日本人の約4000万人が悩む慢性頭痛!専門医が教える、女性に多い「片頭痛」の正しい対処法

 日本人の約4000万人が悩む慢性頭痛!専門医が教える、女性に多い「片頭痛」の正しい対処法
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増田美加
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2024-05-18

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 発作的に起こり、4~72時間継続すると言われる女性に多い片頭痛。市販の鎮痛剤で対処する人もいると思いますが、いま問題になっているのが「頭痛薬の使用過多による頭痛」です。頭痛の治療薬はどんなものを使えばいいのでしょうか? 片頭痛に詳しい、頭痛治療の第一人者、清水俊彦先生に正しい対処法を伺いました。

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片頭痛をチェックしてみて!

「片頭痛」とは、どんな頭痛なのでしょうか? 頭痛治療の第一人者の清水俊彦先生に片頭痛に多い症状を聞きました。

片頭痛
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【片頭痛】

□ ズキンズキンと脈打つ痛み
□ 片側(両側のこともある)が痛む
□ 頭の前側や側頭部が痛い
□ 体を動かしたり、入浴で痛みが増す
□ 月に数回程度、痛む
□ 生理前後に痛む
□ 末になると痛む
□ 痛みがひどくなると寝込むことも
□ 日常生活に支障をきたすほど痛む
□ 頭痛が起こる前に、光・音・においが気になったり頭痛が悪化する
□ 頭痛で吐き気がしたり吐いたりする
□ 頭痛の前に片側の異常な肩こりを感じる

これにチェックがたくさんつくと、片頭痛の疑いありです。

片頭痛の特徴。頭痛の前兆が起こる?

慢性的な頭痛に悩む日本人は、約4000万人と言われています。約4人に1人は頭痛に悩んでいるというのが現状。さらに、長時間のパソコン作業やテレワーク生活などで、以前に比べて慢性頭痛に悩む人が増えています。片頭痛は、女性にとても多く、つらい痛みで、日常生活に支障をきたすような慢性頭痛(一次性頭痛)のひとつで、原因となる病気が背後にない頭痛です。男女比で約1:4と女性に多く、特に20代〜40代に集中しているのが特徴です。

「片頭痛は、発作的に起こり4~72時間持続して、片側のズキズキと脈打つような痛みが特徴です。片頭痛の名前の由来は、片側が痛むことですが、実際は患者さんの4割近くが両側の頭痛も経験しています。また後頭部、頭全体が痛い、痛む場所が変わるという方もいます。ズキズキと脈打つ痛みが多いですが、頭が締めつけられるように痛む場合もあります。ほかの頭痛との見極め方は、頭を振ったり、体を動かしてみて痛みが増したら、片頭痛の可能性が高いでしょう」と清水先生。

頭痛発作中に感覚過敏になって、ふだんは気にならないような光、音、におい、気温や気圧の変化を不快と感じる人がいます。また、吐き気や耳鳴り、下痢をともなうことも多く、階段の上り下りなど日常的な動作で痛みが増すため、寝込んでしまい学校や仕事に支障をきたすことがあります。

「それから片頭痛には、頭痛の前に“前兆のある片頭痛”と“前兆のない片頭痛”の2タイプがあります。前兆症状は、キラキラ、ギザギザした光が視界に現れて見えづらくなる(閃輝暗点)といった視覚症状が90%以上と最も多いとされています。通常は、前兆が5~60分続いた後に、片頭痛が始まります。また、頭痛が始まる前に、なんとなく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感、集中力低下、体のむくみ、首こりといった症状を起こす場合があります。これらは“予兆”と呼んで前兆と区別しています」(清水先生)

どんな人が片頭痛を起こすの?

片頭痛は、生理による女性ホルモンの変動やストレス、疲労などをきっかけに脳内物質のセロトニンの分泌が増減することで、最終的に脳血管が異常に拡張し、脳血管周囲のセンサーである三叉神経を刺激することで、痛みが起こります。頭痛が起きるときは、脳が興奮状態に陥っていることが多く、これを放っておくと、少しのことでも脳が過敏に反応しやすくなって、めまいや耳鳴りなど、ほかの症状を引き起こす(脳過敏症候群)原因になると言われています。

「片頭痛を起こしやすい体質やタイプは、光や音、におい、気温や気圧など、ちょっとした変化を読み取る敏感な脳の方に多い傾向があります。敏感な脳を持つと、それだけ脳が興奮しやすいのです。頭の回転が速く、几帳面でいい加減なことができない、こだわり屋さんといった印象です。片頭痛のある方は、日々、できるだけ脳の興奮を抑えるような生活を心がけるといいと思います。また、生理不順の人は、女性ホルモンの変動が乱れているので、頭痛回数が多くなり、悩まれている方は少なくありません」(清水先生)

天候
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片頭痛の誘因になる注意すべきことをまとめました。

【片頭痛のおもな誘因】

・睡眠不足 、あるいは寝過ぎ
・生理
・空腹
・疲れ、ストレス
・においや光、音
・人混み
・天候、気温や気圧の変化
・過度なダイエット
・赤ワインやチョコレート 

また、片頭痛は、妊娠中に起こることもあります。妊娠中は生理関連の片頭痛は治まりますが、片頭痛を放置して治療をしていない人は、脳の過敏状態から妊娠中にも起こることがあります。妊娠前には、片頭痛を治療しておくことが大切です。

片頭痛はどのように治療するの? 

