SNS、メディア、整形の低年齢化。変化していく社会で手を取り合う 前川裕奈さん×廣瀬凜さん(2)


容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。 第11回目は、ルッキズムに向き合う高校生にゲストとして来ていただきました!15歳差のふたりの対談から、私たちを取り巻くルッキズムの変化と変わらない部分、両方が見えてきた本対談。違う世代のふたりが一緒にルッキズムの現状と未来について語りました。
学校内での“人気の顔”ってやっぱりあるんじゃない?

前川:大人に比べて、学生時代は特に容姿で判断されることが多かったような気がしています。今でもきっと「こういうビジュアルがモテる」みたいなものがあります?
りん:うーん、もちろんビジュアルもあると思いますが、その基準は結構バラけているかもしれません。好きになった人が一番かっこよく見える、かわいく見える、みたいな。あとは、やっぱり性格かなあ。例えば、複数の人に思わせぶりにしないとか……(笑)
前川:一番大事な誠実さにすでに気づいてる!
りん:これは『今日、好きになりました。』などの恋愛リアリティ番組の影響もあるかもしれません。番組内でちゃんと相手に真摯に向き合っているか、番組が終わったあとも付き合い続けているか。そういうところをみんな見て、憧れている気がします。ルックスと同じくらい、誠実さも大事って思えてる人が男女問わず多いかな。
前川:なるほどね。私たちが10代の頃は、例えば「くびれ!」とか「二重まぶた!」とか、一定の具体的なかわいい要素が結構明確にあったんですね。インターネットや電車内の広告などを見ていても、今も変わらないのかなと思うんだけれど、そのあたりはどうでしょう。
りん:私の世代でも影響を受けて、ルッキズムの渦中にいる子はいると思います。ただ、あくまで私の周りでは、たくさんの情報のなかで“自分に合ったもの”を見極めていこうとする傾向はあるのかなと。私の友人で一重まぶたの子も、「今は二重まぶたが合っていると思うからアイテープをするけれど、一重の子を見てもかわいいなと思う。自分もいつか一重の顔が好きになるときがくるかもしれないから、整形はしない」と言ってました。自分が好きな自分でいられているか、がいつも主軸にある気はします。
この15年で変わった整形の立ち位置
前川:整形に関しても、この15年できっと大きく変わったと思います。昔のイメージはとにかく高額で手が出ないもの。周囲に整形した子がいたら、「お金持ちぃ〜」みたいな反応も一定数あったように感じます。今は価格も下がって、先生を選ばなければかなり手が届きやすくなっていますよね。私は整形そのものには反対ではないのだけど、若いうちにするのはリスクがあるなと思っていて。学校で整形してる子は結構いますか?
りん:二重整形をした子がいる、くらいはたまに聞くこともあります。今はインフルエンサーも日帰りでの整形などを載せたりするので、そこまで遠い存在という感じではないですね。
前川:「整形しました」「今ダウンタイム中です」みたいにSNSに載せやすくなったという意味では、大人でも同じことが起きているのかも。本当に悩んでいる子からすれば手が届きやすくなって、周りからも理解されやすくなっているのはいいのかもしれないですよね。一方で、簡単に顔を変えられてしまうハードルの低さは怖くもあります。
りん:前川さんは、整形が受け入れられていっている社会はいいことだと思いますか?
前川:整形自体は反対ではないですが、年齢や人生の経験値によるとは思っています。30代になってずっと悩んでたコンプレックスを解消する友人もいたし、私はそういうのは全然ありだと思うんです。ただ、10代ではその後の感覚がどう変化するのかわからないし、たとえば「顎を削りたい」という気持ちが社会に“そう思わされている”可能性もあるから、整形の低年齢化はやっぱり少し心配。りんさんのお友達みたいに「いずれは一重も好きになるかもしれない」と先を見据えて行動できてるのはすごいと思います。

