むしろルッキズムを“使ってやる”。違いを武器にする生き方|前川裕奈さん×小原ブラスさん【前編】

むしろルッキズムを“使ってやる”。違いを武器にする生き方|前川裕奈さん×小原ブラスさん【前編】

容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。 第24回は、テレビコメンテーターやコラムニストとして活躍するタレントの小原ブラスさんをゲストにお迎えしました。ロシアで生まれ、幼少期から日本で育ったブラスさんがルッキズムについて感じていることを中心におしゃべりしました。

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「ロシア人だから」じゃなくて「私だから」

小原:今日はルッキズムの対談ですけど、正直、私の場合は「見た目で判断されない」ということがわからなくて。6歳でロシアから日本に引っ越してきて、見た目も背景も周りと違うのが当たり前すぎたから。きっとルッキズムに晒されてきたと思うんですけど、それを悩むまでも至らない状態だったんですよね。学校でも「マイケル」「パツキン」などのあだ名はつけられてましたけど、逆に「タケシ!」とか適当な名前で言い返したりしてました(笑)

笑顔で話すブラスさん

前川:良いことも悪いことも含めて「見た目で一度も判断されたことがない」という人はきっと誰もいないと思いつつ、特に幼少期って、悪気なく「人と違う」ことを言語化しがちですよね。

小原:まあ勝手に外国人だと判断して、「日本のことわからないだろう」と思われるときは少しイラッとしますけどね。ちょっと漢字を間違えただけで、「日本語って難しいでしょう〜?」とか言われると……。私、高校生のときは古文・現代文・漢文が得意だったんですけど?!って。

前川:世の中ってどうしても主語を大きく......というか「まとめ」がちですよね。私は幼少期を海外で過ごしている帰国子女なので、少し違うことをすると「前川は外国人だからな」という感じで、カテゴライズされているのを感じて嫌でした。自分たちとは違う箱に入れてくる、みたいな。確かに人と違うことをしたかもしれないけど、その理由は帰国子女だからとかではないのにな、と。

小原:そう!メディアに出て突拍子もないことを言うと「やっぱりロシア人は……」と言われたりするのも同じですよね。違うねん、“ロシア人だから”じゃなくて、“私だから”やねん、と。あと、選挙活動中の政治家が、私にだけ挨拶しないのは結構あるあるですね。

前川:えー、そんなあからさまなんですね。

小原:見た目は外国人でも日本国籍の人はいるのにね。私はそういう政治家は覚えて、周りに「あの人、私を無視した」って広めてましたけど(笑)

「どこから来たの?」が嫌な人も、そうじゃない人もいる

前川:私は10年くらいスリランカと仕事をしているので、気持ちとしてはホームだと思っているんですね。でも、見た目がスリランカ人じゃないので、お店や車内などで毎回のように「どこから来たの?」と聞かれるのがすごく嫌で。嫌というか、寂しくなるんです。もちろん相手に悪気はないんですけどね。気分によっては、国籍を反射的に返すときもありますが、天邪鬼モードの時は、「え!お母さんのお腹の中からだけど、そうじゃない人いる?!」みたいな感じで返したりしています(笑)

小原:なるほどねえ。私は見た目だけで「どこ(の国)から来たの?」と聞かれても、そんなに嫌な気持ちにならないんですよね。ただ、私たちの間だけでも受け取り方の違いがあることを考えれば、やっぱりそれを見極めてから言わなきゃですよね。私も東京に出てくる前に姫路にいたときは、今より悩んでいたかなとも思うし。

前川:年齢的なものというよりは、土地柄の違いとかということでしょうか?

小原:今はどうか知らないですけど、当時の姫路にはそんなに外国人がいなかったから。よく覚えているのは、泣いてる赤ちゃんが私の顔を見ると泣き止んだこと。赤ちゃんですらルッキズムというか、違いが明らかにわかって「なんだ、あれは」って顔になるんです。そういうのを悩みたい年頃でもあったから、逃げるように東京に出てきたところもありました。だけど、東京に来たらむしろ寂しくなっちゃって。あんまり見向きもされないし、小学生が「ハロー!」とかも言ってこない。赤ちゃんも泣き止まへんし(笑)。

