更年期でも元気になった人に、共通していたこと。多くの相談を受けてきた私が言える、たったひとつのこと
更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。
「私も元気になりますか」
この質問をいただくたびに、少しだけ言葉を選びます。
「大丈夫ですよ」
そう言えたらどんなにいいだろう、と思います。
でも、更年期はそんなに単純ではありません。
昨日は元気だったのに、今日は動けない。
少し良くなったと思ったら、また体調を崩してしまう。
そんな波を繰り返す方を、これまでたくさん見てきました。
だから、「必ず元気になります」と簡単には言えません。
でも、一つだけ言えることがあります。
それは、相談を続けていると、「以前より元気になりました」と話される方には、ある共通点があるということです。
もちろん、最初からそうだったわけではありません。
むしろ最初は、皆さん同じように不安そうな表情をされています。
「何をやっても変わらないんです」
「サプリメントも試しました」
「運動も頑張ってみました」
「でも、良くならなくて……」
そう話される方は少なくありません。
だから私は、相談が始まってすぐに「これをやってみましょう」とお伝えすることは、ほとんどありません。
まずはお話を聞きます。
どんな毎日を過ごしているのか。
いつからつらくなったのか。
何が一番困っているのか。
一つずつ、一緒に整理していきます。
すると、不思議なことがあります。
最初は「体調が悪い」という話だったはずなのに、途中から仕事の話になる方がいます。
ある方は、お母さんの介護の話になりました。
また別の方は、「実は夫には何も言えていなくて」と話し始めました。
「こんなことまで話すつもりじゃなかったんですけどね」
そう言って笑う方もいます。
体の相談だと思って来られたのに、お話を聞いていくと、生活そのものが見えてくる。
私は、この時間がとても大切だと思っています。
なぜなら、更年期は体だけの問題ではないことが多いからです。
仕事もある。
家族のこともある。
親のこともある。
子どものこともある。
そんな中で、「体調だけ何とかしよう」と思っても、なかなかうまくいかないことがあります。
だから私は、「体調を治す方法」を探すより先に、「今、どんな毎日を過ごしているのか」を一緒に見ていきます。
相談を始めたばかりの頃は、「何を食べればいいですか」「どんな運動をすればいいですか」という質問をよくいただきます。
もちろん、それも大切です。
でも、私がもっと気になるのは別のことです。
ちゃんと眠れていますか。
休めていますか。
「しんどい」と言えていますか。
自分よりも家族を優先していませんか。
その答えを聞いていると、「体調が悪い理由」を探すというより、「今までどれだけ頑張ってきたか」が見えてくることが少なくありません。
そして私は、その頑張りが悪いとは思っていません。
家族を大切にしてきたから。
仕事に責任を持ってきたから。
だからこそ、今の自分がいる。
でも、その頑張り方を、この先もずっと続けられるかというと、そうではない時期が来ることもあります。
更年期は、そんなことを体が教えてくれている時期なのかもしれません。
「最近ちょっと違うんです」
相談を続けていると、こんな言葉を聞く日があります。
以前なら、一週間体調を崩すと、「また振り出しに戻ってしまった」と落ち込んでいた方が、「今回は少し休んだら戻れました」と話してくださる。
「前ならできなかったんですけどね」
そう言って笑う表情が、初めてお会いした頃とは少し違って見えることがあります。
私は、その変化を見るたびに思います。
元気になったというより、「体との付き合い方」が変わったのだ、と。
もちろん、その方も疲れます。
眠れない日もあります。
体調を崩すことだってあります。
でも、一つ違うことがあります。
以前は、体調が悪くなるたびに、「どうして?」と原因を探していました。
「あの食事が悪かったのかな」
「昨日無理をしたからかな」
「また更年期が悪化したのかな」
一つひとつの出来事を、別々の問題として考えていたのです。
でも、少しずつ元気を取り戻していく方は、その見方が変わっていきます。
「最近、少し無理が続いていました」
「睡眠不足も重なっていました」
「仕事も忙しかったですね」
一つの出来事だけを見るのではなく、「最近の自分」を見るようになるのです。
私はこれを、「点」ではなく「線」で考えられるようになった、と感じています。
相談の中でよくお伝えすることがあります。
「今の体調だけを見ないようにしましょう」
今日だけを見ると、不安になります。
でも、一か月前と比べるとどうでしょう。
半年前と比べるとどうでしょう。
「そういえば、前より眠れる日が増えました」
「家族に頼れるようになりました」
「無理をする前に休めるようになりました」
そんな変化に、ご本人が気づくことがあります。
大きく変わったわけではありません。
でも、小さな変化は確かに積み重なっています。
そして、その小さな変化を見つけられるようになることも、「元気になる」ということの一つなのではないかと思うのです。
だから私は、「早く元気にならなきゃ」と焦らなくていいと思っています。
更年期は、体だけではなく、これからの生き方を見直す時期でもあります。
今までと同じ頑張り方では苦しくなることもあります。
だからといって、頑張ってきたことが間違っていたわけではありません。
これからは、自分の体も大切にしながら生きていく。
そのために、少しずつ暮らしを整えていく。
相談を通して元気になっていく方に共通していたのは、食事でも、運動でも、サプリメントでもありませんでした。
もちろん、それらを見直すことは大切です。
でも、それ以上に変わっていたのは、「体との向き合い方」でした。
「昨日までできたから、今日もできるはず」
そんな考え方から、
「今日は今日の体調で考えよう」
そう思えるようになったとき、皆さんの表情が少しずつ変わっていくのです。
更年期は、「以前の自分」に戻ることを目指す時期ではないのかもしれません。
今の自分に合った暮らし方や、働き方、休み方を見つけていく時期。
そう考えると、「変わってしまった」と感じていた体も、「これからの自分を教えてくれている存在」に思えてきます。
「先生、私も元気になりますか」
あの質問をいただいたとき、私は今でも簡単に「大丈夫ですよ」とは言えません。
でも、こうお伝えすることはできます。
「焦らなくて大丈夫です。一つずつ、自分の体の声を聞けるようになると、少しずつ景色は変わっていきます」
これまで多くの方を見てきて、その言葉だけは、自信を持ってお伝えできます。
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