しゃべるっきずむ!「かわいくない自分には価値がない」と思わされる社会の落とし穴|前川裕奈さん×小渡結稀さん
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第20回は、容姿にコンプレックスを抱える人のための居場所「Color Code(旧:Marmot)」を運営する小渡結稀さんをゲストにお迎えしました。醜形恐怖症を患い、高校時代に整形した小渡さん。整形が身近に、若年齢化している現代、私たちはどうやって自分の容姿と向き合っていけばいいのでしょうか。幼少期からの経験を振り返りながら、整形との付き合い方についておしゃべりしていきます。
美容に取り憑かれていた中学時代
前川:小渡さんが運営されている「Color Code」は、外見コンプレックスを抱える人のための居場所となるためのオンラインコミュニティですが、具体的にはどういったことをコミュニティ内でされているのでしょうか。
小渡:醜形恐怖症(しゅうけいきょうふしょう)や外見コンプレックスを抱える人が、なかなか人に言いづらい容姿の悩みを安心して共有や相談したり、偏りのない美容情報に触れたりできる場所です。Color Code自体は医療機関ではないのですが、臨床心理士と一緒に開発・設計しているため、認知行動療法を元にしたプログラムなどを使いながら「少しでも楽になるきっかけ」を提供しています。
前川:もともと小渡さんご自身が醜形恐怖症だったとのことで、このコミュニティを立ち上げられた経緯があるんですよね。
小渡:そうですね。自分が醜形恐怖症だとわかったのはずっと後でしたが、学生時代から自分の容姿にコンプレックスを持って生きてきました。中学時代には、1日10時間以上は美容の情報を漁ることに費やして、持っているお金も全てスキンケア用品やコスメを買うことに使っていました。SNSで「整形アカウント」を作って、整形情報をずっと探していたのも中学生の頃です。
前川:当時の情報収集は、基本的にSNSで?
小渡:そうです。TikTokとかXで。
前川:ずっとコンプレックスに向き合ってきて、今の小渡さんがあるんですね。というか、「向き合わざるを得ない」というのが近いのかもしれないですね。私も容姿に悩んでいた時期は、朝から晩まで常にコンプレックスがそこにあるから、向き合わない時間もないし、向き合わないと社会から振り落とされる感覚すらあった気がします。
小渡:そうですね、「向き合ってきた」というより、「向き合いすぎていた」「向き合わないと生きていられなかった」というところが大きいかもしれません。
「かわいくない自分には、価値がない」という思考へ
前川:そこまで容姿のことが気になるようになったのって、きっかけは明確にありますか?
小渡:いろいろなことが積み重なって……だとは思いつつ、私の場合は、もともと両親から「かわいい、かわいい」と言われて育ったんですね。だからこそ、小学校でいじめに遭って「ブス」などの言葉を浴びせられたときに、すごく落差が大きかったんです。
前川:ああ、その家庭内と外との落差がトラウマになるのはわかるかも。私も両親からは褒められて育ったし、幼少期の一部を過ごしていた海外では容姿のことを言われたり比べられたりしなかったので、「自分はすごく特別なかわいい存在なんだ」と健やかに思っていました。けど、小学校高学年のときに日本に帰国して、体型や肌の色を揶揄されたとき、「え、勘違いしてた!?」とすごくショックだったなぁ。
小渡:そうなんですよね。そのまま中学生になって「かわいくない自分には価値がない」「かわいくならないと、幸せにはなれない」という考え方になっていってしまって……。自分が幸せじゃないのはかわいくないからだって、他の原因を見ずにすべて外見に落とし込んでしまうような思考もありました。
前川:つらいですね。
小渡:容姿って、どれだけ頑張っても変えられない部分ではあるじゃないですか。かわいくなければダメなのに、なれない。そういう“どうしようもなさ”みたいなものにも、絶望していましたね。
前川:たしかに学生時代は校則もあるから、服装、髪型やメイクで工夫できることも限られますよね。大人よりはお金の制限もあるから、スキンケア用品一つでも変えないものも多かったり。そうすると、やっぱり生まれ持ったもので勝負せざるを得ないのが学生時代というか……。
小渡:私の学校は校則も厳しかったので、嘘をついてストレートパーマを当てたりしていました。自信を失っていったのは、周りには容姿が整った子が多かった影響もありますし、中学1年生でSNSを始めたのも大きかったです。普段は見かけないようなかわいい子がぞろぞろ出てくるから。それを見てまた「自分はこんなに頑張っているのに、どうしてこうなれないんだろう」って、自分を責めることにもつながっていきました。
子どもの“褒め方”で、大切にしたいこと
前川:でも、「親はかわいいって言うのをやめましょう」という話では全くないと思うんですよ。だってそれは本心だから。だから、その落差を生み出す「下げる」のほう——容姿を揶揄したりいじめたりするのをどうにかすることが大事だなと。
小渡:そうですね。