対談する小原ブラスさんと前川裕奈さん

小原:もちろん、社会システムのなかでルッキズムやカテゴリによる差異はなくさないといけないと思います。これはルッキズムではないけど、外国人というだけで部屋が借りづらいとかね。私の人間性や口座残高を見る前にはじかれちゃう、みたいなことはあるので、そうならない仕組みづくりはしてほしいなと思いますよね。

“違い”を武器にする、そういう生き方もある

前川:「ルッキズムはよくないよね」みたいな話をすると、好みを持つこと自体の否定と同義ととらえる人も一定数います。でも、人間である以上は好みがあるし、払拭する必要ないと思ってます。私自身も理想や好みみたいなものはめっちゃありますし。ただそれを社会的に共通のものにしないことが大事なのかなって。

あと、何十年かけてこびりついた「よくないルッキズム」が頭の中にふと浮かんでくることもゼロではないと思うんですよ。でも、それを言葉にする必要はないよねって話だと思うんですよね。誰かが不当な思いをしたり、仕組みとして理不尽なことが起きうるのが問題だな、と。

小原:前川さんが言うとおり、私は個人間のルッキズムはある程度あってもいいというか、むしろ利用して今の自分になってきているところもありますね。ルッキズムを力に変えてきた、というか。例えば、就職先での自己紹介とかも外国人は私だけだったから、周りから「この子、大丈夫かな」みたいな目を向けられたんですよ。でも、それが関西弁でバーっと喋って、最後に「知らんけど」とかつけといたら、ウケるんですよ、取り急ぎ。

前川:取り急ぎ(笑)

対談中に笑う前川さん

小原:そういうギャップを強みにして生きてきた部分はあるので、ルッキズムを全否定してしまうと、これまで築き上げたブラス節が死んでしまうな、と。

前川:これができるのは、個人のキャラクターに左右される部分でもありますよね。過去の苦しみや気づきを糧にすることで、良い作品をつくるクリエイターやアーティストもいるように、ルッキズムを逆手にとって自分を知ってもらう、みたいな。これは職種を問わずコミュニケーションスキルとして使えたりもするなと思いました。人によるけど。あと、男女の問題でも似ていますよね。女性であることの生きづらさは間違いなくあるけれど、同時に女性だからこそ見れた景色もある、みたいな。

小原:10代の頃は、アルバイトを落とされるだけで「外国人やからかな」と悩んだこともありました。今は逆に外国人であることが強みになっている環境にいるから、小原ブラスでよかったと思えているのかも。

だって、みんな就活で何を言うんですか?私と同じように「大阪の学校出ました〜」と言っても全然ウケないし、目立たないでしょう?だから、マジョリティにいる人たちも、楽もあるけど苦もあると思うんですよ。そういう人たちからしたら、簡単にギャップを生み出せる私のような存在は羨ましいのかもしれないし。今コメンテーターに呼ばれるのも、「外国人でゲイ」という特徴のおかげもあると思います。

前川:もちろん実力があってこそだと思いますが、そういうバリエーションをつける見せ方はありますよね。

小原:もし自分の容姿が人と違うことで苦しんでいる子がいるなら、こういう人もいるんだよって言いたいですね。「社会はもっと変わるべきだ」って言った方がいいかもしれへんけど、その一方で、生き抜くためにこんだけ武器にしてる存在を見せるのも救いにはなるかもしれませんよね。 本当に人生って、 結果的に何が武器になるかがわからないから。

対談タイトルのパネルを持つお二人

*後半につづきます。

Profile

小原ブラスさん

ロシアのハバロフスクで生まれ、6歳の時から兵庫県姫路市で育つ。コテコテの関西弁を話す外国人というインパクトに加え、 「めんどくさい」「ひねくれ者」と評される程の独特の視点を活かしたコメントが彼の魅力。 ゲイというセクシャリティをオープンにしており、幅広い層から支持を集める。 コテコテの関西弁で、ライトな話題から政治・社会問題までを鋭く斬り注目を集め、テレビコメンテーターとしても活躍。コラムの 連載を多数持ち、外国人の目から見た日本の疑問点や違和感を率直につづる。2022年より、「一般社団法人外国人のこども 達の就学を支援する会」の理事長に就任。

前川裕奈さん

慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。

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撮影/Poko

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