【病院に行くべき異常なおりもの】は白い?黄色い?泡立ちアリ?専門医が見分け方を解説

 【病院に行くべき異常なおりもの】は白い?黄色い?泡立ちアリ?専門医が見分け方を解説
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増田美加
増田美加
2024-04-27

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。異常なおりものとは、どんなものなのでしょうか? おりものの異常は、病気のサインの可能性もあります。産婦人科に受診すべき、性感染症の可能性があるおりものと、婦人科を受診するタイミングについて、産婦人科専門医の吉本裕子先生に伺います。

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「いつもと違う!」が受診のタイミング

おりものの個人差は、大きいと言われています。おりものシートをつけても漏れるくらいの量の人もいれば、まったく気にならない人もいます。でも、量が多いからといって異常があるわけではなく、ニオイも、酸っぱい鼻につくような酸性のニオイなら問題ありません。

「異常かどうか、婦人科を受診したほうがいいかどうかの見極めポイントは、“いつもと違う!”です。今まで経験したことのないような、ニオイや色、量などに気づいたら、受診をお勧めします」と吉本裕子先生。

異常なおりものとは?

おりものは、私たちの体を守ってくれていて、「腟のうるおいを保って粘膜を守る」「腟内の汚れを排出する」「ばい菌などが子宮内に侵入するのを防ぐ」といった大切な働きがあります。一方で、異常のある注意すべきおりものもあります。それは、どんなものなのでしょうか?

「おりものが変化することが多い病気は、いくつかあります。よくあるのは、細菌性腟炎症。過労やストレスで免疫力が低下すると、細菌の侵入を防いでいた腟の自浄作用の力が落ちて、腟に炎症が起こります。細菌性腟症になると、おりものが、風邪を引いたときの黄色っぽい鼻水のように変化することがあります。魚の腐ったようなニオイがしたり、おりものが皮膚につくとかゆみが出ることも。細菌の種類によっては、もっと濃い、黄土色っぽい色になることもあります。ほかにも、腟カンジダ症や、性感染症のクラミジア感染症や腟トリコモナス症、淋菌感染症などの病気が原因で、おりものの状態や色が変わったり、悪臭がする場合があります。いつもの自分のおりものと違う、と変化に気づいたら、婦人科で相談してください」(吉本先生)

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病気が原因のおりものとは?

病気によるおりものは、下記のような状態、色、ニオイになります。

「腟カンジダ症」 → 白くて、カッテージチーズのようにポロポロしている。外陰部のかゆみもある。

「腟トリコモナス症」 → 黄色や黄緑色っぽい。泡が混じることや悪臭がすることもある。外陰部のかゆみ、痛みもある。

「クラミジア感染症」「淋菌感染症」「細菌性腟症」 → 白、もしくは黄色っぽい。膿状のことも。腰痛や下腹部痛、発熱があることも。

そのほか、「子宮腟部びらん」や「子宮頸管ポリープ」「子宮体がん」などの場合には、おりものに血が混じることがあります。

気になる「性感染症」とはどんな病気?

「性感染症は、おもにセックスによってうつる病気です。知らないうちに感染したり、他人にうつしてしまったりすることもあります。性感染症の原因となるのは、菌や微生物ですが、さまざまな種類があり、症状や治療法もそれぞれ異なります。おりものの異常がサインになる腟カンジダ症や性感染症は、どんな病気なのか詳しく紹介します」(吉本先生)

【カンジダ腟炎】

原因:カンジダ属のカビの一種(真菌)。風邪などで免疫力が低下したり、歯の治療などで抗生剤を服用したりすることでカンジダ以外の菌が死滅し、カンジダ菌が増殖して起こります。

症状:外陰部に我慢できないほどの強いかゆみがあります。おりものが増え、白いカッテージチーズや豆腐カスのようなポロポロしたおりものが特徴。外陰部が赤く炎症を起こすことも。

治療:抗真菌剤の腟錠を腟内に挿入します。1錠で1週間の作用がある腟錠をクリックでは処方。かゆみの強い外陰部には、塗り薬を処方します。

【腟トリコモナス症】

原因:トリコモナス原虫が寄生することによって起こる腟炎。男性にも寄生するので、セックスでお互いの病原菌をやりとりするピンポン感染を起こしやすいのが特徴です。

症状:黄色や黄緑っぽいおりものや、血液の混じったおりものがあります。泡が混じったおりものが出ることや悪臭も。外陰部にかゆみや痛みがあります。

治療:抗トリコモナス剤の服用と腟錠を併用します。 

【クラミジア感染症】 

原因:クラミジア・トラコマティスという微生物が原因。セックスによる感染ですが、オーラルセックスによって、のどの粘膜に感染することもあります。また、卵管炎を起こすと、子宮外妊娠や不妊症の原因になります。