前川:ただ一方で、「上げる」のほう——褒め方にも工夫はいるなと思います。小渡さんはご両親からどんなふうに「かわいい」と言われてました?
小渡:例えば、テレビに出ている女優さんを見て「あなたのほうがかわいいよ」と言ったり……。親としては本当にかわいいと思ってそう言うのはわかるのですが、その「かわいい」ってすごく“美醜”の話なんですよね。女優さんの内面なんてわからないから。
前川:たしかに。親に限らずですが、形容詞で褒める人は多いと思います。「顔が小さいね」「足が長いね」みたいな褒め方は、それが正解、という感覚を植え付けられやすいです。
小渡:内面も含めてかわいい、という伝え方があれば、同じ「かわいい」という言葉でも受け取り方は違ったかもしれませんね。きっと、条件をつけないことが何より重要なんだろうなと思います。「〇〇だから、かわいい」と言う必要はないんだろうと。
前川:褒める側としては、ただ「かわいい」というだけよりも説得力を持たせたいという気持ちで、具体的なパーツを持ち出してしまうのはよくわかるんですよ。親自身のコンプレックスや価値観が反映されやすい部分だとも思います。人を見て、例えば「色白だな」「足長いな」と思うのはいいと思うけど、それを言葉に出さないことが大事かなと思いますね。
小渡:何を言って何を言わないか、の分別が 一番難しいかもしれません。
前川:それもマニュアル化はできないけれど、「とりあえず褒めておけばOK」でもないってことですね。

容姿にとらわれてしまう、醜形恐怖症
前川:そもそもの話なんですが、醜形恐怖症って定義があるんでしょうか?
小渡:あるにはあるんですけど、今はまだ心療内科や精神科でも認知されておらず、あまり適切なケアにつながらないことも多いです。精神科の先生に聞いたところ、たとえ認知されていたとしても「病院に来た=困っている」ので診断するという感じのようで、根本的な解決にはあまりつながっていない印象です。私自身も心療内科にかかったことがありましたが、なかなか対応してもらえなかった記憶があります。人数としては、男女問わずADHDと同じくらいいると言われているのですが……。
前川:自覚している人数でいうと、圧倒的にまだ少ないんですね。
小渡:私が関わっているなかでは、醜形恐怖症の子たちは2種類に分かれると感じています。ひとつは「理想が高すぎるゆえに、その理想の外見になれない自分に悩んでしまう」パターン。こういう子は、逆に容姿で評価されるアイドルやコンセプトカフェなどの仕事をして、そこで認めてもらうことで安心する傾向があります。ただ、容姿で評価され続ける世界にいることで悪化することも多く、注意が必要です。
前川:なるほど。ふたつめは?
小渡:ふたつめは「自分の顔が受け入れられずに外にも出られない」というパターンです。自分の自信が容姿に依存しているのに、そこで自分は最底辺だと思っている。つまり自分には存在価値がないと感じている子たちです。こっちのほうが数は少なく感じるのですが、支援が難しいというか、まず接することができないんですね。そもそも生きていられないことが多くて、相談を受ける以前にいなくなってしまうことすらあると思います。
前川:小渡さんの場合は、もしそういう子たちと接する機会があったとき、どのような言葉で声をかけていますか?
小渡:正解はないと思いますが、まずは気持ちを否定せずに全部聞くのがいいかなと思います。きっと話したいことが、たくさんあるだろうから。その上で、専門家につなげることしか、私にはできないかなと感じています。
前川:そうですよね、よかれと思って「そんなふうに感じる必要ない!」と言うことすら、本人からしたら対話の行き止まりに感じてしまう。さっき「まだ医療機関では醜形恐怖症の認知が低い」という話もありましたけど、具体的にはどういうところにつないであげるのがいいんでしょうね。
小渡:「Color Code」では、その部分を担いたいという思いもあって活動しています。ただでさえ今の社会には治療機関が少ない中で、最初からそこに飛び込むハードルの高さもあります。容姿の悩みが必ずしも心療内科につながるわけでもないと思っているので、相談を受けて各方面のプロフェッショナルにつなぐハブのような存在を目指しています。
*次回、どんどん低年齢化する整形って、どう思う? 2本目「整形は何歳から?ハッピーエンドかどうかを決める、大切なこと」は、こちらから。
Profile

小渡結稀さん
東京理科大学 経営学部 国際デザイン経営学科1年。中高6年間、身体醜形障害(醜形恐怖症)に悩まされる。当事者としての経験を原点に、「外見の悩みで人生が狭まらない社会」をつくりたいと考える。大学進学後は、VC・スタートアップ領域でのインターンや事業づくりに携わりながら、外見コンプレックス支援プロジェクト「Color Code」を立ち上げ。外見の悩みを抱える人の支援と、自己肯定感やセルフイメージを取り戻すための発信・コミュニティづくりに取り組む。「誰もが“可愛い”を安心して楽しめる世界」を目指し、活動を続けている。
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。
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