【更年期世代】の猫背、浮き輪肉、垂れ尻を美姿勢に変える方法|1万5千人をリハビリした専門家が伝授

 【更年期世代】の猫背、浮き輪肉、垂れ尻を美姿勢に変える方法|1万5千人をリハビリした専門家が伝授
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増田美加
増田美加
2024-03-09

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。骨量と筋肉量が低下していく更年期以降は、美しい姿勢を保つのが難しくなってくる年代です。けれども、いくつかの克服ポイントを身につければ、日常のちょっとした時間で、美姿勢を維持するトレーニングができます。1万5千人以上をリハビリで変えた理学療法士、田舎中真由美さんに聞きました。

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骨盤の後傾姿勢は、百害あって一利なし!

「長時間、同じ姿勢でいることが最も体に負担がかかります」と話す1万5千人以上の体を理学療法士としてケアしてきた田舎中真由美さん。なかでも負担が大きいのは、デスクワークやパソコン作業などによる座位姿勢です。椅子の背もたれに寄りかかって座っていると、背中の筋肉が伸び過ぎ、骨盤は後傾します。おなかは、つぶれてたるみ、腹筋をまったく使っていない状態です。女性にとって大切な骨盤底筋もほとんど使われていません。筋肉は使わないと弾力がなくなり、硬くなっていくのです。

「骨盤が後傾した姿勢で長くいることは、百害あって一利なしです。腸腰筋も骨盤底筋も弱くなり、ハムストリングス(太もも裏)や股関節も硬くなります。股関節の硬さとハムストリングスの過緊張は、腰痛の大きな原因になります」と田舎中さん。

良い姿勢では、骨盤を立てた状態でいることです。背中の脊柱起立筋が使われ、腸腰筋や骨盤底筋も同時に使えます。

「昔は、和式トイレや拭き掃除で、日常生活の中にこれらの筋肉トレーニングが組み込まれていて、股関節の柔軟性も保たれていました。しかし、現代の生活スタイルでは意識して運動をして筋肉を使わないと、腸腰筋や骨盤底筋は維持できません」(田舎中さん)。

姿勢が歪むと、首やあごが前に出て、猫背、肩こり、腰痛、お腹ポッコリ、尿もれにも関係します。立ち姿は、年齢を如実に感じさせるポイントです。いつまでも美しい後ろ姿を維持するためには、いくつかのコツがあります。

「美姿勢」のために克服すべきは腸腰筋と肋骨です

美しい姿勢を維持するために、意識すべきポイントは、下半身の腸腰筋と、上半身の肋骨です。

「歪むのは、骨盤だけではありません。体は、骨、筋肉、筋膜で全身が繋がっています。上半身も下半身もまんべんなくアプローチして、体全体の歪みを克服することが大切です」と田舎中さん。

下半身のポイント「腸腰筋」

イラストAC
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「デスクワークが長時間続くと、股関節は硬くなります。すると、骨盤は後傾して、猫背になり、姿勢が崩れます。良い姿勢を維持するには、股関節の柔軟性に大きな役割をもつ、腸腰筋の筋力と柔軟性を高めることが大切です。腸腰筋は、上半身と下半身をつなぐインナーマッスルで、姿勢の維持に重要な役割を果たしています。まず、股関節の柔軟性をみるために、前屈でチェックしてみましょう」(田舎中さん)

「前屈」チェック
前屈で手が床に全くつかない場合 ⇒ 床に手が届かない人のほとんどは、ハムストリングス(太もも裏)の使いすぎで股関節が硬くなっているのです。腰への負担が強く、腰痛になりやすいので、注意しましょう。ハムストリングスを緩めることから始めてください。

<やり方> 
椅子に座って、両太もも裏にテニスボール、または筋膜リリース用のボールを当て、体を左右にふってマッサージします。少しずつ、ボールの位置をずらします。ハムストリングス全体をまんべんなく緩めることで、前屈で上体を倒すときに邪魔をしていた股関節の硬さがほぐれます。

「前屈」チェック
指が床につく、もう少しでつきそうな場合 
⇒ 腸腰筋のトレーニングをしてみましょう。

<腸腰筋のトレーニングやり方>
骨盤が後傾していると猫背になり、股関節が硬くなります。骨盤を立ててよい姿勢を維持するために、骨盤の後傾を防ぎ、腸腰筋の筋力と柔軟性をつけるトレーニングをしてみましょう。