症状:特に初期は、無症状の場合が多いです。腹痛や排尿痛が起こったり、おりものが増えてくることもあります。性交時出血がある人もいます。進行して腹膜炎を起こすと、腹痛や発熱があります。また、のどに感染すると、咽頭炎、扁挑炎を起こすこともあります。

治療:抗生物質を服用します。 

【淋菌感染症】

原因:セックスによる淋菌の感染で起こりますが、まれに抵抗力のない女性や子どもが、浴場やプールなどから感染することがあります。

症状:おりものが増えたり、膀胱炎のような排尿痛があったり、外陰部がかゆくなったりします。男性は女性より症状が出やすく、尿道から黄色い膿っぽいものが出たり、尿道炎を起こし、排尿時に痛むのでパートナーの男性が先に感染に気づくことがよくあります。

治療:抗生物質を服用します。

性感染症はどうすれば予防できる?

「性感染症にかからないように予防するには、したくないときはNO!という勇気が必要です。セックスは特定の人とだけするようにし、不特定多数の人とのセックスを避けることが大切です。そして、セックスのときは、コンドームは必須です。性感染症の予防のためには、セックスのときに、最初からコンドームを使用することが重要。セックスの前には排尿し、シャワーを浴びて、お互いの体を清潔にしてから。また、オーラルセックスでも感染することがありますので注意しましょう。パートナーがコンドームを使わないときも、NO!という勇気を持ちましょう」(吉本先生)。 

婦人科ではどんな検査をして、万が一、性感染症がわかったときにはどんな治療になるのか気になります。

「婦人科では、まず外陰部や腟の様子をみます。内診で腟や子宮の粘膜の状態を調べ、おりものを採取して、細菌やウイルスの有無を調べ、場合によっては血液検査をすることもあります」(吉本先生)

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性感染症の治療は?

ほとんどの性感染症が適切な治療をすれば、2週間程度で治ります。個人差もあるので、自己判断で止めたりせず、完全に治るまできちんと治療を続けることが大切です。医師の許可が出るまでは、セックスは控えましょう。 

「感染がわかったら、必ずパートナーと一緒に治療してください。男性は泌尿器科を受診します。女性がよくなっても、パートナーが病原体を持っていれば再感染してしまいます。ふたりで一緒に、同時に治すことが大切です」(吉本先生)

男性の場合は症状が軽いのですが、女性の場合は、子宮内にクラミジアが入ると、おりものが増え、子宮頸管炎になります。するとHIVなどのほかの感染症にかかるリスクが上がります。さらに進行すると、卵管に炎症を起こすクラミジア卵管炎、骨盤内の腹膜炎になり、卵管が詰まってしまうこともあります。そうなると、子宮外妊娠や不妊症のリスクが高まります。妊娠中は、流産や早産の危険性もあり、産道を通して赤ちゃんにうつると結膜炎や肺炎を引き起こすこともあります。けれども、子宮頸管炎の段階で治療をすれば、不妊症にはなりません。卵管炎を起こす前に、治療することが大切です。子宮頸管炎のサインは、おりものです。

「おりものの量が増えたり、普段と違うおりものに気づいたら、すぐに婦人科を受診してください。性感染症を防ぐために、おりものに敏感になることは大事です。パートナーがいて、将来、妊娠、出産を考えている人は、赤ちゃんのためにも性感染症の検診を受けましょう。ふたりできちんと話し合って、お互いの体のことを考え合える関係を築いてください。予定外の妊娠も、性感染症も、パートナーのせいだけではありません。コンドームをつけて!と言える女性になってほしいです」(吉本先生)

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お話を伺ったのは…吉本裕子(よしもとゆうこ)先生

吉本レディースクリニック院長
産婦人科医。日本専門医機構認定専門医。高知医大(現・高知大学医学部)卒業。金沢大学付属病院、富山市民病院を経て現職。病気治療だけでなく、女性の人生に寄り添い、心身の拠り所となるクリニックとして定評がある。『Rp.+(レシピプラス)VOL.21 NO.1冬2022「ホルモンとくすり」』(南山堂)共同執筆。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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