「かわいくなりたい」は本当に自分のため?
——さっき「社会に“そう思わされている”可能性もある」という話が出ましたけど、「整形してかわいくなりたい」「好きな見た目になりたい」と思うこと自体、ルッキズムと切り離せない気もしています。りんさんの「盛れてる」の話には“思わされている”という雰囲気はないけれど、それは「自分で選んでいる」という感覚が強くなっているだけで、構造自体は変わっていない可能性もあるんでしょうか?
前川:ルッキズムの話をしていると、いつもそこに迷い込みます。「かわいくなりたい」「好きな自分でいたい」と思うことは当たり前の感情だし良いことなんだけれど、やっぱりそれが「どこから」来ているのかは測れるものではないから難しいんだと思います。本当に自分のためなのか、本当は他者や社会のためなのか。
りん:私の周りの子は、口癖みたいに「痩せなきゃ〜」と言うことはあっても、前川さんが過酷なダイエットをしたみたいに行動に移すことってあんまりなくて。個人的に思うのは、そこに強迫観念があるかどうかなのかなと。前川さんの本を読むと、すごく「痩せなければ」という概念に囚われていて、それは社会のプレッシャーがあったからなのかなと。今はSNSなどでいろいろな体型や魅力の子を見ることができるので、最後には「まあいっか」と思える部分もあるような気がします。
前川:それはあるかも。あとは個人の性格もやっぱりありますよね。りんさんの周りは先を見据えることができるお友達がいたり、「みんなかわいい」を前提にできていたり、とても治安が良いなと感じます。おっしゃるようにSNSで「多様な美」を目にすることが増えると同時に、「画一的な美」が目に入る機会も増えると思うので、プレッシャーに思う子もいるだろうということも忘れてはいけないなと。
ルッキズムのない社会へ、バトンをつないでいこう
前川:この15年での圧倒的な変化は、やっぱり情報量だと今日の対談で感じましたね。スマホがあって、SNSがあって、誰でも情報を得ることができる情報過多の時代。惑わされることも多いと思うけれど、やっぱりその中から情報を選び取って自分で考える力をつけざるを得ない世代になったのかなと。
りん:たしかに、そうなんだと思います。
前川:今日の対談もそうでしたが、学校で講義をしたあとの学生からのレポートにも私自身がハッとさせられることも多いです。言われたことを勉強するだけではなくて“考える力”みたいなものが、今はすごく求められてるんだろうなって。その力をつけられるかどうかで、新たな格差も生まれてきてしまうこともあるでしょうね。
りん:そうですね。私の場合は前川さんに出会ったきっかけでもある塾の存在や、家庭や学校の環境に恵まれたこともあると思います。早い段階で「社会でなにがしたいのか、なにができるのか」を考える機会があったからこそ、今こうやって前川さんとお話しできているんだろうなと。
前川:今の大人たちがそれらを本気で考えるようになったのは、早くとも就活、遅ければ社会人になってからじゃないかな。今の若い人に追いつかれていく感覚は、焦る一方でいいことだとも思っていて。私がしている社会課題に取り組む活動は、最後は次世代に響いていかないと社会が変わっていかないから。このバトンを安心して渡せる子たちがいるのは、すごく救いです。
りん:ありがとうございます。前川さんに初めてお会いしたときに言っていた「小さな発信が大きな力になる」という言葉を、今日すごく感じていました。今日お話ししたことは、私や友人たちの間では当たり前のことも多かったんですけど、この当たり前はきっと前川さんたちのような方々の発信の恩恵を受けているんだろうな、と。一方で、形が変わっただけで構造的には何も変わっていない部分も見えたので、若者として向き合っていきたいなとも思いました。
前川:とても頼もしいです!世代は違えど、ルッキズムのない社会を目指して一緒にがんばっていきましょう!

廣瀬凜さん
2006年生まれ、東京都在住。趣味は、ドラマ鑑賞、アイドルのライブに行くこと。春から慶應義塾大学環境情報学部にて、より記憶に残る広告の背景音(BGM)について公共広告を対象に研究予定。高校時代は、広告の他、若者を対象にジェンダーや外見における価値観や意識についても研究してきた。
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。
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