専門医が推奨!「ストレートネックによる肩こり」改善ストレッチ&マッサージ【更年期の肩こり対策】
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。女性の不快症状の第1位が肩こり。スマホやパソコンによるスレートネックが原因の肩こりも増えています。つらい肩こりを効果的に改善するストレッチやマッサージ法を女性のヘルスケアにも詳しい整形外科医の青山朋樹先生に伺いました。
女性に多い肩こりの真相は?
肩こりに悩んだことがない女性は、いないのでは? 肩こりは女性にとって究極の悩みです。なぜ、肩こりに悩まされるのでしょうか?
「筋肉と関節から、いくつかの原因が説明できます。
①加齢によって肩周辺の組織がもろくなり始めること、
②関節の動きをスムーズにする関節包や滑液包の潤滑液が減ってくること、
③肩関節は動く範囲が大きいために、骨以外の組織が引っ張られやすいこと
などがあります。
筋肉と関節の老化によって、年を重ねるごとに、筋肉、筋膜などの筋バランスが悪くなってきてしまうのが、肩こりが増えてくる要因です」と青山朋樹先生。また、隠れた要因として、ストレスなどの心因性のものもあります。血流が悪いことも大きな要因になります。ごくまれですが、内臓の病気や乳がんなどによる肩周辺の痛みもあります。肩やその周辺の首、背中の強い痛みが続く場合は、病院で相談してください。
ストレートネックが肩こりの原因に
頸椎(首の骨)が真っすぐになっているストレートネックも、肩こりの原因に多いと言われています。横から見ると、背骨は首から腰にかけてS字カーブを描いています。けれども、スマホやPCの画面を覗き込むような悪い姿勢で見ていることによって、自然な背骨のカーブが失われ、真っすぐになってしまうのです。ストレートネックは、病名ではなく状態を表す言葉ですが、ストレートネックが原因で、肩こり、首こり、頭痛や腰痛まで起こすこともあります。
「ストレートネックのいちばんの原因は、やはりスマホやPCを長時間悪い姿勢で見ることです。普段から猫背ぎみの人は、頭が胸よりも前に出て、ストレートネックになりがちです。枕の高さが原因になるという指摘もありますが、寝た状態では重力がかかる方向が異なり、頭の重さが首に負担をかけないため、主要な原因とは言えません。特に女性は、なで肩体型の方で、肩回りの筋力が弱い方が多いため、負荷がかかりやすく、男性に比べて、ストレートネックになりやすい方が多いです。10代から肩こりがあると悩む女性の方も少なくありません。もちろん、生活習慣だけでなく、生まれながらの体形で肩こりになりやすい方もいます」(青山先生)
ストレートネックのハイリスクは?
・普段から姿勢が悪く猫背(前屈み)
・デスクワークが多い
・仕事でノートPCを使っている
・スマホを長時間使用する
・多忙でストレスが高い
これらに当てはまる方は、ストレートネックになっている可能性が高いと言えるでしょう。スマホを使うときに、注意することはありますか?
