膠原病「シェーグレン症候群」は更年期世代に発症しやすい! 気をつけたい症状とは?専門医に聞く


“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。大河ドラマ、連続テレビ小説を除くNHKドラマ史上過去最高の視聴率で話題のドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』で桜井ユキさんが演じる主人公の麦巻さとこは、膠原病(こうげんびょう)を患う女性。なかでも「シェーグレン症候群」は、40代~60代の女性が発症しやすい病気です。何に気をつけたらいいのか? 早期発見のための症状の見極め方とは? について膠原病専門医に聞きました。
「シェーグレン症候群」ってどんな病気?
ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)で桜井ユキさんが演じる主人公・麦巻さとこは「シェーグレン症候群」。女性に特に多いとされているシェーグレン症候群とは、どのような病気なのでしょうか?
「シェーグレン症候群は、膠原病の一種。涙や唾液を作っている目や口などの粘膜を中心に炎症を起こす全身性の自己免疫疾患です。
自分の身体の成分に対して免疫反応を起こすことによる疾患で、遺伝的要因、ウイルスなどの環境要因、免疫異常、さらに女性ホルモンの要因が考えられています。40代~60代の女性に発症しやすい病気です。男女比は1:17と圧倒的に女性に多く、日本には7~8万人の患者さんがいる指定難病の1つです。
また、女性の中では、診断には至らないものの約1割の方が特有の自己抗体(抗SS-A抗体)を保有していると言われています。関節リウマチの患者さんの約20%にシェーグレン症候群が発症します」と話す平松ゆり先生。
おもな症状には、ドライアイ(目の乾燥)、ドライマウス(口腔乾燥)があり、そのほかにドライバジャイナ(腟の乾燥)があります。
ドライアイの症状は、目がゴロゴロする、目が疲れやすい、まぶしく感じるなどがあり、ひどくなると角膜に傷がついて、乾燥性角結膜炎や表層性角膜びらんなどが起こります。
ドライマウスは、口が乾く、パンなどのパサパサしたものが食べにくい、長く話すと声がかれるなどの症状です。唾液が少なくなるため、虫歯や歯周病になりやすく、味を感じなくなるなどの味覚障害が生じることもあります。
乾燥症状以外では、約半数の人に、全身倦怠感、関節痛、皮疹、日光過敏症、間質性肺炎、神経障害、腎障害、筋症状、血液検査異常などの全身の病変が起こることがあるとされています。
「特にドライアイやドライマウス、関節痛、倦怠感は、更年期の症状としても起こりやすいものです。自己判断で更年期症状だからと思いこまずに、つらい症状を感じたら、内科を受診して検査をすることが早期発見のためにも大切です」(平松先生)

病院ではどんな検査や治療をするの?
病院を受診すると、どのような検査をするのでしょうか?
「血液検査で白血球減少や血小板数低下、免疫グロブリンの増加、自己抗体(抗核抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、リウマトイド因子など)が陽性かどうかを調べます。涙や唾液の分泌量も調べます。唾液腺や涙腺の一部を取り、炎症細胞の存在を確認することで確定診断をする場合もあります」(平松先生)
もうひとつ、発見のポイントとして知っておきたいことは、血縁に膠原病の人がいる場合はハイリスクだということ。目や口などの乾燥症状がある場合は、定期的に歯科、眼科で診てもらうことも大切です。不妊治療をしている方が、一連の不妊検査で自己抗体陽性が見つかることもあります
治療はどのようなことをしますか?
「残念ながら、根本的に病気の治癒を目指す治療法はありません。ドライアイ、ドライマウスの治療は、いずれもその症状をケアするための対症療法になります」(平松先生)
ドライアイには、涙を補充するために人工涙液が用いられます。また、水分保持効果のある「ジクアス点眼®」や粘液を産生する細胞を増やす「ムコスタ点眼®」などの点眼薬も認可されています。そのほか、ドライアイ眼鏡の着用、涙の出口である涙点をふさいで涙の排出を抑える方法(涙点プラグ、涙点縫合)もあります。
ドライマウスに対しては、飲水やうがいといった日常的なケアを中心に、人工唾液や保湿成分が入ったジェルなどを用います。また、唾液そのものを出しやすくする薬を処方されることもあります。
もしも肺や神経、関節などの症状がある場合には、重症度に応じてステロイドや免疫抑制薬が使用されることもあります。
シェーグレン症候群は、難病指定されているため、重症度によって医療助成の対象になります。

セルフケアでできることは?
「シェーグレン症候群は長期間にわたる慢性炎症性の疾患です。体力を消耗しやすいため過労を避け、ストレスをため込まないような生活を心がけて下さい。日常生活での注意点は、乾燥性角結膜炎を早期発見することが大事。また、虫歯、歯周病になりやすいので、その予防も重要。そのため、定期的に眼科や歯科を受診してください」(平松先生)
また、パソコンなどで目を酷使することや、直射日光、エアコンによる乾燥、煙や埃の多い環境を避けるようにしましょう。冷暖房を使う時期は、室内が乾燥するので、加湿器などで乾燥を防ぐことが大切です。
虫歯や歯周病の予防のためには、砂糖を含む食事をできるだけ減らすことです。辛すぎるもの、アルコールの飲みすぎは控えましょう。口腔内環境の改善のために、禁煙は特に重要です。
洗口液は、アルコールフリーの無刺激のものを選ぶといいでしょう。ストレスをためないようにすることも大事です。
普段、ほかの薬を飲むときには、副作用として口の渇きが起こるものもありますので、主治医や薬剤師さんに確認しましょう。
「シェーグレン症候群は、臓器障害がなければ、重篤な状態になることはほとんどありません。セルフケアなどのちょっとした工夫で不快症状を和らげてください。
ひとつ気をつけて欲しいのは、シェーグレン症候群をお持ちの女性が妊娠した場合、抗SS-A抗体陽性の方の1%未満ですが、自己抗体が胎盤を通過して赤ちゃんに移行して赤ちゃんに重度の不整脈が出ることがあります。頻度は高くありませんが、妊娠を希望していたり、妊娠された場合は、ぜひ主治医に相談してください。また妊活中においては腟の乾燥症状で夫婦生活が困難になる場合もありますので、気になる場合は婦人科で相談していただくと良いかもしれません」と平松先生。
40代~60代の更年期世代に多い病気なので、症状があれば受診をして、更年期の症状なのか、ほかの病気なのかを見極めることが大事です。
ドラマの描写でもあるように、規則正しく、無理をしない日常生活を心がけましょう。

監修医師/平松ゆり(ひらまつゆり)先生
大阪医科薬科大学病院リウマチ膠原病内科 母性内科外来
2009年関西医科大学医学部卒業。大阪医科大学リウマチ膠原病内科入局。大阪医科大学大学院医学研究科博士課程修了。2018年より大阪医科大学リウマチ膠原病内科助教(現・大阪医科薬科大学)。2013年より同大学病院で膠原病疾患女性の妊娠をサポートする母性内科外来を開設、担当(現在非常勤勤務)。日本内科学会認定医、日本リウマチ学会専門医・指導医、評議委員。日本女性医学会女性ヘルスケア専門医、日本母性内科学会診療プロバイダー。
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