事。夏は、温熱刺激で皮脂腺が元気になって吹き出物が増えやすくなるので、さっぱり系の化粧品で保湿をします。冬は皮脂量が減るだけでなく、大気が乾燥するので、クリームなど油分が多いもので保湿してもいいでしょう。また、秋~冬は、季節的な乾燥がきっかけで、乾燥肌の吹き出物やニキビができることもあります。そのときは、さらにしっかり保湿をしてください」(慶田先生)
吹き出物を悪化させないメイク法
吹き出物があるときのファンデーションのつけ方を教えてください。
「ファンデーションは軽めならつけて大丈夫です。ファンデーションは、吹き出物の色味をカラーコントロールしつつ、紫外線やほこりなどの刺激から守ってくれる役割もあります。吹き出物ができているからと、日焼け止めもファンデーションも塗らないと次の吹き出物につながってしまいます。吹き出物のときは、油分が多く含まれるコンシーラーやリキッドファンデーションは避けて、炎症を抑えつつ自然に吹き出物を隠せる、肌色のニキビ専用の軽めのものがおすすめです。その上にパウダーをポンポンと置くように重ねると、ナチュラルに仕上がります。パウダーは、吹き出物ができているときや、できやすい方は、筆やパフを滑らせると刺激になり毛穴が詰まりやすくなるので、ポンポンと軽く置くイメージでつけてください。
皮脂腺がない目の周りと唇には、吹き出物はできません。ベースメークは、カラーコントロールで整えるくらいの意識にして、アイメイクやリップなどで、吹き出物から視線を逸らすようにするのもコツです」(慶田先生)
お話を伺ったのは…慶田朋子(けいだともこ)先生
銀座ケイスキンクリニック院長
医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。ガルデルマ社認定ヒアルロン酸注入指導医。最新の医療機器と注入治療をオーダーメイドで組み合わせ、メスを使わないナチュラルな若返りを叶える美容皮膚科医として信頼が厚い。皮膚の働きや正しいスキンケア、生活習慣などの解説が人気で、テレビ、雑誌、ウェブなどで活躍中。著書『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)ほか多数。
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