太る?肌が綺麗になる?薬の副作用は?更年期症状を緩和する【ホルモン補充療法】の素朴な疑問に回答!
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。
ホルモン剤で太るのが心配?
女性ホルモン剤について、医師には聞きにくいけれど、聞いてみたい素朴な疑問についてお答えします。低用量ピルやホルモン補充療法(HRT)などの女性ホルモン剤を使うのを躊躇する方から「太るのでは?」という質問を受けます。
けれども、低用量ピルやホルモン補充療法(HRT)を使ったことが直接的な原因で、太るということは考えにくいとされています。「太った」という人は、つらい不調がなくなり、体調が改善してストレスが減り、食欲が増したことが影響しているということもあります。つまり、健康になったのかもしれません。
更年期以降は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下することで、太りやすくなることは考えられます。更年期前と同様の生活を送っていると、太りやすくなります。肥満対策のためには、食生活をさらにもう一度、見直して、運動を心がけることが必要です。
閉経前は、ホルモン補充療法を受けられない?
つらい更年期症状があるときは、閉経前でもホルモン補充療法(HRT)は、受けられます。月経(生理)がまだある時期でも、更年期のつらい症状がある場合は、ホルモン補充療法(HRT)を受けることができます。
婦人科で診察をしてもらい、ほかに病気がないことを確認することも大切です。また、血液検査でホルモン値を確認することもできます。卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が高く、エストロゲンの値が低い場合は、閉経に向けて卵巣機能が低下していることがわかります。けれども、血液検査によるホルモンの数値は、月経周期によって大きなバラツキがあります。検査の結果、それほどホルモンの数値が下がっていなくても、更年期の症状がつらい場合は、閉経前でも治療を始めて構わないと言われています。
お肌のためにホルモン補充療法をしてみたい
美容目的だけで、更年期の不調がないのに、早くからホルモン補充療法(HRT)を始めることは、薦められていません。確かに、女性ホルモンのエストロゲンは、肌をみずみずしく保つ働きがあります。ホルモン補充療法(HRT)を行っていると、肌のハリやツヤを保つという副産物があります。
ホルモン補充療法(HRT)は、卵巣機能が低下したときに初めて必要で有効な治療法です。肌のハリやツヤは、その副次的な効能と考えたほうがいいでしょう。
ホルモン補充療法(HRT)で出血が!
閉経後、ホルモン補充療法(HRT)を行って、微量の出血があっても、排卵が起こっているわけではありません。ですからセックスをしても、妊娠する心配はありません。ホルモン補充療法(HRT)を始めた最初のころ、月経(生理)に似た出血が見られるために、「再び、妊娠の可能性があるのでは?」と心配になる方がいます。しかし、その心配は無用です。
女性ホルモンを補充することで、子宮内膜が月経(生理)と同じような現象を起こしているだけです。一度、衰えた卵巣機能が復活したわけではありません。
ただし、まだ更年期ではなく、若い人が卵巣機能不全の治療のために、ホルモン補充療法を行う治療の場合では、排卵が起こり、妊娠する可能性が出てきます。避妊を心がけましょう。
ホルモン補充療法は一度始めたらやめられない?
ホルモン補充療法(HRT)は、「一度始めたら、ずっと続けていかなくてはいけない」と思っている方がいますが、そんなことはありません。更年期の症状を改善することがホルモン補充療法(HRT)の目的であれば、つらい症状が治まって、快適な生活が送れると満足できたら、そのときが止めどきと考えれば良いでしょう。
ガイドラインでは、閉経後5年以内に始めて(最長でも閉経後10年以内に開始)、5年間以内で終わりにするのが、さまざまなリスクを最も少なく行えるとしています*。しかし、もちろんホルモン補充療法(HRT)の効果を実感して、10年以上使い続けている人もいます。
*産婦人科診療ガイドライン2017 婦人科外来編(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会)
ただし、骨粗鬆症や動脈硬化の治療のために、ホルモン補充療法(HRT)を行っている場合は、途中で勝手に薬をやめてしまうと、治療効果がなくなってしまいます。医師と相談して、治療を続けることが重要です。
ホルモン補充療法をやめたら症状がぶり返す?
ホルモン補充療法(HRT)を始めて、つらい症状が改善し、快適な生活を送っている方は、「やめたら再び、あのつらい症状が戻ってくるのでは?」と不安でやめどきがわからないという声があります。
そんなときは、医師と相談しながら、ホルモン剤の量を一気に減らさず、徐々に減らしていく方法があります。急に全部を中止してしまう不安がある人は、少しずつ減らしていきましょう。
いきなりホルモン補充療法(HRT)を全量中止すると、エストロゲンが急激に減ったことで起こる、のぼせやほてりなどの急性症状が再び起こることがあります。必ず、医師と相談しながら、少しずつ薬の量を減らしたり、服用する間隔を空けていくなど、徐々に薬のない状態にもっていくように工夫します。
人の体には、生体内の環境を一定に保とうとする働きがありますから、ホルモン剤の量を徐々に減らしていけば、自然にその状態に慣れていくと言われています。
薬の飲み合わせは大丈夫?
ホルモン補充療法(HRT)で使われるホルモン剤と、風邪薬、頭痛薬やビタミン剤などの市販薬の飲み合わせは問題ありません。併用しても大丈夫とされています。また、婦人科では、ホルモン補充療法(HRT)と併用して、ほかの症状に合わせて、漢方薬や睡眠薬、抗うつ薬などを処方されることもあります。
これらの薬も問題はありません。ただし、ほかの科を受診するときには、必ず医師にホルモン補充療法(HRT)を行っていることを伝えて、相互作用のある薬が処方されたり、薬がダブったりすることを避けましょう。お薬手帳を持参しましょう。
ホルモン補充療法(HRT)は高額では?
「更年期の不調に悩んでいる…。ホルモン補充療法をやってみたいけれど、高いのでは?」と思っている方が結構います。ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害があれば、健康保険が使えます。いわゆる更年期障害といったつらい不調でなくても、更年期の症状や骨粗鬆症、萎縮性腟炎の治療には、保険が適用されます。けれども、骨粗鬆症の“予防”や肌の若返りなどへの“美容”目的の使用では、健康保険は適用されません。
ホルモン補充療法の費用は?
実際、ホルモン補充療法(HRT)の費用はいくらくらいかかるのでしょうか? 保険適用の場合は、1か月数千円くらいです。受診するのは、婦人科です。ホルモン補充療法(HRT)に使うホルモン剤、そのものの薬代は、1か月1000円程度が目安。保険が適用される治療なら、初診料や各種検査代などを含めても、初回は数千円から10,000円くらいでしょう。
ただし、保険診療では、ひとりの診療にゆっくりと時間をかけられない現状があります。そのため、更年期の治療を自費(自由診療)で行うクリニックもあります。自費の場合は、初診で検査代や薬代などを含めると、数万円かかることもあります。
また、医療機関によって、大部分の診療は保険診療で行い、健康管理の指導やカウンセリングなどは、日を改めて自費で行う施設もあります。医師との相性なども大切ですので、それも含めて検討し、自分に合ったクリニックを選びましょう。
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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