「片頭痛の治療は、痛み発作が起こったときの“急性期治療”、片頭痛発作を起こす前の“予防的治療”の2種類があります。まず、急性期治療は、頭痛発作が起こったときに、早く頭痛を治めるための治療です」(清水先生)

急性期治療の治療薬としては、

① アセトアミノフェン
② NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
③ トリプタン製剤 
④ ジタン系製剤
⑤ 制吐薬(吐き気をやわらげほかの薬の吸収をよくする)があります。

片頭痛の軽症~中等度の症状には、

① アセトアミノフェン
② NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

中等度~重症の場合や軽症~中等度でも

①②で効果がない場合は、

③ トリプタン製剤 
④ ジタン系製剤 を使います。

「この中で、特効薬として、知られているのが「トリプタン製剤」です。片頭痛の原因である脳内の血管の収縮にかかわる神経伝達物質セロトニンと同じように作用して、血管の収縮を抑え、三叉神経に働きかけて、神経炎症タンパクの放出を抑制する抗炎症作用によって、片頭痛発作の痛みを和らげます。痛みの根本原因にアプローチして、痛みの頻度を軽減すると同時に、不必要な鎮痛剤の服用も減らせます。ただし、トリプタン製剤は、血管に作用するため、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など、心臓や脳血管系にトラブルのある人には、処方することができません。けれども、新しく「ジタン系製剤」のラスミジタンという薬剤が処方可能になりました。脳血管には作用せずに、脳内にある三叉神経のおおもとに直接作用して、片頭痛を軽減する薬剤です」(清水先生)

予防的に治療できる薬はあるの?

ひどい片頭痛が起こる前に予防したいという人も少なくありません。予防的治療薬には、どのようなものがあるのでしょうか?

「予防的治療薬は、頭痛発作を起こりにくくして、もし発作が起こったとしても軽く済むようにしたり、急性期の治療薬が効きやすくなるようにします。予防薬は、片頭痛発作の回数(頻度)が多い方や頭痛の程度、生活への悪影響などを基準にして選択します。おもな片頭痛の予防薬を紹介します」(清水先生)

おもな片頭痛予防薬には、

①  β遮断薬(プロプラノロール) 
②抗てんかん薬 (バルプロ酸ナトリウム)
③  抗うつ薬(アミトリプチリンなど) 
④  Ca拮抗薬(ロメリジン塩酸塩)

などがあります。

「これら内服薬の予防薬を処方することもありますが、新たに「抗CGRP抗体薬」もしくは「抗CGRP受容体抗体薬」という自分で注射できる自己注射剤(総称して抗CGRP関連抗体薬と呼ぶ)も処方できるようになりました。なんらかの理由で内服薬の予防薬が使えない、もしくはトリプタン製剤で効果が得られず、寝込んでしまうような症状の重い方は、新たな治療の選択肢になります」(清水先生)

市販の鎮痛剤は使ってもいい?「薬剤の使用過多による頭痛」に要注意

忙しくてすぐに医療機関を受診できない、今このつらい痛みをなんとかしたい場合には、市販の鎮痛剤を使うことがあるかと思います。そんなときに大事なのは、飲むタイミングです。

「片頭痛の場合、痛みがひどくなってから服用しても、嘔吐してしまって間に合わないことがあります。異常な空腹感や肩こり、生あくびが出る、トイレに行く回数が減る、体がむくむなど、片頭痛の“予兆”を感じた時点で、薬を服用しましょう。また、市販の鎮痛剤を選ぶときは、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェン、メフェナク酸、インドメタシン、ジクロフェナク、ナプロキセンなどの“単一成分”のものを選びましょう。“複合成分”の鎮痛剤、“カフェイン配合”のものは、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」を起こしやすいので注意が必要です。「気管支喘息がある方は、アスピリンやほかの鎮痛成分でも喘息発作を誘発しやすいので医師や薬剤師さんに相談しましょう」(清水先生)

市販の鎮痛剤を安易に、くり返し利用していると、痛みが慢性化してしまい、その鎮痛剤が原因となって「薬剤の使用過多による頭痛」に陥ります。月に1~2回、1~2錠飲む程度ならOKですが、週に2~3回飲むなど、使用量が増えてきたときは、病院を受診してください。月10回以上、市販の鎮痛剤を飲んでいる人は、一度は病院へ行きましょう。

「脳過敏性症候群」にならないためにも

片頭痛を対処せずに放っておくと、脳が過敏に反応するようになり、つねに脳に興奮状態が残ってしまいます。年をとってから、頭痛が軽くなっても、耳鳴り、めまい、睡眠障害、情報処理能力の低下などの症状をきたす「脳過敏症候群」になる可能性が高くなることが危惧されています。

「市販の鎮痛剤では、根本治療になっていません。頭痛はれっきとした病気なのです。自分の頭痛はどういう頭痛かをまず知るためにも、ぜひ頭痛の専門医を受診して欲しいと思います」(清水先生)

参考資料/一般社団法人日本頭痛学会 「市民・患者さんへ」

https://www.jhsnet.net/ippan.html

 

お話を伺ったのは…清水俊彦(しみずとしひこ)先生

東京女子医科大学 評議員
脳神経外科 頭痛外来 客員教授
医学博士 。日本脳神経外科学会専門医。日本頭痛学会専門医。米国頭痛学会正会員。汐留シティセンターセントラルクリニック頭痛外来ほか多数の病院で1日平均約200人の患者を診察する頭痛治療の第一人者。著書に『頭痛は消える。』(ダイヤモンド社)最新刊『ウルトラ図解 おとなと子どもの頭痛』(法研)ほか多数。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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