命に関わることもある?鎮痛剤を飲んではいけない〈危険な頭痛〉とは|薬剤師が解説
日本の4人に1人は、慢性的な頭痛に悩まされているといわれます。頭痛には市販の鎮痛剤などを利用し、一時的に頭痛の痛みを和らげてよいものと、鎮痛剤を使用してはならず、すぐにでも医療機関を受診しなければならないものがあります。その違いはどこにあるのか。この記事では、鎮痛剤を使用してはいけない頭痛の原因や症状について解説します。
頭痛は“一時性頭痛”と“二次性頭痛”に分けられる
頭痛は、緊張型頭痛や片頭痛など慢性頭痛ともよばれる「一時性頭痛」と、すぐにでも治療が必要な「二次性頭痛」に分けられます。一時性頭痛は、命に関わることはないタイプの頭痛で、いわゆる頭痛持ちと呼ばれる人の多くは一時性頭痛に該当します。
一時性頭痛の7~8割は「緊張型頭痛」が占め、主に次のような症状が起こります。
・毎日のようにだらだらと痛む。
・頭が締めつけられるように鈍い痛みがある。
・体を動かすと痛みが和らぐ。
・首や肩周りのこりを伴い、めまいがすることもある。
・吐き気や嘔吐はなく、音や光に過敏に反応することはない。
・家事や仕事ができないほどの激痛ではない。
同様に、一時性頭痛に該当する「片頭痛」の場合は、次のような症状が起こります。
・週1回から月1~2回、発作的に痛む。
・片側か両側のこめかみ周辺がズキンズキンと痛む。両側に起こる場合でも、左右で痛みの度合が異なる。
・体を動かすと痛みが増す。
・吐き気を伴い、光や音に敏感になる。
・家事や仕事が困難なほど痛むこともある。
・発作の直前に目がチカチカする(閃輝暗点)など前兆が起こることがある。
こうした頭痛の場合は、一時的に鎮痛剤をのんで症状を和らげても問題はないでしょう。ただし、市販の鎮痛剤を用法・用量通りにのんでも痛みが治まらず、月10回の服用を超えたら専門医に相談してください。
一方、二次性頭痛の場合は、脳や体に異常があって起こるもので、場合によっては命の危険にもつながります。二次性頭痛の原因となる病気には、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎、慢性硬膜下血腫などがあげられます。それぞれの特徴は、次の通り。
・クモ膜下出血……突然、かなづちで殴られたような激しい頭痛に加え、嘔吐、けいれん、意識障害が起こる。
・脳梗塞……数時間のうちにどんどん頭痛がひどくなる。物が二重に見えたり、麻痺やろれつがまわらなくなるといった障害を伴うこともある。
・脳出血……頭痛とともに片麻痺(半身まひ)、顔面神経麻痺、意識障害などが起こる。高血圧の人に多い。
・脳腫瘍……1カ月のうちにどんどん頭痛がひどくなる。嘔吐、ひきつけ、視力の障害を伴うこともある。
・髄膜炎……頭部全体の強い痛みとともに高熱、吐き気、嘔吐、首が硬くなる、けいれんなどの症状が出る。
・慢性硬膜下血腫……高齢者に起こりやすく、頭部の打撲後、1~3カ月後に発症。頭痛に加え、吐き気や認知症の症状も出る。
二次性頭痛による痛みを、鎮痛剤などを服用してごまかそうとすると、元となる病気の発見が遅れたり、病気を見過ごして症状が悪化したり、場合によっては命にも関わるため鎮痛剤をのんで症状を和らげようとしてはならず、すぐにでも医療機関での治療が必要となります。
また、二次性頭痛の場合、次のような症状が起こるのも特徴です。
・突然、急激な頭痛が起こる。
・いつもとは様子の異なる痛み。
・いつも使っている頭痛薬が効かない。
・今までに経験したことのないような強烈な痛み。
・頭痛の頻度と程度が増していく痛み。
・原因不明の高熱や麻痺、嘔吐、歩行障害、言語障害、物が見えにくいなどの症状を伴う。
・50歳以降になり、始めて起こる頭痛。
こうした頭痛の場合は、鎮痛剤を使用せず(もしくは中止して)、直ちに医療機関(内科、神経内科、脳神経外科)を受診してください。
まとめ
頭痛の多くは、生活習慣や精神的ストレス、睡眠のリズム、気圧の変化などが原因で起こる一時性頭痛で、“問題のない頭痛”といえます。この場合、市販の鎮痛剤などを使用し、一時的に痛みを抑えてもよいでしょう。
しかし、命にも関わる重大な病気が原因で起こる二次性頭痛は、“危険な頭痛”といえ、鎮痛剤を服用することで病気の発見が遅れ、大事に至ることもあります。万が一の事態に備えるためにも、一時性頭痛と二次性頭痛の違いを知って対処することが大切です。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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