タレント、会社員、起業家。それぞれの立場から見えるルッキズムとは?前川裕奈さん×「ハダカベヤ」(1)#しゃべるっきずむ!
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第18回は、ポッドキャスト配信ユニット「ハダカベヤ」のIMALUさん、メグさん、なつこさんをゲストとしてお迎えしました。「世の中の価値観をアップデートする」を掲げ、女性のウェルビーイングやエンパワーメントに関する内容を配信する3名。ホストの前川さんも含めた同世代で「ルッキズム×話すこと」について盛り上がりました。
ルッキズムについて話してみよう
前川:「ハダカベヤ」の配信、とても興味深く聴かせていただいてます!ジェンダーギャップ指数や政治に触れる真面目な回もあれば、女性の働き方や性の話など身近な回もあり、御三方がざっくばらんに話すのを聞いていると、すごく“おしゃべりの力”を感じるんです。
IMALU・メグ・なつこ:ありがとうございます。

前川:今回はみなさんをお招きして、ぜひルッキズムについておしゃべりしてみたいなと思いました。これまでの配信でも、ルッキズムに言及されている回がありますよね。例えば、『ボトックスは当たり前?令和の”美の定義”』では、IMALUさんが「美容医療をしていないほうがレアになってきた」とお話しされているのが印象的でした。一般的にも美容医療をしている人が増えているなかで、芸能界はさらに顕著なのかな、と……。
IMALU:美容医療のレベルも上がってきて、針を入れたり注射したりするハードルは下がってきていると感じます。身近になるにつれ、若いうちから取り入れる人も増えている印象です。私はまだやったことがないんですが、芸能界では割とマイノリティになってきているんじゃないかな。
前川:たしかに、美容医療の定義や内容にもよるけれど私の周りでも増えてきた気がしますね。
IMALU:社会では「多様性」「ありのままでいい」というメッセージが広がる一方で、やっぱり「こう見られたい」「痩せて見えたい」みたいな人が多い社会に、少し矛盾は感じますよね。その人がよければ全然いいとは思うんですが。
前川:本人の意向を尊重すればいいと私も思いつつ、やはり芸能人や人前に出る仕事の人は「人に『老けた・太った』と言われるから」という外的要因も他の職業に比べたら強めにあったりするのかな、と想像しています。
IMALU:そればかりは本人にしかわからないところではありますが、インスタなどのSNSの影響も大きいような気はしますね。フィルターや加工が当たり前になっていますし、その自分が“表の自分”になっていきますから。
前川:その“表の自分”に、現実の自分も寄せていくっていうことですか?
IMALU:そうそう。もはや芸能人とか関係なくなってきてる気もしますけどね。個人の自由だけど、特に若いうちにやっている人を見ると少しもったいない気もしちゃう。私自身が昔より、今の自分の顔が好きだからっていうのもあると思います。
前川:美容医療や整形でコンプレックスを解消できた、という人も周りにいるので、私も個人の自由だという意見は同じです。ただ、「好きな人に振り向いてほしい」「みんなと同じになりたい」などの外的な理由なら慎重になってほしいなと思いますね。
IMALU:『整形に関する質問を水沢アリーさんに聞いてみた』の回で、アリーちゃんも「人のためじゃなくて、自分のためにすればいい」と言ってましたね。彼女の話でおもしろいと思ったのは、「自分のパーソナリティと顔が合っていないと思ったから整形を始めた」という部分で、そんな感覚があるんだ!と。
前川:私もよく「そのカワイイって誰のため?」というフレーズを使うんですが、ダイエットやメイクなどもすべて、他人軸なのか、自分軸なのかをよく問いかけることが大事だなと思います。そこが、とてもブレやすいんですよね。

「自分軸」は他人から見えないから難しい
前川:その「自分軸かどうか」が、周りからわかりづらいのがルッキズムの難しさでもあると感じています。例えば、私は趣味でランニングをしているので、レース前は走りやすさのために減量することがあるんですね。それをSNSに載せると「ルッキズムの発信をしているのに痩せようとしてる」というコメントが、決まり文句のように必ず来るんですよ。
IMALU:説明するのも面倒臭いですね。
メグ:フェミニズムや平和など何でもそうなんですけど、何かを発信するとすごく偏った見られ方をしますよね。ルッキズムに反対しても「綺麗になりたい」と思うことはあるし、フェミニストの心を持っていても「男性にモテたい」という感情があってもいいはず。平和活動している人だって喧嘩することはあるでしょうし。ひとつ何かを発信するだけで「そういう人」という見られ方をする世の中は、しんどいですよね。それこそ、フェミニストだけど“モテ服”みたいなものが好きな人がいたっていいと思うんですよ。
なつこ:確かに、極端すぎる感じはするよね。
IMALU:私も奄美大島で生活し始めて、環境問題について発言やイベント参加などをしていると、たまにマイボトルを忘れてペットボトルを買うときに「何か言われちゃうんじゃないか」ってドキドキするんだよね。「エコについて発信してるのに」と、やっぱり自分で思ってるもん。
前川:本来は、他人が「できてる/できてない」とジャッジすることじゃないはずなんですけどね。
メグ:それに人は変わるからね。ハダカベヤもまさに「価値観アップデート」を掲げていますけど、配信を始めた5年前と今では、自分の価値観も大きく変わっています。整形や美容医療に対する考え方だって、そのうち変わるかもしれない。
IMALU:そうなんだよね。それでも「自分が生きたいように」という軸は変わらないってことなんだと思う。
ルッキズムは、まだまだ浸透のもっと前
前川:なつこさんは、身近で感じるルッキズムなどありますか?
なつこ:私は正直、この社会は「まだまだルッキズム浸透してないね」と話すよりも、もっと前の段階にある気がしていて。企業に勤めていたとき、ハラスメントの研修がようやく出始めたけれど「ルッキズム」には触れられていなかったし、「ルッキズム」という言葉を使っている人って、よっぽど興味関心がある人なんだと思ってます。
前川:たしかに……。
なつこ:多くの人が「人に嫌だと感じさせるようなことはダメだよね」という認識はあると思うんですよ。ただ、それが“どういうことか”はわかってないというか。私は明るいキャラなのでいじりやすいと思われることが多いので、飲みの場でも「なつこ、最近太ったよね」とか何でも言っていい雰囲気がある。私は普通に返せるけど、これ人によっては裏で泣くぞ?と思ってて。

