しゃべるっきずむ! 本当の意味での“自分軸”の見つけ方|前川裕奈さん×mikikoさん(3)

 しゃべるっきずむ! 本当の意味での“自分軸”の見つけ方|前川裕奈さん×mikikoさん(3)

容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていない概念でもあります。「ルッキズムってなんなの?」「これもルッキズム?」など、まずはいろいろしゃべってみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineでも「ルッキズムひとり語り」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。第9回は、ニュージーランドを拠点にパーソナルトレーナーとして働くmikikoさんと「運動とルッキズム」について、おしゃべりしました。

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運動している理由が、わからなくなったら?

裕奈:「自分のために運動しよう」と言いつつ、それが“本当に”自分のためなのかって、自分自身でもわからなくなりやすいんじゃないかなと思うんですよね。心からの「もっと美しくなりたい」という気持ちと、ルッキズムに囚われて運動することの差が、実は曖昧というか。

mikiko:その差ってなんなんだ?ってことですよね。

裕奈:そうそう。特に若いときは体力があるので、私もそうだったけど、無理な運動もできちゃうんですよね。だから余計に、これって誰のためなんだっけ?と自問自答していくことが大切だと思っていて。mikikoさんは、どうやって見極めていますか?

mikiko:私がよく言うのは「地球上に自分しかいなかったとしても、それやりますか?」というのが、ルッキズムとの分かれ目かなと。ルッキズムって人からの評価を元に自分自身を評価することだと思うので。世界で自分しか生き残ってなかったとしても、腹筋が割りたいとか、痩せなきゃとか思うのかなって。

裕奈:なるほど。

mikiko:「自分磨き」と言いながら、自分に軸がない場合が多いですよね。モテるための自分磨き、人からどうこう言われないための自分磨き、世間に見せても恥ずかしくないように自分磨き……。鏡の前でポーズしたくなっちゃうとか、踊り始めちゃうとか、1人でも心が踊ってるのかが一番わかりやすいのかなと私は思います。

「すぐに痩せたい人」への声かけ

裕奈:mikikoさんはパーソナルトレーナーのお仕事で、そういう自分軸じゃない依頼が来たとき、どういう対応をしているのかも気になっていて。例えば「婚活のために痩せたい」みたいな理由でお客さんが来たら、どういう言葉で、その人のマインドを紐解いていくのか、ちょっと聞いてみたいなって思っていました。

mikiko:たまに「彼氏に言われて来ました」とか、「結婚式のために自信の持てる体にしたい」という人はいます。そういう方々には、まず、私の方針をしっかり伝えますね。「2ヶ月で5キロ痩せる」とかではなく、これから一生、あなたが自分の体を思い通りにコントロールできる教育をベースにした指導です、と。だから、もし「2ヶ月後の結婚式までに急いで痩せたい」のであれば、私はそういう指導はしていないと伝えます。

裕奈:なるほど、自分のスタイルをしっかり伝えるわけですね。

mikiko:そうです。それでちょっと違うと感じたら、希望に合った指導ができるトレーナーが他にいないか探すのを手伝ってあげるから、別の人のところに行った方がいいですよって。

mikiko
画像提供:mikikoさん

裕奈:必ずしも、その人のマインドを変えようとするわけじゃないんですね。

mikiko:なんていうか、喉が渇いてない人にお水をあげても飲んでくれないじゃないですか。アドバイスって、タイミングが大事だなと思っているので、私のメッセージが届かないときは無理に渡さないようにしています。でも、どこかのタイミングでなんだかうまくいかないぞと気づいた人が、お水ちょうだいって来てくれたら、私はそこにいてあげたいと思ってます。

判断軸を探るには、問いかけと対話から

裕奈:あと「自分のため」かどうかの判断軸で言うと、友人たちに馴染むため、彼氏に好かれるため、就活のために痩せることが、結果的に「自分の人生がうまくいくため」になるんじゃないの?と思ってしまったりすることもあるんじゃないかなって。今の私だったら、「見た目で判断する友人/彼氏/職場が、本当に大切?」と思うんですけど、mikikoさんだったらどんな声がけをしますか?

mikiko:なんて言うかなあ……。私も、ルッキズムにとらわれていたときはそう思っていただろうなと思うので、まずは「わかるよわかるよ」と共感しちゃうと思います。例えば、中高生だったら学校ぐらいしか居場所がないから、いくら「外には広い世界があるよ」と言っても想像しにくい気がするんですよね。だから、なるべくその子が自分ごとにできるような問いを贈るかな。「大切な友達がそう言ってたらどうする?」とか。

裕奈:そうですねえ。もちろん年齢や環境にすごく左右されるとは思いますけど、たしかに、「仲良くしてるお友達は、そのままのあなたが好きで一緒にいるんじゃない?」みたいな話をするのはいいかもしれないですね。なにかハッとさせられるような視点を与えられたらいいですよね。

mikiko:そうですね。狭い世界のなかで当たり前と思っていることを、「本当にそうかな」と疑問に思えるような質問をしてあげたいですね。

「痩せても幸せにならなかった過去」から伝えられること

裕奈:ただ、やっぱり本来は「変わらなきゃ」と思わせてくるその環境自体がおかしいって伝えたい。だからこそ、そういう世の中にならないように、私たち大人たちが頑張らなきゃいけないよねと思いました。

mikiko:そうですね。

裕奈:私たちふたりとも「じゃあ一緒に運動して、モテるための体型目指そうか」みたいな答えじゃなくてよかった(笑)。環境を変えたり、認知を変えるような問いかけをしたり、いろんなアプローチがあることがわかって。

mikiko:きっと、私たちふたりとも、極限まで痩せても幸せにならなかった経験があるからだと思うんですよね。見てきたから確信を持って言えることだけど、無理して体型を変えたところで自分に満足する日々は訪れないんだよって。痩せても、太っても、自分が楽しいと思えないなら幸せじゃないですよね。

裕奈:本当にそうですね。改めて、自分の経験から人に伝えられることがあるなと思いました。mikikoさん、今回はありがとうございました!

 

mikikoさん

ニュージーランド公認パーソナルトレーナー。栄養・睡眠・行動心理など、運動だけにとらわれない視点の指導が特徴。。2017年よりフィットネス先進国のニュージーランドへ移住。世界各国からレッスンの依頼が殺到する、予約半年待ちのトレーナーに。過去には流行りのダイエット情報を追いかけて失敗し、摂食障害、20歳にして失明の危機に直面。この経験を活かして、現在は多くのダイエット迷子に向けた発信に力を入れている。著書「ベストセルフダイエット」(Gakken)をはじめ、「ヨガジャーナルオンライン」での記事執筆、TVメディア出演など、各方面で活躍中。

前川裕奈さん

慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」

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