①床にあお向けになって、両膝を立てます。両脚は平衡にして、腰幅に開きます。
②片方の膝の間にバスタオルを折り畳んだものを挟み、挟んだほうの脚を付け根で折っておなかのほうに近づけていきます。
③前ももには、なるべく力を入れず、腸腰筋を使って動かすように意識します。反対側の脚も同様に行います。両脚各10回を3セット、行います。

「座り方、立ち上がり方の動作を意識することでも、腸腰筋トレーニングになります。恥骨から、みぞおちの間をラップで包んでいると思って、腰を折り曲げたり、おなかを縮めたりはしないでください。立ち上がるときには、太ももの付け根を折って、お尻を突き出すように“プリケツ”を意識して立ち上がります。座るときも同様で、プリケツを意識。腰を丸めないことが大事です」(田舎中さん)。

上半身のポイント「肋骨」

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「体の歪みは骨盤だけでなく、上半身の胸(肋骨)にも生じます。特に、パソコン作業や家事で前のめりになる姿勢を多くとる人は、猫背、まき肩になりやすいのです。肋骨はたくさんの骨からできているので、歪みやすく調整が必要な場所です。肋骨が柔軟になって胸が開けば、呼吸が楽になり体も動きやすくなります。上半身の柔軟性チェックのために、壁でバンザイをしてみましょう。壁によりかかり、足を1歩分前に出し、頭、胸、お尻は壁につけたまま、両手をあげて手と壁の距離を確認してみましょう!楽に手の甲が壁につきますか? 試してみてください」(田舎中さん)

「壁バンザイ」チェック
手と壁に隙間があり、手の甲が付かない場合
 ⇒ 背面から胸(肋骨)と背骨をほぐしましょう。

<胸(肋骨)のほぐしのやり方>
胸の伸展をよくして胸を開きやすくするためには、背面からほぐすことがお勧めです。肩甲骨が前に入りがちで、猫背、まき肩になっている人に効果的です。後ろの胸(肋骨)周りの筋肉が緩むだけでなく、前側の硬い筋肉も間接的にほぐすことができ、肋骨の開きがスムーズになります。あお向けに両膝を立てて寝て、肩甲骨の下にテニスボール、または筋膜リリース用のボールを当て、体を左右に振って肩甲骨全体をほぐします。ボールの位置を前後に数か所動かしながら2~3分行います。

「壁バンザイ」チェック
手の甲がしっかりつく場合
 ⇒ 胸ひらきのストレッチ“胸パカ”をしましょう。

<胸パカのやり方>
肋骨の柔軟性をさらに高めます。前かがみ姿勢で弱くなった背面の筋肉をしっかり使い、つぶれない胸を作ります。

①椅子に浅く座り、座面に尾骨を立てる意識で腰を伸ばします。両腕は自然に下ろしておきます。
②両手を親指から外側に返して、手のひらを外側に向けながら、両腕を上体の少し後ろへグーッと開いていくと、胸が開き“胸パカ”に。肩甲骨を中央にグッと寄せて、みぞおちを斜め上に向けるように意識して行います。
③そのまま両手を広げた姿勢で、指までしっかり伸ばしつつ、ゆっくり呼吸を3回行います。左右の肋骨に空気を入れるイメージで。①~③を3回繰り返します。

「背中が丸く、腰が落ちた猫背の姿勢は、年齢より老けて見えます。胸をひらくことで、肋骨や骨盤が本来の正しい位置へと戻り、それだけで背筋もシャンと伸びて、美姿勢になります。疲れにくく、ひざや腰に痛みの出ない体を手に入れましょう」(田舎中さん)

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お話を伺ったのは…田舎中真由美(たやなかまゆみ)さん

理学療法士、「フィジオセンター」センター長。臨床経験29年。腰痛、尿もれ、骨盤臓器脱などの骨盤底筋のトラブルに対する骨盤調整、運動指導が専門。著書に『胸ひらきで調子のいい自分がずっと続く』(主婦の友社)ほか多数。https://s-d-m.jp/talents/myumi-tayanaka/
フィジオセンター:リハビリテーションの専門家として体づくりをサポート。病気やケガ、日常生活の体の痛みなど状況、目標に合わせ最適なプログラムを提案。完全予約制。

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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