前川:相手との関係性とかもありますからね。普通に返せる人もいれば、その言葉が拒食症のきっかけになることも全然ありますしね。
なつこ:そういう発言をする人って、別に本気で心配してるわけでも、あえて傷つけたいわけでもないんですよね。だから、本当にわかってないっていうか。
メグ:なんなら、“言える自分”に酔ってたりする。
なつこ:そうそう。本当はいろいろ言い返したいことはあるけど、グッと飲み込んじゃうね。
IMALU:それにしても「太った・痩せた」が第一声の人、多くない?
メグ:太った、痩せた、綺麗になった、化粧が濃い・薄い……そういう外見に価値を置いて生きてきた人はそうなりがちなんだよね。視点がすでにもうそうなっちゃってる。
なつこ:そこしかコミュニケーション取る方法がないのか?と思いつつ、外見に価値を置くことが当たり前だった時代もあったわけで、そう考えざるを得なかった人もいるんだろうなと思うよね。
私たちが「見た目で判断されている」と感じるとき
前川:メグさんは起業家や経営者として「見た目で判断されているな」と感じることはありますか?
メグ:私の場合、起業したのが下着ブランドだったこともあって「エッチなお姉さん」みたいなレッテルを貼られているのは感じましたね(笑)。そういうレッテルを貼られた人が、投資家や起業家の男性たちと話しているだけで「何かしてるんじゃないか、女を使ってる」みたいなことは言われました。
前川:ああ、わかります。私も起業したときに周りから「誰が資金出したの?」とか露骨に聞かれることもあって……そう見られるんだ、とショックだったのを思い出しました。
メグ:なんなら、自分から先に「ちゃんと銀行から融資受けてるんです」と言ってましたね。
IMALU:えー、男性だったら、そういうこと言われないわけでしょ?
メグ:ただ実際、女性だったことでのメリットもありました。10年前くらいは「男ばかりだから華添えに来てよ」みたいに集まりに呼んでもらうことがあったんですよ。それが後の人との縁につながったこともあったし、当時は女性差別だとネガティブに捉えるよりも、「チャンスをもらった」と思ってたかな。下着業界だと、女性であることが強みだったというのもあるね。
なつこ:なるほどね。

メグ:「見た目で判断される」という意味では、私が責任者でも、年上の男性が隣にいるとその人に向かって相手が話しかける……みたいなことはあるよね。
IMALU:「年上の男性=えらい人」って思っちゃうのは、あるあるかもしれないね。
前川:対等の立場でお鮨屋さんに行っても男性にだけ名刺を渡すとか、夫婦で車を買いに行って契約書は夫に渡す、とか。先入観ですよね。
なつこ:ビール頼んだのは私なのに、夫の前に出される……とか、いくらでも出てきますよね。強すぎる固定観念が、自分も含めて無意識に植え付けられているのかな。
「〇〇っぽい」が機能しない世の中になりつつある
メグ:「〇〇っぽい」で判断される、というので思い出したのが、仕事で関わっているマーケティングの話でね。今までのマーケティングでは「主婦」「Z世代」などの肩書きや世代でカテゴリー分けしていたんですが、今はそういうものでくくれなくなってきてると感じてます。
前川:というと?
メグ:私が得意としているマーケティング方法では、肩書きや属性ではなくて“文化的背景”でセグメントするんです。例えば「日常生活で音楽がある人」みたいな、カルチャーで分けて、そういう人たちに合う提案をする感じ。なので、性別や年齢は本当にバラバラ。これこそ多様性だし、もう今は「〇〇っぽい」が機能しない世の中に実はなってるんじゃないかなと思います。
前川:確かに、「〇〇っぽい」みたいなのは一般的に緩やかになってきたようには感じます。私も「オタクには見えない」と言われたりしますね。一昔前の、メガネにシャツで……みたいないわゆるオタクと言われる容姿の人は少ない、的な。
IMALU:アメリカのラッパーであるメーガン・ザ・スタリオンも、ものすごい派手な格好しているけど、日本のアニメが超好きだったりする。そういうギャップやレンジの広さがイケてる、と言われたりもするよね。そういうギャップ萌え的なものも、ベースにはルッキズムがあるからかもしれないけど……。
前川:確かに、「この見た目の人は、こういう性格や趣味のはず!」というルッキズムの上に成り立ってますよね。
メグ:「必ずしもそうじゃない」という事例が増えていくほど、マーケティングと同じように、容姿や属性で分ける意味がなくなっていきますよね。

*次回、ケンカじゃなくて、分かり合うために話したい。2本目「違う意見の人と、どうやって対話する?」は、こちらから。
Profile
ハダカベヤ(IMALUさん・メグさん・なつこさん)
ミレニアル女性3人が性•カラダ•恋愛•仕事•時事ネタ…話しづらいアレコレを“ハダカの声”でディスカッションする価値観共有番組🎧
毎週月曜日、各種Podcastにて配信📢
【公式SNS】Instagram:hadakabeya_official X:hadakabeya
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く