「スマホを長時間使用するとストレートネックになりやすいのは、操作するときに顔が下を向きがちだからです。その姿勢は、頭が体の前に出て、ストレートネックの状態になっているわけです。スマホは、なるべく顔の正面か、視線をほんの少し下げるくらいの位置に持ち上げてみましょう。タブレットも、できればスタンドを使って、机に置いて見るようにするといいでしょう。長時間、首を前に傾けないようにすることが大切です。 また、忙しかったり、ストレスが多かったりすると、交感神経が優位になって、首や肩の筋肉が緊張し固まってしまい、ストレートネックの状態が定着してしまいます。肩回りを動かして、固まらないように、血行をよくすることも大切です」(青山先生)
肩こりに効果が高いエクササイズやストレッチ
「肩こりを防止するためには、筋肉を動かすことが大切。簡単にできて効果のあるストレッチやエクササイズ、マッサージポイントなどを紹介します。デスクワークが長く続くときは、できれば1時間に1回、立ち上がってください。そのときに簡単にできるエクササイズとストレッチを紹介します」(青山先生)
【肩甲骨のエクササイズ】
肩甲骨を動かすことで、肩こりを改善、予防できます。腕を大きく回すことで、肩甲骨も一緒に動きます。内回し、外回し10回ずつを1セットとして行います。
【首のストレッチ】
首を左右にゆっくりと倒します。首周りの筋肉が伸びます。前後も同様にゆっくりと倒します。左右、前後、それぞれ10秒ずつ行います。
【肩と肩甲骨周りのマッサージのポイント】
肩こりの予防や改善にすぐ効果があるマッサージのポイントは、肩甲挙筋(けんこうきょきん)と菱形筋(りょうけいきん)です。
①首から方に向かってついているのが肩甲挙筋。この肩甲挙筋の肩のつけ根にある三角形のポイントを重点的に押します。
②菱形筋は、肩甲骨に張り付いている筋肉です。肩甲骨にくっついているところを上から下に向かってマッサージします。
自分ではできないので、マッサージしてもらうか、道具を使います。道具は、筋膜リリースに使う筒形のフォームローラーやマッサージボール、マッサージ棒などがいいでしょう。
「また、セルフケアとしては、血行を良くするために、体を温めることが大切です。肩こりの方は、血行促進のために、シャワーだけで済ませずに、湯船に温まることをおすすめします。運動は、腕をしっかりふって、早めの速度で歩くウォーキングがおすすめ。姿勢もよくなりますし、リラクゼーション効果も期待できます」(青山先生)
肩こり治療の湿布剤は冷感 or 温感?
肩こりで市販の湿布剤を使うときは、冷感と温感のどちらを使うのがよいか迷う人が多いと思います。
「消炎鎮痛薬は、冷湿布でも温湿布でも効果は同じです。どちらでも気持ちのいいほうで構いません。肩こりは、筋肉が硬くなって血流が悪くなっているので、血流をよくしてリラクゼーションになるという意味では温湿布がいいかもしれません。でも、冷湿布でも気持ちよければそれでOKです」(青山先生)
整形外科などのクリニックを受診すると、どのような治療になりますか?
「肩こりの原因は、骨(頸椎)、筋肉、神経、血行、メンタルなどがありますが、どれであれ、病院で行う治療はお薬を使うのが共通した治療法です。薬物療法には、外用薬、内服薬、注射薬の3つがあります。外用薬には、消炎鎮痛薬を配合した湿布やローション、ゲル、スプレーなどがあります。使い勝手が良いものを医師と相談して選びましょう。肩こりの治療で使われる内服薬には、炎症を抑えて痛みを軽減させる消炎鎮痛薬や、筋肉の緊張を緩めて血流を改善する筋弛緩薬などがあります。そのほか、筋肉の疲労をやわらげて神経機能の回復や筋肉の疲労回復を促すビタミンB1やB6が使用されることもあります。また、ビタミンEは血流を改善、ビタミンB12は神経の機能を回復させるといった効果も期待できます。そのほか、漢方薬もあります。
痛みが筋膜や筋肉の表面近くなら外用薬で、より体の奥のほうの痛みなら内服薬が適しています。外用薬も内服薬も、痛みを抑えるには同じ効果が期待できますが、胃腸が弱い人や眠くなるのがイヤな人は、外用薬で対処するほうがいいかもしれません。飲み薬、外用薬でも痛みが改善しない場合、注射という選択肢もあります。2タイプあり、筋肉への注射と神経への注射です。筋肉への注射は、局所麻酔薬やステロイド薬を行ないます。神経への注射は、肩こりの原因となる神経に注射する神経ブロック注射を行ないます」(青山先生)
セルフケアではどうにもならないときは我慢せず、整形外科で治療すると薬の選択肢も多数あって心強いです。”温めること””動かすこと”が重要ということもわかりました。
お話を伺ったのは…青山朋樹(あおやまともき)先生
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 専攻長
医学博士。群馬大学医学部医学科卒業。京都大学医学研究科博士課程。京都大学医学部附属病院整形外科ほかを経て現職。専門はリハビリテーション医学、整形外科学、再生医学。運動を用いた健康アプローチとしてのトレーニングをウィメンズヘルスのほか、幅広い分野で研究している。
AUTHOR
増田美加
増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon
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