閉経後に「突然、肌が乾く」その理由はホルモン低下?更年期の肌の最適なケア方法を皮膚科専門医が伝授
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 年齢を重ねると肌の状態は変化します。女性ホルモンが一気に減少することによりこれまで経験したことのない、さまざまな変化を感じます。肌トラブル回避のために、事前にどんなケアをしたらいいのか? 変化した肌とどう向き合えばいいのか? ホルモンの変化を意識したスキンケアについて、皮膚科専門医の慶田朋子先生に伺いました。
エストロゲンの魔法が切れるとき
更年期世代(45~55歳)は、女性ホルモンの低下にともなって肌の変化を感じることが増えます。更年期世代は、おもに女性ホルモンのエストロゲンの減少が肌に大きな影響を与えます。エストロゲンには、創傷治癒(細胞が傷ついたときに元に戻ろうとする力)を高め、酸化ストレスから守り、コラーゲン崩壊の悪影響を抑制するという作用があります。これらがほとんどなくなってしまうのが、閉経(日本女性の平均は50.5歳)以降の肌です。
「閉経とは、女性ホルモンの魔法が切れることでもあるのです。エストロゲンパワーが切れると、コラーゲンやヒアルロン酸の減少・質の低下、ケラチノサイト(角化細胞)の再生遅延、、皮膚保水性、皮膚弾力性、皮脂量の低下、傷の治癒の遅延、酸化ストレスへの抵抗性の低下、表皮、真皮の萎縮などが起こります。すると、シミ、シワ、たるみ、ハリの低下、乾燥、傷の治りにくさなどの肌トラブルが徐々に始まります」と慶田朋子先生。
エストロゲン低下で最も注意すべきは乾燥!
更年期の女性ホルモンの低下は、心と体にさまざまな症状をもたらしますが、肌にも多くの変化を起こします。エストロゲンが低下することで、もっとも注意しなくてはならないことは、乾燥と言われています。
「エストロゲンには、傷を早く治す作用があります。エストロゲンがなくなることで、肌のターンオーバー(新陳代謝)が低下します。肌の回復力が下がるわけです。ケガが治るスピードだけでなく、肌のバリア成分の再生も遅くなるため、バリア機能の低下につながります。そこで、肌に生じてくるのが乾燥です。乾燥肌の原因には、さまざまあります。閉経によるエストロゲンの低下、加齢、遺伝的体質(アトピー性皮膚炎など)、生活習慣(ストレス)、炎症(医原性、外因性)、合わないスキンケア、環境(空気の乾燥、紫外線)などが、肌のバリア機能や水分保持機能に影響を与えて、乾燥肌に導いてしまうのです」(慶田先生)
化粧品は浮気せず保湿を第一に
女性ホルモンが低下する更年期の肌ケアのポイントは、乾燥対策がいちばん重要。もともと、角質層のバリアがしっかりしているノーマル肌でも、更年期にはバリアをつくる成分が衰えます。今まで感じなかった肌荒れや、化粧品かぶれなどのトラブルが起こりやすくなります。
「今までのスキンケアを見直す時期が更年期なのだと思います。自分でつくれなくなったバリア機能を補うためには、保湿をしっかりすることが大切。これが更年期の肌ケアの大前提です。保湿の仕方としては、まず今まで使っていた乳液、クリームなどの保湿化粧品の塗る量を多めにすることで対応しましょう。保湿の目安は、ツッパリ感がなく、手のひらが肌にピタッとくっつくくらいです。迷ったら、ティッシュペーパー1枚が肌に貼りつくくらいが目安。
更年期対応などの新しいエイジングケア成分の入った化粧品を試したくなりますが、新しい成分を試すにはリスクがあります。今使っている化粧品でトラブルがないのなら、無理に変えなくてもいいのです。もし、新しい化粧品を使ってみたければ、肌の調子がいいときに、エイジングケアの機能成分が入ったものを試してみてはどうでしょう」(慶田先生)
角栓や肌くすみにはピーリング、レチノール
また、更年期以降は、肌のターンオーバーが落ちてくるので、ターンオーバーを刺激するためのケアが必要になってきます。
「ターンオーバーのスピードが落ちると、肌がくすみ、角質成分が固まって小さな角栓になります。徐々に、毛穴が開いて見えたり、毛穴に黒ニキビのような詰まりが目立ってきたったり、肌がくすんだりします。更年期ころから起こる症状ですが、これは通常の洗顔料では溶けません。肌のターンオーバーをあげるためには、月1回程度ケミカルピーリングを行なうと肌の調子がよくなります。「乾燥しているのにピーリングをして大丈夫?」と思うかもしれませんが、ピーリングで角栓を溶かしてターンオーバーを整え、バリア成分が自分でつくれるようになることで、乾燥肌はフォローできるのです」(慶田先生)
肌のターンオーバーを上げるピーリングは、20代から取り入れるのはもちろん、更年期世代にもおすすめです。さらに、更年期世代が知っておくといい化粧品成分は、レチノールです。
「20代からレチノール(ビタミンAの一種)を使って、肌の代謝や抗酸化力を高めておくこともおすすめです。レチノールは、肌のターンオーバーやコラーゲン生成に役立つことで、シワやシミ対策などの効果が期待できます。ただし、アトピー性皮膚炎や敏感肌の方、日光に当たる方には、赤みや皮むけなどレチノイド反応が強く出るリスクがあります。皮膚科医にご相談ください。もしも使う場合は、かなり濃度を薄めてから、肌トラブルのない箇所にポイントでつけてみます。数日間連用してみて、レチノイド反応の出方を確認してみましょう。肌の丈夫な方は、週2~3回を目安にレチノールを使ってみるのはいいと思います」(慶田先生)
【慶田先生からの 更年期世代のスキンケア 基本の3か条】
1 乾燥を軽んじず十分な対策を
かゆみ、カサつきを感じない人でも、乾燥は厳禁です。乾燥状態を放置すると、軽微な炎症が持続して、ちりめんジワにつながります。ちりめんジワは、表情ジワを寄せるクセでさらに深くなるので要注意。
2 機能性化粧品より基本の保湿を
これまで使ってトラブルのなかった化粧品こそ安全です。量を増やすことで、リスクを減らして保湿ケアができます。スキンケアでプラスを得ようとするより、更年期世代はマイナスを作らないようにすることが大事。シンプルにやさしく洗って、いらないものをしっかり落とし、十分な保湿が何よりの対策。
3 光対策をする
ダメージを受けやすい更年期以降の肌は、紫外線はますます肌の大敵になります。紫外線対策をしっかりすることで、外敵から肌を守りましょう。
基本の3か条を行っている人は、シンプルなスキンケアでも肌は綺麗。費用対効果と時間効率がいいスキンケアと言えるでしょう。乾燥と紫外線対策が更年期世代のポイントですね。
お話を伺ったのは…慶田朋子(けいだともこ)先生
銀座ケイスキンクリニック院長
医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。ガルデルマ社認定ヒアルロン酸注入指導医。最新の医療機器と注入治療をオーダーメイドで組み合わせ、メスを使わないナチュラルな若返りを叶える美容皮膚科医として信頼が厚い。皮膚の働きや正しいスキンケア、生活習慣などの解説が人気で、テレビ、雑誌、ウェブなど
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